コブシ文庫(ブルー)

コブシ

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素意や!

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去る21日、嫁方の親族の葬儀で姫路に行った。

前日、めったに着ない白いカッターシャツを出してみると、しわくちゃだった。

 嫁もいろいろ準備が大変そうだったので、シャツをアイロン掛け。

翌日は私服で行き、ホールで着替えようと思い、シャツを荷物の横に畳んで置いて、嫁より先に就寝。

いつもの如く、朝は時間に追われ、慌ただしかった。

吊ってある喪服と荷物、革靴等を慌ただしく車に積んで出発。

本当は、この葬儀に行けない用事があったんだけれど、急遽、行ける事になった。

嫁のお母さんの弟さんが亡くなったんだけれど、実は楽しみもあった。

九州に住んでいる、嫁のお母さんの妹さんに会える事だった。

10数年前に初めて会って以来、2回目。

その時も、葬儀だった。

この叔母さん、キャラクターが濃すぎるくらい強烈だった。

内腿に薔薇の華が咲いているとかいないとか。

とにかく、話す言葉の8割方が巻き舌なのである。

極妻臭がハンパない。

姫路のホールの駐車場に着き、車を止めようとしていた。

すると、頭まっキンキンでタバコをくわえた叔母さんがいた。

「Kおばさん、変わってないな~!」

相変わらずの極妻臭。

叔母さんも私たちに気付き、手を振っていた。

「久しぶりやな~!」

御年72、3歳。

少し痩せたくらいで、10数年前と迫力は変わってなかった。

控え室に入ると、嫁方の親族たちがいた。

この親族たち、とにかく明るい。

とても悲しみにくれる遺族とは思えないくらい、笑い声に包まれていた。

亡くなった叔父さんも、とても明るい方だった。

挨拶を済ませ、喪服に着替えようと、嫁と更衣室に。

荷物を開け、下着、カッターシャツを出・・・下着はあったけれど、カッターシャツがない!

「えっ、ウソ!マジ?シャツないわ!」

慌てふためく私。

「俺、荷物の側にシャツ置いといたんやけど知らん?」

「え、そういえば、シワになったらアカン思て、ハンガーに掛けたわ。」

おーーい!何やねん、この逆思いやり!

「おいーー!頼むわ!なんで・・・」

「もう、今さらごちゃごちゃ言うてもしゃーないやん!対策考えよ!」

仰る通り!女は切り替えが早い。

しかし、開式の時間は迫っていた。

着替え終わった嫁が、みんなに報告。

「えーーー!どないすんの!」

「さすがコブシさんや!」

「笑かしよんなー!」

親族の間でも、私の間抜け振り、お笑いキャラは周知済み。

こうなりゃ、皆の期待に答えるべく、明るく飛び出してやるか!

V字の下着はあるので、喪服を着て、さながら、一世風靡セピアといったところか。

「素意や!」とポーズを決め、飛び出す決心がついた時。

「アンタ!Kさんが替えのシャツ持ってるって!」

この世に仏はおわしまします。

なんという救いの手!

Kさんは、私と同じ年くらいで、K叔母さんの娘婿。

Kさんとも、10数年前に初めて会って以来。

確か、トラック運転手で、少し顔が長く、おアゴが少~しだけシャクれている。

前の葬儀後の酒席で、酔った私は、しきりに初めて会ったKさんのシャクれ具合をいじっていた。

〈Kさん!あん時は、シャクれいじってゴメン!〉

心の中で、蓮華合掌。

「皆様、そろそろ式場の方にお入り下さい!」

そうこうしている間に、開式の時間に。

「おっと、麻薬入っとるから忘れんように持っていかな!」

そう言って、バックを手に取るK叔母さん

だから、K叔母さん、冗談に聞こえんから。(笑)

なんとか事なきを得、葬儀も無事終了。

お斎の席で。

K叔母さんと同じテーブルに着き、葬儀の後とは思えないくらいワーワー騒いでいた。

亡くなった叔父さんの娘さんが、各テーブルを回り、記念写真を撮っていた。

この娘さんも、お父さんが亡くなったとは思えないくらい、気丈に明るく振る舞っていた。

そして、叔父さんの遺影をバックに写真を撮ろうとした時。

「はい!2+2は?」

K叔母さんが声を張り上げる。

〈ん?1ちゃうのんや。2?なんで?〉

すぐには理解できなかった。

「えーーー!4〈し〉やん!」

一同、爆笑!

やっぱK叔母さん、ぶっ飛んでる。

好きやわー。

因みに、その日、私たち家族、お母さん、K叔母さんと泊まったんだけど、シャツ忘れた事を10回以上いじられた。
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