霹靂の魔法使い

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第一話 最強の問題児!!

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 世界連合公認の法術支援学校、ホーレンス魔導学院。ここには毎年、何万人もの受験生が魔導士を志し、その会場へと足を運ぶ。3つの試験を経て、合格を言い渡されるのはたったの数十人。しかし、そんな試験を一つも課されずに合格した者がいた。その名もライナ・フェリックス。これは、彼とその仲間達が、学院で波乱を起こす物語、的なノリで始まる物語である。



ドゴーンッ!!!!

 早朝の学院に響き渡る爆発音。今年に入ってもう数十回は怒っているだろうか。それを証拠に学生の殆どがあまり気にしていないようなフリで過ごしていた。

 「クソッ!アデン!テメェ、覚えとけよ!」

 そう砂埃の中に見える人影に向かって言って走り去るのは、二年のブンパ・レフォンスだ。威厳あるレフォンス家の三男である彼は、後輩を取り込み、自分の手下にすることをしていた。

「あ“ぁ?誰がお前みたいな雑魚の手下になるかよ。」

 砂埃が晴れ、キレた物言いで姿を現したのは、''最悪の一年生''ことアデン・フラマ。燃えるような赤髪に、透き通るように綺麗な色の肌と鋼鉄のように頑丈そうな肉体、さらに碧眼から放たれる鋭い眼光を持つ彼のことを知らぬ者は、この学園にはいないだろう。その彼が問題を起こした。ともあれば黙ってはいない者達もいる。

「アデン・フラマ!またアンタの仕業ね!生徒指導室まで来てもらうわよ!」

 突然、アデンの後ろから声をかける集団が現れた。彼女達はこの学院の風紀を守る風紀委員会。そしてその先頭に立つのが彼女、ディスプリーナだ。

「はぁ?なんで俺が……、大体先に突っかかってきたのはあっちだぞ?」

「だとしても!これはやりすぎよ」

 ディスプリーナが指した方向には、大きく穴の空いた壁があった。

「まあいいじゃねぇか。ここからグラウンドまで直で行けるようになったぞ」

「そういう話をしてるんじゃないわよ!」

「だぁ~もう、うるせぇなぁ。そんなに言うなら壊れにくい壁にしておけよなぁーーッ!!?」

 アデンはポリポリと頭を掻きながら反対方向を向こうとする。しかし、振り返ろうとした瞬間、彼は固まったように動かなくなった。

「ほう?のお友達は少々脳がイカれてるらしいなぁ?」

 ガシッ!!

 そして現れたのは、アデンよりも少し背の高い妖艶な女性だった。アデンは肩をしっかりと掴まれると、先ほどまでの横柄な態度から一変して、大量の汗を額から流していた。

「学院長!」

 そう、ディスプリーナが呼んだように、彼女の正体はホーレンス魔導学院学院長、リオナ・フェリックスだった。モデル級の美貌とスタイルを持ちながらも歴代最年少で学院長を務めるなど、その実力も含め学院中から憧れの存在として尊敬されていた。

「おう!ディンちゃん仕事お疲れ様、修理代はレフォンス家とフラマ家に請求書出しといてくれ、私はこの馬鹿をシバかなくてはならんからな」

「が、学院長!その呼び方やめてくださいよぉ~」

「ん?いや、ディスプリーナって長いだろ?呼びやすくていいじゃないか。親しみも込めて、そう呼ばせてくれ」

「別にいいですけど…。分かりました。それでは私は書類の方をまとめていきますね」

 ディスプリーナは一礼をしてその場を立ち去った。

「さて、アデン。今、アイツは停学中で明日から戻ってくる筈だ。私としては問題児が二人揃って登校されるのは困るんだ……」

ゴクリ

 怯えるアデンを前に、リオナはニヤリと笑ってみせた。

 その日の放課後、学院校舎の東。ここには今は使われていない旧校舎が撤去予定として未だ取り残されており、立ち入り禁止とされていた。その旧校舎の一画、誰にも使われていない筈の教室に数名の人影があった。

「ブンパさん、アイツはダメですって」

「そうっすよ。アイツを入れたところで僕達じゃコントロールできませんて」

 そこでは二人の男子生徒が、ブンパを宥めるように訴えていた。

「ちっ、アイツはレフォンス家の俺の誘いを断ったんだぞ?許せるわけねぇだろ!」

「いやいや、ブンパさん。復讐とかもやめましょう?!それに明日はあの霹靂も戻ってきます。アデンをやったとなれば霹靂が黙っちゃいない。アイツは危険です!」

「霹靂の魔法使い、ライナ・フェリックスか……。チッ、フェリックスは厄介だ。しかし、今日のことをどう兄上に説明すれば……。おい、帰るぞお前ら!」

 そして三人の男は旧校舎から消えていった。



 一方、ここは学院にある地下牢で、かつてとある実験を行う際に使われていたと言われている場所だ。今は使われていない牢に蝋燭の灯りと共に現れたのは、錠の鍵を持った学院長リオナだった。暗く静まった通路を蝋の灯りで照らしながら歩き進む。そしてある牢の前で足を止めた。

「おい、いつまで寝ている?さっさとしないと期間をのばすぞ?」

 リオナが話しかけた先には、上裸の男が手錠をかけられ座り込んでいた。

「おいおい、ここは昼夜よぉ、俺はこの二週間碌に寝させてもらえねぇんだぜ?無茶言うなよ、姉さん」

ガチャ

 リオナは牢を開け、男の手錠を外した。

「ふっ、お前の言い分など知ったことではない。ったく、アデンといいお前といい何故今年の一年は問題児ばかりなんだか…。ライナ、次な何かやらかしてでもしたら退学は免れないと思えよ?」

「ああ、わかってるさ」

 笑いながら牢から出てきたのは、黄金に輝く瞳に黒い髪と白い肌を持ち合わせた少年、ライナ・フェリックスだった。
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