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やっぱり君はいつだて正しい

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ジャッキー・チェンの映画のエンドロールで流れるNG集的な話を2つ。



まず、1つ目。


私が最初Sさん宅に着いて、27年振りに会った時。


ゆきおさん、山ちゃん、私と3人でSさんがいる部屋に入った。


そこで、それぞれSさんに「頑張って下さい!」「元気になって下さい!」と声掛けをしていた。


すると、ゆきおさんが声掛けをしている間、山ちゃんがスマホのライン通知が入ったのか画面をじっと見つめていた。


そして、山ちゃんが言った。


「Iさん昨日来て、Sさんに最後の言葉伝えたみたいっす!」


Iさんは、昨日、Sさんをお見舞いした時に、Sさんに最後の言葉を伝えたというメッセージが入った。


正直、私も迷っていた。


まだ生きようと懸命に頑張っているSさんに、最後の言葉を言うというのは、お別れの言葉みたいで不謹慎というか・・


でも、考えてみれば、伝えられる時に伝えなければ後悔してしまう。


流石、Iさん。


Iさんの助言を受けて山ちゃんが。


「言った方がいいっすよ!最後の言葉!伝えた方がいいっすよ!」


元々、私はSさんに伝えたい言葉を考えていた。なので、それを心の中で反復して、噛まないように伝える準備をした。


(あなたに出会って・・・彩りある・・・青春、人生その・・)


かわいそうだったのはゆきおさん。


たまたま、Sさんに声掛け中だったゆきおさん。


「ゆきおさん!言った方がいいっすよ!最後の言葉!」


いきなり山ちゃんに言われて、しばらく躊躇していたゆきおさん。


「ゆきおさん!最後の言葉、言った方がいいっすよ!」


再度、山ちゃんからの追い討ち。


もう、見ててバンジージャンプの立ち位置に着いたばかりなのに、「はいっ!3、2、1、バンジーーー!」つって、心の準備が出来ていないうちに、背中押されたようなもんだった。


しばらく躊躇して、ようやく意を決してゆきおさんは言った。


「ゴニョゴニョゴニョ・・・」


何言ってるか聞き取れなかった。(笑)


元々、口下手っぽいゆきおさん。(ゆきおさん、ゴメンね)


あれは気の毒だったなぁ・・・。



2つ目。


大先輩Iさんがグループラインで。


「岡山からコブシが来るみたいです。知らない人もいるだろうから紹介します。岡山のインチキエロ野郎です。」


とコメントを打ち込んだ。


私よりも後の世代は、27年もOB会に顔を出していない私の事は知る由もない。


親切にもIさんは、私の事を知らない人に丁寧に・・・って、おーーーい!インチキエロ野郎って。(笑)


私の人となりを知らない人は、コブシ=インチキエロ野郎と真っ白な画用紙に書き込まれたことだろう。


も~Iさんったら~!知らない人が聞いたら、どんだけエエ加減でエロい奴やと思われ・・・ハードパンチャーらしく私の真芯捉えた表現です。(笑)


で、まだ元気だったSさんが、そのラインコメントを見て、速攻Iさんに電話した。


「I!コブシの事、あんな書き方するのはよくないよー!」


「すみません・・」


Iさん、Sさんに注意されて、追加のコメントを送信。


「コブシはインチキエロ野郎ではありません。」


まだ、誰もリアクションを取る前に、この2つのコメントが連続で書き込まれた。


・・・いやいやいや、行間に何らかの圧力がかかったかのようになってるじゃないっすか!(笑)


そして、Iさん。Sさんに注意されて、少し動揺したのか“コブシはインチキエロ野郎ではありません”というコメントを削除してしまった。


って、結局、振り出しに戻ってますやん!Iさん!(笑)


また、Sさんに怒られ・・・そっか・・もうSさん居ないのか・・・


本当、最後の最後まで教え子の事心配してくれるなんて・・・アカン、また泣けてしまう・・。


でも、かつての自分の試合のビデオにSさんの声は、しっかり残っている。



「下がんな、下がんな、下がんな!!」



「お前の方がパンチあんだから、前に出ろ!」



「歯食いしばれ!!」



「効いてんだよ、コブシ!詰めちゃえよ!」



「ナーーイスボディ!!」



そのSさんの言葉一つ一つは、私の人生の応援歌として、いつでもビデオを再生すれば聞く事ができる。


『あなたに出会って、私の人生は彩りあるものになりました。あなたは私の青春、人生そのもの。本当にありがとうございました!』


酸素マスクを着けて必死に生きようとしていたSさんの耳元で手を握りながら直接伝えた言葉。


Sさんから教えて頂いた優しさと強さを忘れず、明日からまた生きていきます。


どうか安らかに・・・


Sさん、本当にありがとうございました!











あ、最後にもう一丁!


無事に2日間の旅路を終え、夕方岡山に着いた私。


丁度、娘の塾が終わる時間だった。


最寄り駅から歩いていつものスーパーを横切ろうとした時、見慣れた車のナンバー。


嫁さんが娘の迎えの為、駐車場にいた。


マスクもしてたし、感染対策バッチリしてたアピールにもなると、車に近づいた。


私に気付いて、ウィンドーを下げた嫁さん。


「無事に帰って来ました。ありがとうございました。」


すると、嫁さん。


「アンタ、マスク2枚してないやん。」


あっ!そや、マスク2枚重ねて感染対策ちゃんとやってよ!って言われてた!


「あ、いや、ちょっと駅から歩いて息苦しくなって、途中で1枚外してん・・」


つくづく自分でもイヤになるんだけれど、自分の保身の為なら、息するようにウソをついてしまう男らしくない私。


お前、2枚重ねてたん行きの新幹線の中だけだろって。


「な、結局そうやろ。」


やっぱり君はいつだって正しい。(笑)


こりゃ一生頭上がらんな。


というわけで、性根は変わらんという事にも思い知らされた2日間でした。
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