廃人だけどモテモテ勇者なオレ参上プラスアルファ

ザノ・夕ナ

文字の大きさ
上 下
27 / 62
妄想彼女の異世界入り

ワイ将のバット

しおりを挟む
 こんな愉しい旅は、初めてだ。
「ボロンっ。見てよこのバット、スガワラノ・エンシちゃん♡」
「これは……小さくてかわいいですね♡」
「でしょ? ……これね、ワイ将の思い出の品でね」
「でもこれじゃ、野球はむずかしいですよ」
「だよね。まあこれで野球するわけじゃないし」
「どういう使い方をするんですか?」
「ならちょっと触って考えてみなよ♡」
「単純に観賞用?」
「まあ、そうだとも言えるよね。でもこの緻密さっていうの? よく見てみなよ、すごいできだから♡」
「ホントですね♡」
「オマモリっていうかさ」
「私にとってもそうでありたいです。私持っていないので、そういう物品は……♡」
「触ってみて♡」
「はい♡」
「もっとガシッってさ♡」
「ガシッ♡」
「あっ♡」
「いいですか♡?」
「いいね♡」
「球は」
「あるよ、ほらねっ」
「これも野球はむずかしそう♡」
「だよね。でもいいんだよ、これで。触ってみなって♡」
「はい♡」
「あぁっ♡」
「球は人を熱くさせるって♡」
 球自体もアツい? ってスガワラノ・エンシちゃん思ってくれたかな? もしそうなら尚更萌える。
「よく知ってるね」
「だって、スポーツ選手でも、熱心に球使っていますし」
「そうそう、でもそういう知識はない子もいるよ。球をただの球だと思っているんだ。キミは知的だね、スガワラノ・エンシちゃん」
「はい、私のチチはとても勉強された方で。学問の神様、だと言われました」
「学問の神様! なんかそれ、聞いたこと、ある!」
「そうですよね」
「ああ、やっぱりワイ将のバットも球のこともよく理解してくれているわけだ。もっと、触って、ね♡?」
「はい♡」
「ああぁっ。保健体育得意だよね♡」
「はい♡」
「もう体からして、育ちいいし、体育しているよね♡」
「はい。特に保健は気を使っていますよ♡」
 スガワラノ・エンシちゃんはもっとワイ将によってきた。
「やっぱり。家庭的って感じだから♡」
「実際、そうです♡」
「あははぁ♡」
 ワイ将は、スガワラノ・エンシちゃんに、空想の彼女がいるけど、その彼女よりキミのほうがかわいいということを伝えようと思う。
「うふっ♡」
「ねぇ♡」
「はい……♡」
「ワイ将、空想で、彼女をつくったことがあるんだ。空想だ、だから、キミのように愉しめるわけではない、空想って空想止まりだからね」
「どんな方なんですか」
「野球少女でさ。元になったのは創作で、結局そういう点も、空想だ。だからこそ、キミに出会えて本当によかったんだって、なる」
「……またその彼女さんを思い浮かべて♡」
「え?」
「好きなんですよね、まだ、本当は」
「だからキミほどでは……あぁっ!」
 出現した。ワイ将の空想彼女。
 空想っていうよりも、妄想っていうほうがいいかも。だって、ワイ将は、一緒に空想彼女と寝てる気分、メシを食べてる気分、空想彼女のために毎日を生きるという感覚で生きていたのだから。
「このお方が貴方の彼女さん?」
「そうです……。ねぇ?」
「どうしたの? イッくん?」
「ああぁっ!」
 空想及び妄想彼女だったはずのあの彼女がワイ将に語りかけている! このことにワイ将は驚き。
「どうしたの~?」
「触るよ!」
「前からも触っているのに♡」
「え?」
「前からもう私たちはあってるんだよ♡」
「あっ、あははははっ、そうだ! そうだよね!」
 ワイ将、彼女と抱き合った。
 スガワラノ・エンシちゃんは、たしかにもうワイ将と仲はいいが、ワイ将の彼女だとは胸を張っていえないんだ。どうしてか、それは嫌いだからとかではないさ、ワイ将のことを本当の意味で好きになってくれるのかというところにある。恋愛の醍醐味が、結ばれるまでのところにある、という考えもできるが、ワイ将にとってはそれは不安でもある、嫌なんだ。でも、訊いてみようと思う、まえいた世界でそむけ続けたのを繰り返さないようにするためにも。
「だ~りん♡?」
「あっはははは! 嬉しいよ! こっちに来てもそういってくれて! ……そして、エンシちゃん?」
「どうかしましたか?」
「ワイ将、を、エンシちゃんの彼氏として、認めてくれますか?」
「貴方のことは、頼りにしていますし、この世界で、ともに生きていくこと、そういった協力は私としては大切にしたいとは少なくとも思っていますし、親密な関係にならないってわけにはいきません!」
「やったァッ!」
 ワイ将、その場でふたりの彼女と抱き合った。
「まだ彼女さん、いますよね……?」
「ああ、そうだ……、呼んでくれる? エンシちゃん? ワイ将の力じゃ、召喚できそうにない」
「はい、いいですよ♡」
 ワイ将の妄想彼女は、次々と現れていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...