ルート7≒菜に虫いない

ザノ・夕ナ

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令嬢、令和にあこがれた男たち

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 最終学歴の大学が偏差値約55の男、無職し続けて五十五年目の男、ブラック企業づとめの五十五歳の男……この三人とも、令和に、恋している。全部同じ、令和だ。
 〝令和〟、これで、〝レイア〟だ。
「ああ……レイア……♡」
 レイアは、Rカップであーる。
 いま部屋で、ひとり、卒アルをながめる男がいる。彼は、レイアに恋して、五十八年目だ。
「レイア!」
 いま部屋で、ひとり、会社から帰宅した男が、『レイラ』という歌詞の曲を替え歌で歌っている。彼、五十五歳。『レイラ』という歌詞の曲は、五十五歳が歌ってるだけあって、結構古い。
「結局ビジネスだ。そして、会社につとめてないと駄目だ。俺は、若い頃、ミュージシャンを目指していた。レッド・ツェッペリンリンっていうバンドのジミ・ペイジにあこがれてギターも練習したんだ。だが……ピンク・フロイドンドンのデイヴ・ジルモアが言っていたように、時の流れは残酷で、気づけば、もう五十五歳で、それ以前に俺のデビューシーンは遅れていて、もうおっさんだ。ああチクショウ! ……独身で語る相手もいないんだ! これは独り言なんだ! ……よく自殺しないでいきてるなとか思ったか? ……そうだ……黒魔術の本買おう。ジミ・ペイジは、アレイスター・クローリーのファンだというのもあって、黒魔術本、気になっていたんだ」
 名古屋のどこかに呪われた会社がある。その会社は、黒魔術をもとにして、たてられた。よって、呪われた。
 岐阜出身の令嬢、令和は、東京大学に進学して、ハーヴァード大学に留学。卒業。そして、オックスフォード大学に入学した。実は、この進学や留学、そして、卒業はすべて、コネによるものだ。でも令和自身はバカというわけではなく、学習態度はよいものだ。だがそれが東京大学に進学できるものだったかは微妙だ。そういった、秘密もあるのだ。
 名古屋のビルのどこかにカジノをたてたものがいるようだ。
 闇カジノも経営している、その、最終学歴の大学が偏差値約55の男、石黒。777と並ぶ瞬間を夢見ているギャンブラーたちをハメていく。いつかは、この儲けたお金で、令和をゲットしようっておもってる。
 ある日の事、777が当てられた。その客を黒魔術で呪い殺そうとしたが、そのミスった黒魔術のせいで異世界転移しちゃったこの男。
 一方、その日の晩、無職をし続けて五十五年の男、黒井はいまひとりで勉強をしている。散らかり尽くした、世界の終わりを感じさせるような部屋で。
「ルート7は、ナニムシイナイ――」
 数学を勉強中の無職。
 途中、寝ボケている。結果、意味のわからない言動と、詠唱をした。……結果、異世界転移。
 ブラック企業、帰り。もう朝だ。電車も停車中。疲れ果て、道で倒れた、黒田、冬。真冬。
 黒魔術によってたてられたブラック企業に勤務した経歴があるのに、定年退職せずに死ぬと、異世界転移できるようだ、その黒魔術の形式的に。
「あなた! 高校の時はいつもいきの駅で会う! こっちでも会えましたね!」
「あれ~、さっきまで勉強していたはずなんだが……ていうか、よくそんな昔のことまで覚えていましたね。そして、よくこのいまのホームレスっぽい僕見てあの時の僕とわかったものです」
「ああ、あれ、おまえ! おまえもか! すまなかったなあの会社の時散々コキ使ってさ!」
「いえ、社長……」と、内心イラついていった。死んだんだぞって顔で。
「レイア姫に会いにいけよ! すげえいい女!」
「レイア!」
「いや、名前までは知らないんだが、好きな女となんか似ていてさ! そこから名前借りたんだよ!」
 日本生まれ、日本育ちのその男性三人は、同じ異世界に転移して、黒魔術と無縁の、愉しい日々をおくっている。
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