27 / 27
素意や!
しおりを挟む去る21日、嫁方の親族の葬儀で姫路に行った。
前日、めったに着ない白いカッターシャツを出してみると、しわくちゃだった。
嫁もいろいろ準備が大変そうだったので、シャツをアイロン掛け。
翌日は私服で行き、ホールで着替えようと思い、シャツを荷物の横に畳んで置いて、嫁より先に就寝。
いつもの如く、朝は時間に追われ、慌ただしかった。
吊ってある喪服と荷物、革靴等を慌ただしく車に積んで出発。
本当は、この葬儀に行けない用事があったんだけれど、急遽、行ける事になった。
嫁のお母さんの弟さんが亡くなったんだけれど、実は楽しみもあった。
九州に住んでいる、嫁のお母さんの妹さんに会える事だった。
10数年前に初めて会って以来、2回目。
その時も、葬儀だった。
この叔母さん、キャラクターが濃すぎるくらい強烈だった。
内腿に薔薇の華が咲いているとかいないとか。
とにかく、話す言葉の8割方が巻き舌なのである。
極妻臭がハンパない。
姫路のホールの駐車場に着き、車を止めようとしていた。
すると、頭まっキンキンでタバコをくわえた叔母さんがいた。
「Kおばさん、変わってないな~!」
相変わらずの極妻臭。
叔母さんも私たちに気付き、手を振っていた。
「久しぶりやな~!」
御年72、3歳。
少し痩せたくらいで、10数年前と迫力は変わってなかった。
控え室に入ると、嫁方の親族たちがいた。
この親族たち、とにかく明るい。
とても悲しみにくれる遺族とは思えないくらい、笑い声に包まれていた。
亡くなった叔父さんも、とても明るい方だった。
挨拶を済ませ、喪服に着替えようと、嫁と更衣室に。
荷物を開け、下着、カッターシャツを出・・・下着はあったけれど、カッターシャツがない!
「えっ、ウソ!マジ?シャツないわ!」
慌てふためく私。
「俺、荷物の側にシャツ置いといたんやけど知らん?」
「え、そういえば、シワになったらアカン思て、ハンガーに掛けたわ。」
おーーい!何やねん、この逆思いやり!
「おいーー!頼むわ!なんで・・・」
「もう、今さらごちゃごちゃ言うてもしゃーないやん!対策考えよ!」
仰る通り!女は切り替えが早い。
しかし、開式の時間は迫っていた。
着替え終わった嫁が、みんなに報告。
「えーーー!どないすんの!」
「さすがコブシさんや!」
「笑かしよんなー!」
親族の間でも、私の間抜け振り、お笑いキャラは周知済み。
こうなりゃ、皆の期待に答えるべく、明るく飛び出してやるか!
V字の下着はあるので、喪服を着て、さながら、一世風靡セピアといったところか。
「素意や!」とポーズを決め、飛び出す決心がついた時。
「アンタ!Kさんが替えのシャツ持ってるって!」
この世に仏はおわしまします。
なんという救いの手!
Kさんは、私と同じ年くらいで、K叔母さんの娘婿。
Kさんとも、10数年前に初めて会って以来。
確か、トラック運転手で、少し顔が長く、おアゴが少~しだけシャクれている。
前の葬儀後の酒席で、酔った私は、しきりに初めて会ったKさんのシャクれ具合をいじっていた。
〈Kさん!あん時は、シャクれいじってゴメン!〉
心の中で、蓮華合掌。
「皆様、そろそろ式場の方にお入り下さい!」
そうこうしている間に、開式の時間に。
「おっと、麻薬入っとるから忘れんように持っていかな!」
そう言って、バックを手に取るK叔母さん
だから、K叔母さん、冗談に聞こえんから。(笑)
なんとか事なきを得、葬儀も無事終了。
お斎の席で。
K叔母さんと同じテーブルに着き、葬儀の後とは思えないくらいワーワー騒いでいた。
亡くなった叔父さんの娘さんが、各テーブルを回り、記念写真を撮っていた。
この娘さんも、お父さんが亡くなったとは思えないくらい、気丈に明るく振る舞っていた。
そして、叔父さんの遺影をバックに写真を撮ろうとした時。
「はい!2+2は?」
K叔母さんが声を張り上げる。
〈ん?1ちゃうのんや。2?なんで?〉
すぐには理解できなかった。
「えーーー!4〈し〉やん!」
一同、爆笑!
やっぱK叔母さん、ぶっ飛んでる。
好きやわー。
因みに、その日、私たち家族、お母さん、K叔母さんと泊まったんだけど、シャツ忘れた事を10回以上いじられた。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

リアル男子高校生の日常
しゅんきち
エッセイ・ノンフィクション
2024年高校に入学するしゅんの毎日の高校生活をのぞいてみるやつ。
ほぼ日記です!短いのもあればたまに長いのもだしてます。
2024年7月現在、軽いうつ状態です。
2024年4月8日からスタートします!
2027年3月31日完結予定です!
たまに、話の最後に写真を載せます。
挿入写真が400枚までですので、400枚を過ぎると、古い投稿の挿入写真から削除します。[話自体は消えません]

ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜
F星人
エッセイ・ノンフィクション
※この物語は、ある男が体験した『実話』である。
尚、プライバシーの関係上、すべての人物は仮名とする。
和泉浩介(いずみ こうすけ)は、子どもの頃から『倒れちゃいけない』と考えれば考えるほど追い込まれて、貧血で倒れてしまう症状があった。
そのため、入学式、全校集会、卒業式、アルバイト等にまともに参加できず、周りからの目もあって次第に心を塞ぎ込んでしまう。
心療内科の先生によると、和泉の症状は転換性障害や不安障害の可能性がある……とのことだったが、これだという病名がハッキリしないのだという。
「なんで俺がこんな目に……」
和泉は謎の症状から抜け出せず、いつのまにか大学の卒業を迎え……半ば引きこもり状態になり、7年の月日が経った。
そして時は西暦2018年……。
ニートのまま、和泉は31歳を迎えていた。
このままではいけないと、心療内科の先生のアドバイスをきっかけに勇気を出してバイトを始める。
そこから和泉の人生は大きく動き出すのだった。
心療内科と家を往復するだけだった男の大逆転劇が幕を開ける。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

うつ病WEBライターの徒然なる日記
ラモン
エッセイ・ノンフィクション
うつ病になったWEBライターの私の、日々感じたことやその日の様子を徒然なるままに書いた日記のようなものです。
今まで短編で書いていましたが、どうせだし日記風に続けて書いてみようと思ってはじめました。
うつ病になった奴がどんなことを考えて生きているのか、興味がある方はちょっと覗いてみてください。
少しでも投稿インセンティブでお金を稼げればいいな、なんてことも考えていたり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる