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今でも後悔している事
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私が19歳の頃の話。
プロボクサーとしてデビューし、デビュー戦を1RKOで勝った。
そのままの勢いで、新人王トーナメントにすぐエントリー。
そこから3連勝し、準決勝まで駒を進めた。
私は出来が悪かったんだけれど、何故か大学に入学していた。
しかし、大学には、単位をギリギリ取れるくらいしか行っていなかった。
大学の中でも、一部の人が、私がプロボクサーだという事を話題にしていた。
「お前の試合を応援に行きたいって言っている女の子がいるんだけど。」
ある日、ツレが私にそう言って、二人の女の子を紹介された。
私は、その頃彼女がいなかった。
なので、どんな女の子なんだろうと興味があった。
「はじめまして~!」
紹介された二人のうちの、活発的な子が、私に声をかけてきた。
もう1人の子は、その子の陰に隠れて恥ずかしそうにしていた。
声をかけてきた子は、全然タイプではなかったし、もう1人の子は、顔は綺麗な顔立ちをしていたんだけれど、大きな黒いアザが顔にあった。
(あ~だから、陰に隠れているんだ・・・)
若かった私は、その時点で、二人とも恋愛対象から除外していた。
だから、結局、最後まで二人の名前すら覚えていない。
活発的な子はBちゃん、アザのある子はAちゃんとします。
そして、その子たちは、2戦目の新人王の予選から、毎試合私を応援しに来てくれた。
いつも、二人で私のところにチケットを買いに来ていたんだけれど、必ずBちゃんが私に声をかけ、Aちゃんは、その子の陰に隠れるように立っていた。
やっぱり、アザを気にしていたのだろう。
私はトーナメントを勝ち続け、とうとう準決勝まで駒を進めた。
あと、2つ勝てば、東の新人王になれる。
女なんか眼中になかった。
そして、いつものように準決勝戦のチケットを買いにきた。
ただ、いつもと違ったのは、Bちゃんしかいなかった。
私はそんな事、大して気にもならなかったけれど、いつも、応援に来てくれてたし、一応、触れてみた。
「今日は1人なんやな?」
すると、Bちゃんが私に言った。
「コブシくん、Aがね、コブシくんの事好きなの!付き合ってあげて?」
私はBちゃんの言葉に驚いてしまった。
何とかこの場を取り繕うとした。
「え?あ、あ、そう・・・。あぁ~・・・あ、これチ、チケットね。じゃあ!」
私はまるで聞いてなかったかのように、その場を逃げるように走り去った。
(え~これ返事せなアカンのかなぁ~。)
私は一瞬だけ悩んだ。
けれど、新人王の事で頭が一杯だったので、すぐに忘れた。
その一件以降、私は練習で手一杯だったので、大学にもあんまり行かなかった。
だから、Aちゃんとも会う事がなかった。
そして、試合当日。
私は4戦4(2KO)勝、相手も4戦4勝。
KO勝ちがないという事は、パンチがそんなにない。
しかし、そういう選手は得てしてスタミナ、イコール手数があるという事。
我慢比べの激しい勝負になるだろう。
そして、リングイン。
いつものように、名前がコールされるまでの間、シャドーをして待っていた。
「おい!コブシ!花束だぞ!」
「え?」
私はリング上で1度も、花束なんかもらった事がなかったので、戸惑った。
見ると、Aちゃんだった。
いつものラフな服じゃなく、着飾った服装で恥ずかしそうに、花束を持って、立っていた。
「コブシくん!頑張って!」
「あ、あぁ・・・。」
初めてじゃないだろうか?Aちゃんの顔を正面から見たのは。
試合は、1Rで私の左フックが、相手の顎に入り、私の視界から消えた。
ダウンしたかと思ったら、驚異的な足腰力で立ち上がってきた。
さすがに、負けなしなだけにモノが違うなと思った。
それに、一発一発のパンチ力はないけれど、手数がほぼ休みなく、雨あられのように出してきた。
後で聞いた話しによると、相手のジムは、私の試合のビデオを見て、相当研究してたらしい。
私のたまに出す、左のボディー。
そのパンチを相当警戒していたみたいで、手を出せないくらい、手数を出し続けて、判定までもっていく作戦だったらしい。
対して、私のジムは、スタミナと手数がスゴいという情報しかなかった。
やはり、実力が拮抗していたら、相手をどれだけ研究したかで勝負の行方は決まるんだと、この試合で思った。
結局ら初黒星を喫してしまった私。
大学にもしばらく行かなかった。
Aちゃん返事も、花束をもらったお礼も言えないまま、私は大学を卒業してしまった。
あれ以来、Aちゃんとは会っていない。
きっとAちゃんは、アザのせいで私の事・・・と思っていると思う。
あの当時の私は、きっとAちゃんとは付き合っていなかっただろう。
Aちゃんは、アザを気にしていつも、Bちゃんの陰に隠れるようにしていた。
だから、あの花束を渡してくれたリング。
あの日、2000人以上入っていて超満員だった後楽園ホール。
Aちゃんが、どれだけ勇気を振り絞ってリングに上がったことか・・・。
あの時、きちんと返事をしなかった事。
今でも、たまに思い出して胸が痛む・・・。
プロボクサーとしてデビューし、デビュー戦を1RKOで勝った。
そのままの勢いで、新人王トーナメントにすぐエントリー。
そこから3連勝し、準決勝まで駒を進めた。
私は出来が悪かったんだけれど、何故か大学に入学していた。
しかし、大学には、単位をギリギリ取れるくらいしか行っていなかった。
大学の中でも、一部の人が、私がプロボクサーだという事を話題にしていた。
「お前の試合を応援に行きたいって言っている女の子がいるんだけど。」
ある日、ツレが私にそう言って、二人の女の子を紹介された。
私は、その頃彼女がいなかった。
なので、どんな女の子なんだろうと興味があった。
「はじめまして~!」
紹介された二人のうちの、活発的な子が、私に声をかけてきた。
もう1人の子は、その子の陰に隠れて恥ずかしそうにしていた。
声をかけてきた子は、全然タイプではなかったし、もう1人の子は、顔は綺麗な顔立ちをしていたんだけれど、大きな黒いアザが顔にあった。
(あ~だから、陰に隠れているんだ・・・)
若かった私は、その時点で、二人とも恋愛対象から除外していた。
だから、結局、最後まで二人の名前すら覚えていない。
活発的な子はBちゃん、アザのある子はAちゃんとします。
そして、その子たちは、2戦目の新人王の予選から、毎試合私を応援しに来てくれた。
いつも、二人で私のところにチケットを買いに来ていたんだけれど、必ずBちゃんが私に声をかけ、Aちゃんは、その子の陰に隠れるように立っていた。
やっぱり、アザを気にしていたのだろう。
私はトーナメントを勝ち続け、とうとう準決勝まで駒を進めた。
あと、2つ勝てば、東の新人王になれる。
女なんか眼中になかった。
そして、いつものように準決勝戦のチケットを買いにきた。
ただ、いつもと違ったのは、Bちゃんしかいなかった。
私はそんな事、大して気にもならなかったけれど、いつも、応援に来てくれてたし、一応、触れてみた。
「今日は1人なんやな?」
すると、Bちゃんが私に言った。
「コブシくん、Aがね、コブシくんの事好きなの!付き合ってあげて?」
私はBちゃんの言葉に驚いてしまった。
何とかこの場を取り繕うとした。
「え?あ、あ、そう・・・。あぁ~・・・あ、これチ、チケットね。じゃあ!」
私はまるで聞いてなかったかのように、その場を逃げるように走り去った。
(え~これ返事せなアカンのかなぁ~。)
私は一瞬だけ悩んだ。
けれど、新人王の事で頭が一杯だったので、すぐに忘れた。
その一件以降、私は練習で手一杯だったので、大学にもあんまり行かなかった。
だから、Aちゃんとも会う事がなかった。
そして、試合当日。
私は4戦4(2KO)勝、相手も4戦4勝。
KO勝ちがないという事は、パンチがそんなにない。
しかし、そういう選手は得てしてスタミナ、イコール手数があるという事。
我慢比べの激しい勝負になるだろう。
そして、リングイン。
いつものように、名前がコールされるまでの間、シャドーをして待っていた。
「おい!コブシ!花束だぞ!」
「え?」
私はリング上で1度も、花束なんかもらった事がなかったので、戸惑った。
見ると、Aちゃんだった。
いつものラフな服じゃなく、着飾った服装で恥ずかしそうに、花束を持って、立っていた。
「コブシくん!頑張って!」
「あ、あぁ・・・。」
初めてじゃないだろうか?Aちゃんの顔を正面から見たのは。
試合は、1Rで私の左フックが、相手の顎に入り、私の視界から消えた。
ダウンしたかと思ったら、驚異的な足腰力で立ち上がってきた。
さすがに、負けなしなだけにモノが違うなと思った。
それに、一発一発のパンチ力はないけれど、手数がほぼ休みなく、雨あられのように出してきた。
後で聞いた話しによると、相手のジムは、私の試合のビデオを見て、相当研究してたらしい。
私のたまに出す、左のボディー。
そのパンチを相当警戒していたみたいで、手を出せないくらい、手数を出し続けて、判定までもっていく作戦だったらしい。
対して、私のジムは、スタミナと手数がスゴいという情報しかなかった。
やはり、実力が拮抗していたら、相手をどれだけ研究したかで勝負の行方は決まるんだと、この試合で思った。
結局ら初黒星を喫してしまった私。
大学にもしばらく行かなかった。
Aちゃん返事も、花束をもらったお礼も言えないまま、私は大学を卒業してしまった。
あれ以来、Aちゃんとは会っていない。
きっとAちゃんは、アザのせいで私の事・・・と思っていると思う。
あの当時の私は、きっとAちゃんとは付き合っていなかっただろう。
Aちゃんは、アザを気にしていつも、Bちゃんの陰に隠れるようにしていた。
だから、あの花束を渡してくれたリング。
あの日、2000人以上入っていて超満員だった後楽園ホール。
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今でも、たまに思い出して胸が痛む・・・。
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