私をたどる物語 

コブシ

文字の大きさ
上 下
4 / 20

私をたどる物語 <4>

しおりを挟む
今までの相手とは比べ物にならないくらいスピードのあるジャブを矢継ぎ早に打ってきた。

いろんな角度から数発打たれ、そのスピードに面食らっていた私。

 次の瞬間。

 気が付いた時には、右のストレートが私の顎を打ち抜いていた。

それもピンポイントに顎の先端の急所にヒットした。

はじめて感じた、角材で貫かれたような衝撃。

(え、な、何なん、この感覚・・・。)

まるで、雲の上を歩いているようなフワフワした感覚。

 頭もクラクラして、立っていられない。

 私は、倒れないように相手に抱き付いた。

 必死に振りほどくI選手。

ここで離れたら倒されていただろう。

 必死にしがみつく。

 「ブレイクっ!」

レフリーに引き離される。

 依然として足がフワフワしていた。

まだ、1Rが始まって30秒くらいしかたっていない。

こんな大舞台でKO、しかも1RKOなんて絶対に嫌だ。

なんとか1Rしのいだ。

 間違いなく、今まで対戦した中で一番強い。

それもレベルが違う強さだった。

 今までの試合でも、効いたパンチはあったけれど、次元が違った。

 自分の拳を信じるしかなかった。

 2R・・・

後半からダメージの回復した私は、得意のボディー打ちで攻勢に転じる。

I選手は明らかに嫌がっていた。

I選手の口から嗚咽が漏れだした。

 3、4Rは一進一退の展開。

そして、5Rにその時は訪れた。

 左フックの相打ち。

しかし、コンマ何秒か速くI選手のパンチが顎に入った。

 私の左は空を切り、顎を打ち抜かれた私は、体が硬直した。

 後でビデオを見たけれど、よく倒れなかったと思えるほど、ダメージは深刻だった。

 私は相手にしがみついた。

なりふり構っていられなかった。

 5R終了のゴング。

 6Rは、お互い疲れきっていた。

 結局、判定で負けた。

 今思い出しても、あの試合が一つの分岐点だったと思う。

 2連敗という受け入れがたい現実。

この頃、左目に違和感を感じていた。

ずっと、視界に黒い糸屑のようなものがあった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自称サバサバ女の友人を失った話。

夢見 歩
エッセイ・ノンフィクション
あなたの周りには居ませんか? 「私ってサバサバしてるからさぁ」が口癖の女の人。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう

白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。 ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。 微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...