僕と先生は、終わった。

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第1章 同棲生活始まります!?

僕らと泥棒と、話

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 …中井君?
長月君と同じクラスの彼のことだろうか…。
確か吹奏楽部で、文系で読書が好きで、ワイワイ騒ぐタイプじゃないけど穏やかで落ち着いてるから友達も多い子だ。
あまり人とつるまない長月君も彼とはよく一緒にいるところを見かける。
なぜここで中井君の話が出るんだ?
僕は長月君に説明を求めるも、そっと手で制されてしまった。
暁人君と中井君の間になにがあるんだろう。
全く共通点が見つからない。
僕と夏樹君が、火花を散らす二人の間でおろおろしていると、暁人君がなんでもないように首を傾げた。
「…誰だよ、それ。」
本当にわからないと言ったような顔だ。
しかし長月君の眉間のシワは深まっていくばかり。
そして、長月君は嘲笑うように鼻を鳴らした。
「まあ、そうだよなぁ。あんな読書しか趣味のないやつとお前みたいな生意気で目ぇギラギラさせてるような奴が、合う訳ないもんな。」
その瞬間、暁人君の瞳が変わった、気がした。
空間が凍りついた。
暁人君は何もしない。長月君に殴りかかったり、ひどい暴言を吐いたりもしない。
ただぐっと力を込めて長月君を睨みつけている。
その目がどんな残酷な行いより、暴力的だった。
そして少しずつ含むようにゆっくりと言葉を紡いでいく。

「てめぇに、あいつの、何がわかる。」

夏樹君の顔が青く染まっていく。おそらくこんなふうに感情を前面に出した弟を初めて見たのだろう。
と冷静を装って思っている僕も多分おんなじぐらい顔が青いと思う。
怖い…!!

しかし長月君は動じなかった。
「ごめん、ウソだよ。あいつはいいやつだ。無理に関係を暴いたみたいな形になっちゃったけど、俺はただお前があいつを傷つけなければそれでいい。」
長月君が謝ると、暁人君の負のオーラはするすると消えていき、彼は今度はしゅんとなって呟くように尋ねた。
「…気持ち悪いと思わねえのかよ。」
長月君は同情するように少しだけ微笑んだ、気がする。
「気持ちわかるよ。」

それから僕らはお茶をいただいてから帰路についた。
…で結局二人の関係はどういうあれなんだろう。
夏樹君はなんだかうっすらわかった感じだったけど、長月君曰く死ぬほど鈍感な僕はわからずじまいだった。
しかし僕のスイカヒーローは無事に帰還したわけだし、二人もなんか謎に心が通じ合ったようだし、いい休日だったと言っていいだろう。
まあ、昨日強盗に遭ったことはすぐには忘れ難いと思うけど。
…でも、どういうわけか根っからの悪人には見えないんだよな…。
長月君もそれは感じ取ったようで、
最後に夏樹君が僕らに差し出した握手にも応えていた。
昨日襲われかけた相手を許すって流石にお人好しも過ぎるんじゃないかと僕は思ったけど、長月君が暁人君との繋がりを切りたくなさそうだったし。
…まあいっか。
しかし、一つだけ気になったことがあった。
長月君が暁人君に笑顔を向けたとき、心臓のあたりがきりきりしたことだ。
それは長月君か暁人君を見るとまたきりきり痛みだす。
ちょっと近いうちに病院に行かないといけないかもしれない。
あんまり運動しないし、自炊はするけど栄養のことなんてそこまで考えてないし。
心臓の病気の予兆とかだったら嫌だ。
まあ、すぐに倒れて長月君に迷惑をかけることはないだろう。
いつのまにか雨は上がっていた。
結構降ったらしく、地面から蒸した空気が上がってきて少し肌が気持ち悪い。
僕がじっと考え事をして押し黙っていたせいか、帰り道長月君は一言も喋らなかった。
しかし2時間後僕は、長月君がその時ものすごく怒っていたのだと知るのだった。

帰ってくると、もう一時を超えていた。
きっと長月君はお腹が空いただろう。
冷蔵庫にはほとんど何もなかった。思わず苦笑して、仕方なしに唯一あったうどんを作ることにした。
丼にうどんをいれて、とろろと生卵と長ネギを入れた特性うどんだ。
「長月君、持っていって。」
僕はリビングでテレビを見ている長月君に声を掛けた。
しばらくしてそろそろと彼がキッチンに入ってきた。
帰ってきてすぐにうどんを作り始めたので灯りをつけるのも忘れていた。そのせいでキッチンは昼間なのに薄暗い。
僕は七味やお箸をお盆にのせていた。

「長月くんは七味…って、え?」

おかしい。
リビングにお昼ご飯を運ぶのに、後ろから抱きしめられる必要がある訳ない。
「…長月君?」
僕は力強く抱きしめられて動けなくなった。
あまりに力が強くて、少し息が苦しくなってきたけど、どういうわけかイヤではない。
なんだか不思議な気分だった。
それに、背は高いけど細身な長月君のどこにこんな力があるのかも不思議だった。
「あの…お昼食べよう?」
そう言ってみても長月君は手を緩めてくれない。
おかしい。
なんか、頬が熱い。
おかしい…!
そして僕の息ももう苦しくて限界だ。
「苦しいよ、離して?」
長月君はやっと離してくれたが、僕の肩をがっとつかんで反転させ、向き直らせた。
「先生、昨日はいろいろありすぎて言えませんでしたが、今言います。」
な、何をいうというんだろう。
そんな鬼のような形相で。
僕はじっと身動きもせず待っていた。
息もできないほど張り詰めた空気に包まれたまま、待ち続けたのだ。
しかし、長月くんは何も言わなかった。
そのままゆっくりと顔を近づけてきたのだ。
抵抗できたはずなのに、体が動かない。
そして、なにか柔らかいものが触れる感触を唇に覚えた。
それは、淡い、触れるだけのキスだった。
リップ音が口内に響いた。
「な、長月くん?前も言ったじゃない、そんな過激なボケにはついていけないって。そういうことするのは好きな人にだけの方が…んっ。」
まくしたてた言葉が長月君の唇に吸い込まれていった。
甘い、熱い。
「んん、ぁっ、ちょ…。」
そのまま唇をなぞられ、口内に舌が侵入してくる。
掻き回されると自然と普段では考えられないように甘ったるい声が漏れる。
イヤだ、こんな変態みたいな声出して。
でも認めたくはない。
僕は今長月君にこんなことされてもなぜか嫌じゃないのだ。
そのまま口内をゆっくりと甘さで満たされて、やっと唇が離された。
「んっ、はぁ、はぁ。」
銀の糸が二人の間で繋がったまま、

「話は、これからですよ。」

長月くんは僕にそっと耳打ちしたのだった。

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