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オナニ様陣営

山田和氏、オナニ様と出会う

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 底辺校卒業後、メカトロ部だったというコネで進学を可能にした男、山田和氏。
 山田和氏は、ヤマカズのあだ名で呼ばれている。
 山田和氏の身長壱百六拾センチメートル。
 山田和氏の体重通っている学校でもっとも重いキログラム。
 山田和氏は、メガネをかけている。
 現在専門学校除籍寸前の山田和氏。もう彼は、人生に意味を見出せないと思い出している。それがいまのヲレ氏、こと山田和氏。
 ヲレ氏が一人称さ。

 学校に通うのが嫌で、創作活動を考えだしたヲレ氏。
 ヲレ氏は専門学校進学後、一度も髪の毛を切らずにいて、ロン毛なのさ、いま肩ぐらいまで伸びている。毛のセットには小一時間以上かけている。でもべつに、ファッションリーダーとかではないからな。
 ヲレ氏はミシャグジ様を信仰することで下半身の伸びがよくなるのだろうと思う。思い立った。
 早速創作に使わせてもらおうとなって、使った。その辺から不吉なことがもっと増えだしたんだ。
 ヲレ氏は昔から不吉なことがよく起きる宿命を感じていた。
 ヲレ氏はミシャグジ様を彼女にする話を作ったりしていた、♡とかの記号をセリフにつけるぐらいに愛していますというのを表現。主役は結局ヲレ氏で、創作活動は自己満足をモットーにした。そして、ミシャグジ様があまりにもヲレ氏のことを不快に思ったのか、今日、会ったんだ。会いにきたんだ、向こうから。もうすぐにわかった。向こうから名乗りでなくても、このお方がミシャグジ様なんだって、テレパシーっていうの? でもいるよね、宗教系の人で宇宙人とか、死んだ人と対話できる人って。
 でも、不快にさせたから会えるなんて、寧ろレアで、普通は警察だとかが来る。ミシャグジ様は神だから、瞬時にヲレ氏のもとに来れる。
 ミシャグジ様はとても美人でヲレ氏の部屋で一緒にいるのがそういった意味でも奇跡的光景。そもそも神と会える時点で奇跡だ。
 ヲレ氏の通う専門学校は街にある。結構の都会だ。でも、人がすごくいるとかとは違って、街のビルのショーウィンドーによくうつってるんだ、ヲレ氏が。
 ヲレ氏は街のビルのショーウィンドーにうつるヲレ氏を見て落胆した。睡眠中に夢を見て、その時もそういう嫌な光景が浮かんできてかなしいんだ。すごく下半身が短く見えるからってのは特にあるんだ、でもほかにもあるよ、特にあること。なんか、こう、ほかにもあるぞっていうの、うちのジジイとババアが、ヲレ氏に悪口言うとき、よく使う、それ嫌いだ。
「なぜ様と付けない」
「さ、ま……?」
「ミシャグジ様、と」
「ああっ! すみません!」
「そもそも、もっとちゃんとした大学で神について学んでから創作をしろ」
「低学歴ですみません!」
「しかも、初期のほうの表記がミシャクジだったりミシャグシだったりバラバラで覚えてもらえてないし、テキトーに私を使いすぎだ」
「すみません! ヲレ氏、実はあなたのこと、全然知りません!」
「教えてやろう」
「ありがとうございます!」
「……もしかして、すべてこちら側にまかそうとでも?」
「すみません!」
 ヲレ氏はネットでミシャグジ様のことをいろいろと、調べた。
 なんと、あの特にマニア受けするゲーム会社、アストラまでも祟ったんだって。ゲームでミシャクジ様を雑に使ったのがまずかったようだ、しかし、主役にしないといけないとかではないようで、いいものであると描いてあれば、問題はないとヲレ氏は思う。
 ヲレ氏はミシャグジ様をとても綺麗で素晴らしいお方だと描いた。でも、様付け忘れがよくなかった。実は、単なる説教ではなく、とても綺麗で素晴らしい存在に描いたヲレ氏への感謝の意を込めてここに来てくれたのか?
 アストラはミシャグジ様に祟られてから、トラブルが続いて、謝りにいったんだと。でもどうせアストラの人たちは、ヲレ氏みたいに実際にこの方とは会っていないのだろう。ヲレ氏、怒られてるだろうっていうこの瞬間でも、今後なぜかずっとこのお方と一緒に生活できると思っている、気に入ってくれると、思っている、なぜか。不思議だ。もしかして、先程、ヲレ氏にミシャグジ様であるのを伝えたあれのように、今後も一緒に暮らそうねって、伝えてくれているのかもしれない。
 ヲレ氏とミシャグジ様の毛の長さは同じぐらい。これは、お似合いカップルだととっていいのか。
「祟られるの、怖いか?」
「あなたに祟られるなら、寧ろ気持ちいいかもしれませんね」
「単に祟ってもおもしろみがないだろ、なら、異世界にでも、飛ばしてやろうか。祟るのは、最後の最後ってことにして」
(え? 異世界転移? それってご褒美? あまりに急にデレてると変だから、祟るといってツンツンしているのか? アハハ♡)
「ものすごくニヤけているな」
「そりゃもう♡」
「よし、ならどこへいきたいんだ。どんなところがこのみなんだ。いってみるがいい」
「ウユニ塩湖みたいな! そこから始まる物語ってかっこいいじゃんって!」
「なんか、馴れ馴れしすぎないか?」
「すみません!」
「私は、御何っていうんだ、真名」
「オナニっ?」
「様を付けろ」
「オナニ様!」
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