冷凍睡眠から目覚めたら不死身のセクサロイドにされていた件(アルファポリス版)

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プロローグ(一章まるごと読み飛ばしOK非エロエピソード)

これまでの勇者計画

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「どうやら、人違いであることに間違いは無いようですな?」

 軍務尚書ぐんむしょうしょアンタレスが怒気をはらんだ声でイェッタハンを責める。

「この状況で勇者計画はどうなるのですか?」

 財務尚書ざいむしょうしょゾーンの声も落ち着きを失っていた。しかし、それは怒りというより不安に満ちている。勇者計画には莫大な予算が投じられている筈だからだ。
 重鎮たちの視線に耐えかねたイェッタハン内務尚書ないむしょうしょ矛先ほこさきをファウスト博士へ向けた。

「博士!これはいったいどういうことですか!?」

「どういうこととは?」

「私の依頼は伝説の女戦士『聖骸せいがい乙女おとめ』の復活。
 しかし、この結果は私の依頼内容とはまったく異なるではありませんか!?」

 イェッタハンの剣幕にファウストは呆れたように返した。

「依頼内容は『聖骸の乙女』の復活でした。
 そして、それは果たされております」

「どこがですか!!
 ケイ・ユーキとは別人ではありませんか!!」

 イェッタハンは憤慨して詰め寄る。

吾輩わがはいは依頼通り『聖骸の乙女』を復活させました。
 『聖骸の乙女』が目当ての人物では無かった・・・それだけのことでしょう?
 その可能性は最初に御指摘申し上げていた筈ですな」

「魔王を倒す勇者として『聖骸の乙女』を復活させるのが目的です!
 その目的は御説明したはずではありませんか!?
 勇者たりえぬ人物の復活など依頼してません!!」

 ファウストは首をすくめながらヤレヤレとばかりに答える。

「彼女に与えた肉体は魔王を倒す勇者として十分な力を持っております。
 依頼に反しているとは到底納得しかねますな」

「身体能力は優れていようとも、そこに宿る魂が勇者たりえぬのなら、勇者として活躍など出来ようはずもありますまい!!」

「『聖骸の乙女』がどのような人物かは復活させてみないと確認のしようがありません。
 それは『聖骸の乙女』が目当ての人物ではない可能性と共に最初にことわった筈です」

 イェッタハンは地団駄じだんだを踏んで叫んだ。

「無責任だ!!」

 あまりのいいようにアンタレスが割って入る。

「待たれよ!
 確かに彼女は伝説の女戦士ケイ・ユーキとは別人だろう。
 だが、勇者としての素質の有無について結論を出すのはまだ早かろう。
 彼女の身体能力は確かなのですな?」

 アンタレスはそういってイェッタハンを宥めるとファウストに確認を求めた。

「無論です!
 いかなる武器でも傷つけることかなわぬ身体、力も常人の数倍は発揮できるでしょう」

 胸を張って答えるファウストにイェッタハンが激昂する。

「しかし、それでは足らん!!
 不滅の肉体なら過去の勇者とて持っておった!
 同じ過ちを繰り返さぬためにはそれだけでは勇者たり得んのだ!!」

「内務尚書閣下、まずは落ち着かれよ」

 アンタレスが旧き友を憐れむように宥めた。

「人のすることに齟齬そごはつきものだ。
 それをどうフォローし目的を達するかが、実務者たる者の務め。
 しかし、未だに計画の詳細を聞かされておらん。
 どうやら計画にとって重大な問題が生じておるようだが、我々は勇者が伝説の女戦士ケイ・ユーキその人でなければならぬ理由が分からぬ以上、フォローのしようが無いのだ。
 問題が理解できれば我々にも他生のフォローは出来よう。
 まずは、一度話を整理すべきではありませんかな?」

「軍務尚書の申す通りだ」

 再びトゥリ王太子が口を開くと、一同は玉座の方へ向き直って姿勢を正した。

「内務尚書よ、まずは勇者計画の全貌について詳細を説明せよ」

 トゥリの言葉にイェッタハンはようやく落ち着きを取り戻した。

「承知しました。
 殿下にはお見苦しいところをお見せし、恐縮の至りであります。
 では、第四次勇者計画についてご説明申し上げます」

 イェッタハンはそういうと一同へ向き直った。

「勇者計画は軍勢による魔族討伐が膠着こうちゃく状態に陥り、出口の見えない消耗戦となったことを受けての状況打開策として立案されました。
 選抜された少数精鋭の勇者を敵地最奥へ侵入させ、魔族の首魁しゅかいたる魔王を直接倒すのが目的です」

(早い話が暗殺ではないか)

 ファウストは人知れず溜息を漏らす。

「大規模な軍勢を派遣できない小国である我が王国が、軍勢派遣を免除してもらう代わりに本計画を担う事となっております。
 魔界へ侵入し独力で魔族と戦闘をすることを想定し、第一次計画から一貫して勇者となる者はホムンクルス体に魂を移植して魔界へ投入してまいりました。
 ホムンクルスは肉体の損傷によって死ぬことがありません。どのような損傷からも復活できるため、この任務には最適と考えられました。
 ですが、ホムンクルスが活動力を維持するためには聖乳ソーマを必要とします。
 液体である聖乳は持ち運びに不便であり、魔界奥地まで補給を維持するのは困難でした。
 結果、第一次計画の勇者たちは補給を絶たれ、活動力を失って魔族に捕らえられました」

(ありゃあ、悲惨じゃったのぉ・・・
 なまじ凄まじい回復力があったばかりに、魔界の食肉製造機にされてしまいおった)

 ファウストはしみじみと首を振りつつ溜め息をつく。

「この反省を踏まえ、第二次勇者計画では勇者の体内に聖乳の精製機能を組み込みました。
 倒した敵の血肉をすすることで体内で聖乳を精製できるため、無尽蔵の活動力を実現しました。」

(あれは吾輩の最高傑作じゃった。
 本人の資質もあったろうが、何といってもあの身体の出来栄えあったればこそよ。)

 ファウストは思い出してほくそ笑む。

「しかし、彼奴きゃつめは帰還することなく、そのまま次代の魔王の座を占めるに至りました。
 そして彼奴めの封土であった王国北部も、魔王に奪われる事となりました。」

「あの裏切り者め・・・」
「おかげで未だに王国は負債を抱えている。
 そして連合征討軍の駐留費まで負担せねばならなくなった。」
「北部を魔族に侵され、居座る駐留軍は野盗同然・・・
 このままでは王国は衰退する一方だ・・・」

 重鎮たちが思わず小声で愚痴をこぼし始めた。イェッタハンはそれを無視して続ける。

「補給なくとも強大な力を意のままに扱える者は、暴走すれば制御不能になる・・・
 それこそが第二次勇者計画の苦い教訓でありました」

(あやつめも魔族なんぞに肩入れせんでも良かったろうにのぉ・・・クソ真面目というか、不器用な奴じゃ)

 ファウストは再び溜め息をつく。

「続く第三次勇者計画では第二次同様に聖乳の精製機能を採用しましたが、同時にその動作には触媒の供給を要するように改善が施されました」

(何が『改善』じゃ、あれは『改悪』であったわ)

「触媒であるアソパ素は粉末であるため軽量で嵩張かさばらず、必要量を携行できるうえに魔界への供給も容易と考えられました。
 しかも神経を覚醒させ意識を高揚させる効果もあり、魔界では入手できないことなどからも最適・・・そう判断されておりました。
 ですが、アソパ素は向精神作用が強すぎたため、勇者一行は任務中に錯乱・・・そのまま消息を絶って計画は失敗に終わりました」

(兄上・・・)
(ズォル殿下・・・おいたわしや)
(あと一年、あと一年王陛下の御即位が早まっておられれば・・・)
(当時はまだアソパ素の危険性は知られていなかった。
 もうあのような悲劇は繰り返すまい)

 トゥリ王太子や重鎮たちは第三次勇者計画の犠牲となったトゥリの兄であったズォルを偲んだ。

(御上の都合で麻薬無しでは生きられん身体にされ、麻薬に狂いすべてを失うとは・・・不憫ふびんじゃったのぉ)

「今次計画においてもホムンクルス体をベースとする点は同じですが、こたびはホムンクルス体の構成素材をアダマンタイトに変更。
 一度通常の方法でホムンクルス体を構成。その後、ファウスト博士のお力と教皇庁よりお借りした遺物『アダマンタイト・アセンブラー』を使い、ホムンクルス体の体組織を構成する分子すべてをアダマンタイトへ置換していただきました」
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