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 その後、着替えてバッカーノの執務室に赴いたヘンリエッタは、

「陛下、今日はお休みにします」

「お休み?」

「はい、教育も順調に進んでますし、少しくらいは羽を伸ばしても良いでしょう。リフレッシュして下さい。私もちょっと疲れが溜まってますから、休むことにします」

「そうか。分かった。少し休むことにしよう。ヘンリエッタもまだ顔色が悪いようだ。ゆっくり休んでくれ。無理させて済まんな」

「いえいえ、それではまた明日」

「あぁ、また明日」

 そう言って二人は別れた。また明日と言いながら...

 だがその日からヘンリエッタは姿を消してしまったのだった...
 

◇◇◇


 次の日、またヘンリエッタが起きて来ない。不審に思ったバッカーノはヘンリエッタの部屋に再度赴いた。

 コンコン。

 今度はちゃんとドアをノックする。だが返事が無い。悪いとは思ったが、バッカーノはそっとドアを開けた。

「ヘンリエッタ? 居ないのか?」

 部屋の中にヘンリエッタの姿は無かった。中を見渡すと机の上にいつものハリセンと、その横に一通の手紙が置いてあった。その手紙には、

『陛下の教育は終わりました。私はダーリンが恋しくなったんで国に帰りますね♪ キャハ♪』

 それだけが書かれていた。バッカーノは呆然としながらただ手紙を握り締めていた。


◇◇◇


~ 1年後 ~

 あれから隣国に何度も手紙を送ったが、ヘンリエッタから返事が来ることはなかった。

 直接出向こうかとも思ったが、国王として未だ復興半ばである国を離れる訳にも行かず、バッカーノは悶々とした日々を過ごしていた。

「陛下、ご足労様です」

「トメ、変わりないか?」

「はい、ご覧下さい! この通り見事に小麦が実りましたよ! みんなの努力の賜物です!」

「あぁ、良くやってくれた」

 バッカーノは労を労った。

「この復活した小麦畑を王妃様に見て貰いたかったですね」

「そうだな...」

 ヘンリエッタが隣国に帰った後、多額の援助金が隣国から齎された。そのお陰で川の治水工事が完成し、こうして一面の小麦畑が復活したのだ。

 そんな感慨に浸っていた時だった。

「陛下っ!」

 臣下の一人が慌てふためいて走って来た。

「何事だ!?」

「だった今、隣国から知らせがありまして、王妃様が...ヘンリエッタ様がお亡くなりになったと!」

「な、なんだとぉ!?」

 バッカーノは訳が分からなかった。

「隣国からの使者がこの手紙を陛下にお渡しするようにと...」

 バッカーノは封を開けるのも擬しく手紙を読み始めた。そこには確かにヘンリエッタの字でこんなことが書かれていた。
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