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別れの予感・・・
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パパパパーーーン!
ジム内に小気味いい音が響く。勇二のスピードあるコンビネーションが藤木会長のミットに吸い込まれる。
「いいね~勇二!パンチの切れが凄いな!7年ブランクがあったなんて信じられないな!お前はやっぱりプロだな!」
藤木会長が目を細めて勇二を褒めた。自分でもそう思っていた。
あ、やっぱ俺はプロなんだなって。
減量も順調。体のキレも現役の頃と遜色ないくらい戻っていた。
いや~試合まで3ヶ月しかなかったから準備時間が足りませんでした!なんて言い訳ができないくらい順調だった。
勿論、君子が鶏のささみ、豆腐など健気に減量を考えたメニューでサポートしてくれているお陰でもある。
「私も勇二と一緒に闘うからね!」
勇二の負担を少しでも減らす為あれこれ努力してくれていた。
試合まで2週間を切った。
練習のピークも越え、これから徐々に疲れを取っていかなければならない。
「ただいま。」
・・・・・
いつもの元気な君子の声がしない。
いないのかな?
君子がいつも履いている靴を確認した。
あれ?いるのにな?どしたんやろ?
勇二は急いで居間に入った。
君子は正座して俯いていた。
「・・・なんや、居るんかいな。びっくりするやん!」
「・・・・・」
「ど、どうしたん?何かあったん?」
黙ったままの君子。
「おい!どうしたん?なんで黙ってるん?」
勇二はとうとうこの日がきたか・・という思いがあった。
籍を入れて1年。付き合い期間も入れたら2年。
その間、君子の事を大事にしていた、なんてとても言えるような事をしたことがなかった。
いつも元気で明るい君子。
でも、たった1度。そう、1度だけ。
君子の感情が爆発した事があった。
「ねぇ、私、何の為に生まれてきたのかな?」
ある日、突然、思い詰めた表情で勇二に聞いてきた。
テレビ画面を見つめたまま、何も答えない勇二。
「私、何の為に生まれてきたのかな?って聞いてんのよ?」
「・・・え?」
それでも視線を君子に移さずテレビを見つめたまま気のない返事をする勇二。
「私!何の為に生まれてきたのよーーー!」
勇二は何も答えられなかった・・・
結局、その日は泣きじゃくる君子に何の言葉も掛けられないまま1日を終えた。
翌日、何事もなかったかのように明るい君子が台所にいた。
あれは夢だったのかな?って思わせるくらい普通に戻っていた君子。
あの時、俺は君子に何と言葉を掛ければ良かったのか・・・
ずっと心に引っかかっていた。
だからいつかこの日がくるんじゃないかっていう恐怖感が常に根底にあった。
これまでの君子に対する行い。自分勝手に、死んでしまうかもしれない試合を君子に相談することもなく決めた事。
様々な事が頭に過った。
「勇二・・話があるんだけど・・・」
とうとう終わりかな・・・
勇二は覚悟した。
ジム内に小気味いい音が響く。勇二のスピードあるコンビネーションが藤木会長のミットに吸い込まれる。
「いいね~勇二!パンチの切れが凄いな!7年ブランクがあったなんて信じられないな!お前はやっぱりプロだな!」
藤木会長が目を細めて勇二を褒めた。自分でもそう思っていた。
あ、やっぱ俺はプロなんだなって。
減量も順調。体のキレも現役の頃と遜色ないくらい戻っていた。
いや~試合まで3ヶ月しかなかったから準備時間が足りませんでした!なんて言い訳ができないくらい順調だった。
勿論、君子が鶏のささみ、豆腐など健気に減量を考えたメニューでサポートしてくれているお陰でもある。
「私も勇二と一緒に闘うからね!」
勇二の負担を少しでも減らす為あれこれ努力してくれていた。
試合まで2週間を切った。
練習のピークも越え、これから徐々に疲れを取っていかなければならない。
「ただいま。」
・・・・・
いつもの元気な君子の声がしない。
いないのかな?
君子がいつも履いている靴を確認した。
あれ?いるのにな?どしたんやろ?
勇二は急いで居間に入った。
君子は正座して俯いていた。
「・・・なんや、居るんかいな。びっくりするやん!」
「・・・・・」
「ど、どうしたん?何かあったん?」
黙ったままの君子。
「おい!どうしたん?なんで黙ってるん?」
勇二はとうとうこの日がきたか・・という思いがあった。
籍を入れて1年。付き合い期間も入れたら2年。
その間、君子の事を大事にしていた、なんてとても言えるような事をしたことがなかった。
いつも元気で明るい君子。
でも、たった1度。そう、1度だけ。
君子の感情が爆発した事があった。
「ねぇ、私、何の為に生まれてきたのかな?」
ある日、突然、思い詰めた表情で勇二に聞いてきた。
テレビ画面を見つめたまま、何も答えない勇二。
「私、何の為に生まれてきたのかな?って聞いてんのよ?」
「・・・え?」
それでも視線を君子に移さずテレビを見つめたまま気のない返事をする勇二。
「私!何の為に生まれてきたのよーーー!」
勇二は何も答えられなかった・・・
結局、その日は泣きじゃくる君子に何の言葉も掛けられないまま1日を終えた。
翌日、何事もなかったかのように明るい君子が台所にいた。
あれは夢だったのかな?って思わせるくらい普通に戻っていた君子。
あの時、俺は君子に何と言葉を掛ければ良かったのか・・・
ずっと心に引っかかっていた。
だからいつかこの日がくるんじゃないかっていう恐怖感が常に根底にあった。
これまでの君子に対する行い。自分勝手に、死んでしまうかもしれない試合を君子に相談することもなく決めた事。
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「勇二・・話があるんだけど・・・」
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