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「税率を下げるだって!? どうしてまた急に!?」

「今年の我が国は全国的に天候が不順で、作物が不作になりそうな見通しだと言うのは先程お伝えしたでしょう? それなのに例年通りの税率で税を徴収していたら、領民の間に間違いなく不満が溜まることになりますよ? 領民に対する優遇措置を今からやっておかないとマズいことになりかねません」

「マズいこと!? 例えば!?」

「最悪、暴動が起きるかも知れませんよ?」

「ま、まさかそんな...」

 父親が目を丸くした。

「言い切れますか?」

 そう言うと黙り込んでしまった。

「ちょっと確認なんですがお父様、これら様々な税に関する税率は国で定められたものなんですよね?」

「えっ!? あ、あぁ、もちろんその通りだ。国が定めた税率以上の税を徴収した場合、監査が入って最悪その家は取り潰しになるからね。領地経営に失敗したということで、貴族の資格無しと判断されるんだよ。だからどこの領主もその決まりは遵守しているはずなんだ」

「なるほど。では国が定めた税率以下であるのなら、税率をどこまで下げても何も問題は無いってことですよね? そこら辺は領主の裁量に任せるという理解で合ってますか?」

「あぁ、その通りだ」

「現在の我が領の税率は?」

「...国で定めた上限ピッタリだ...」

「では下げましょう。こういった非常時には臨機応変に対応しないと領主の裁量が問われますからね」

「...確かに...だが具体的にどの程度まで下げる?」

 そう問われて私はちょっと考える。

「そうですね...いっそ半分まで下げちゃいましょうか?」

「いやそれは...いくらなんでも...」

「あぁもちろん、恒久的って意味じゃありませんよ? あくまでも緊急措置ですんで。天候が回復したら来年からはまた元に戻すとお触れを出しておけば良いと思います」

「なるほど...だが税率を下げたとして、その代わりの財源はどうやって確保する?」

「これから毎朝新聞を読ませて貰えれば、先程のような投資話をもっと提案できると思います。ただそれはすぐに結果が出るものじゃありませんし、見通しが甘くて失敗する場合もあるでしょうから現実的ではありません。もっと簡単に確実に財源を確保する手立てがあります」

「具体的には?」
 
 父親が身を乗り出して来た。期待するような目を私に向ける。

「お父様、この無駄にデカい屋敷を手放して別館の方に移り住みませんか? それだけでかなりの財源を確保できると思います」

 父親は絶句していた。
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