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ユメ?

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いつものようにくだらない授業に耐えて、いつものように高校生を演じたその夜。
珍しく、ベッドに入ってすぐに眠気が来た。
ふわふわとした心地よさに、小さく息を吐く。
その拍子にどんどん夢の中に落ちていくのがわかった。


「起きて、起きてってば!」
どこからか声がしてふと目を開けた。

俺は大草原の中、つったっていた。
足元の草が、吹き荒れる風にあたって揺れている。
「あ、そうか。ここは夢の中なんだ。」
思わず出た呟きを、誰かが笑った。
振り向くと、そこには一人の人間らしき影があった。
風が強くて、目が開けられなくて、顔がよく見えない。
「初めまして、っていうべきなのかな?やっと会えたね…。嬉しいよ。」
それの口元がふわりと笑って、こっちに足を踏み出して近づいてきた。
なんとなく嫌な予感がして、後ずさってみたけど、どんどん強くなる風のせいで、今自分がどこにいるのかもわからない。
ただ、自分の中で、何かが叫んでいる。
こいつに触れてはならないと、こいつは危険だ、と。
叫びは、俺をどんどん侵食していくように、大きくなっていく。それとともに鼓動が早くなって、冷や汗が吹き出てくる。
一体こいつは何者だ?
「…怖いの?大丈夫。ここは夢なんだから、キミが危険な目にはあったりしないよ。」
そう言われてふ、と体の力が抜けて、その影はチャンス!と、素早く俺の肩に手を置いた。
その瞬間風がピタリと止んだ。
俺は影の顔を見た。

俺は俺の顔を見た。




「初めまして。」
これは鏡なのか?
「鏡じゃないよ。言ったでしょ?ここは夢の中なんだ。だから、なんでもオッケーなんだよ。」
「あ、そうすか。んで、あなたは?」
そうか、夢の中だもんな。明日の朝起きたら
忘れちゃうようなことだ。

別になんでもいいだろう。

「んもぅ!なんでもいいとはなんだよぅ!
失礼だなぁ、僕はたしかにここに存在してるのに!それを明日起きたら忘れちゃうだって?なんでもいいだって?」
なんだかプリプリ一人で怒ってる。
なんとなくごめんなさいというと、その子はニカッと笑った。意外と単純だ。
「あ、敬語とかもいいから!僕はキミなんだし。あ、好きに呼んでくれていいよ!」
好きに呼べと言われても…。
「んじゃぁ、夢の中にいるから、ユメ。」
テキトーに、俺からしたら頭を使って考えてみると、その子は
「なんだよその犬に名前つけるみたいなイイカゲンな感じはー!」
とまたプリプリ怒った。

「それじゃ、僕たちのお話をしようか。」














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