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9/22配信動画【行ってみた】SNSで噂の神社で黒い人影に遭遇!?【オカルト】

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「どうも皆さんこんベルベル~! 今をときめく噂の美少女オカルト動画配信集団! ベルベル怪奇倶楽部部長の鈴々で~す」
「こんベルー。部員一号のメジェ子ッス!」
「二号の雪丸です。こんベル」

 部長の鈴々が敬礼しながら恒例の挨拶をする。メジェ子、雪丸がそれに続く。三人ともセーラー服を着ていて、手には大きな懐中電灯を持っている。

 時間帯は夜。三人のバックには鳥居のような物が見えている。動画の明るさを調整しているのか、懐中電灯に照らされていない部分もなんとなく明るい。

「今日は最近じわっとSNSで噂になってるあの神社にきていまーす。なんて名前だっけ?」
「地詩吹《ちしぶき》神社です」
「もう駄目ッスね。名前が」
「漢字は違うからセーフセーフ。この神社はなんと真夜中に変な人影が出るという噂があってですね。今回はその人物に突撃取材をしちゃおうねという企画な訳ですね」
「時刻は午前一時半を回ったとこッス。さっそく入って行きまーす」
「カメラさん、鳥居、映せますか。ボロボロです」
「御札貼ってあるね~」

 カメラが鳥居の全景を映す。至る所に御札のような紙が貼られており、鳥居の木肌がほとんど見えていない。
 雪丸が懐中電灯で照らしている部分に向かってズームする。漢字が沢山書かれている中に死、呪といった不吉な文字が見える。

「駄目ッスね~」
「色んな漢字が書かれてまーす。ヤバそうな文字もあるね。一番ヤバそうな漢字を見つけろ選手権やろう」
「やりたくないッスね~」

 カッという音と共に場面が切り替わる。
 所変わらず鳥居前。貼られている御札の一部が変色している。

「はい皆で御札じゃんじゃん眺め回してヤバそうな漢字を探してみました。せーので発表するよ~せーの!」

 画面を三分割して三人が選んだお札が一度に表示される。各人が選んだ文字がハイライトされている。
 鈴々は怨嗟。メジェ子はビャン(環境依存文字のため表記できず)。雪丸は(読めない)を選ぶ。

「怨嗟はシンプル駄目ワードで良いッスね」
「メジェ子は、なに? その漢字」
「ビャンって読むッス。ビャンビャン麺以外で初めて見たんで、選んで見ました」
「絶対ソロで存在しない漢字ですね」
「雪丸は結構可愛い漢字選んだね~」
「この雰囲気の中だと、逆に可愛い漢字の方がヤバそうかなと思い、選びました」
「その気持ち、なんとなく分かるッス」
「皆怖いねー。全員優勝~!」

 鈴々、メジェ子と雪丸の手をとって勢いよくあげる。ボクシングの勝者コールのようなポーズ。
 鈴々は笑顔、メジェ子はまんざらでもなさそうな表情、雪丸は真顔で手をあげている。画面外から拍手のような音が入る。

 動画カットイン。

 境内。灯籠のような物があるが、明かりは灯っていない。
 鈴々とメジェ子が前を歩いており、雪丸がその後を歩いている。三人の他に人影は見えない。敷石を踏む音が聞こえる。

 三人はまず手水舎に向かう。鈴々が手水鉢を照らすと、中に沢山の花などが入っているのが見える。

「花手水ですね」
「映えるね~! 暗くてあまり見えないけど」
「やっぱ神社は明るい時間に来るに限るッス」
「じゃあ皆で手や口を清めていこうね」

 それぞれが柄杓を取り手や口を洗っていく。その間、懐中電灯は手水鉢の縁に置かれている。水の音に混じってなにか別の音が聞こえる。
 鈴々の持っていた懐中電灯が猫のような生き物を照らしているが、動画のロゴがちょうどそれを隠していて見えない。雪丸がその懐中電灯を手にとり、猫? の姿は暗闇に見えなくなる。

「どしたの、なんかあった?」
「猫がいました」
「幸先がいいね~。神社で動物に会うとラッキーらしいよ。神様が歓迎しているって」
「羨ましいッス」

 カッという音と共に場面が切り替わる。
 三人は手水舎を離れ、拝殿に向かっている。三人の他に人影は見えない。敷石を踏む音が聞こえる。

「今日の本題なんですけど、この神社には幽霊が出るらしいんですね。深夜、社務所の裏に人っぽい形をした人影が浮いているそうです。怖いね~」
「手にハサミを持っているとか、薄く発光しているとか、目撃情報にはいくつかバリエーションがあるッスね」
「ベルベル怪奇倶楽部が幽霊の正体を探ります」
「その前に! 折角神社に来たんだし皆でお参りしようね」

 カメラが拝殿を映す。
 ほとんど手入れされておらず、紙垂もしめ縄もボロボロである。賽銭箱の前に垂らされている麻縄は、本来なら鈴に繋がっているものだが、鈴は取り外されている。(補足。地詩吹神社は動画撮影時より約二年前に廃社している)。

 鈴々が真っ先に賽銭箱の前に立つ。麻縄を大きく振り回すが、鈴の音はしない。お賽銭を入れ、二礼二拍手一礼する。
 メジェ子と雪丸も続く。三人とも懐中電灯を手に持ったままなので、拝殿の一部が照らされている。

 カメラは少し後ろから願い事をする三人の背中を映している。三人の他に人影は見えない。敷石を踏む音が聞こえる。

 長い祈りのあと、三人が拝殿に続いていた階段を降りてくる。

「皆どんな願い事した?」
「今日が無事に終わりますように、ッスね」
「私は次のテストで良い点取れますように、です」
「もっとチャンネルのこと祈ろうよ! 登録者数が倍になりますように、とか」
「そういう部長は何をお願いしたんですか」
「そりゃあもちろん私は、」

 動画がカットされる。

「部長もチャンネルのことじゃないじゃないッスか」
「叶うと良いですね」

 三人はそのまま社務所方面に向かう。メジェ子の懐中電灯が道中にある御神籤掛けを照らす。御神籤が一つだけ結ばれている。

「あ、御神籤」
「私達も引いてく?」
「御神籤置いてないですよ。ここ廃社なので」
「私達は何に祈ったんだろうね~」

 社務所に到着。窓に内側から木の板を打ち付けられていて、中が見えない。鈴々が板の割れ目からなんとか中を照らそうとしている。

「御守りが落ちています」

 雪丸が地面を指で示す。カメラがその部分に寄っていく。地面には(読めない)神社と書かれている赤い御守りが落ちている。しゃきんしゃきんと金属を擦るような音が画面外から聞こえる。

「地詩吹神社のではなさそうです」
「肝試しに来た人が落としていったんスかね」

 画面が一瞬ホワイトアウトする。(補足。恐らく鈴々の懐中電灯がカメラを正面から照らしたためと思われる)。
 鈴々がメジェ子、雪丸と合流する。

「中見えなかったよ~。残念。撮れ高なし」
「大丈夫ですよ。本番は社務所裏ですから」
「自分行きたくないッス」
「これそういう企画だからね。頑張っていこ~」

 三人は社務所裏へと回り込んでいく。どんどん離れていく三人の背中をカメラが映し続けている。三人の他に人影は見えない。敷石を踏む音が聞こえる。

 最後尾にいたメジェ子が画面の外に出たのを最後に、場面転換。社務所裏に回り込んだ三人の背中が映される。三人とも懐中電灯の灯りを消している。

「いるねぇ」
「いるッスねぇ」
「カメラさん、アレ、映せますか?」

 奥を指差す雪丸に少しカメラが寄り、それから指の先にゆっくりと画面が動く。
 手入れされていない庭木で茂った道が映される。道には点々と牡丹が落ちており、その先に黒い人影がいる。しゃきんしゃきんと金属を擦るような音が聞こえる。

「視聴者の皆さん見えてますか~? 黒い人影、マジでいます。ハサミを持っているかな?」
「光源もないのにやたらとはっきり見えるッス」
「牡丹を切り落としてますね。花手水に使うんですかね」

 画面外から三人の会話が入る。その間、黒い人影は荒れた庭木の牡丹の花を手に持ったハサミのようなもので緩慢に切り落としている。

 カメラが黒い人影にズームする。人影は急にハサミを止め、カメラの方を見るかのように体を動かす。以降アクションはなく、静止したままとなる。

「止まっちゃった」
「じゃあ企画を進行しましょ~。突撃取材、行ってきます!」

 黒い人影に向かって歩いていく鈴々の背中を最後に、画面が暗転する。



 鳥居前。時間は変わらず深夜。
 三人は手に光の消えた懐中電灯を持ち、カメラに向かって笑っている。
 既に神社の敷地を出ていることから、エンディングに相当するパートと思われる。

「はい! 取材は断られちゃいました。噂の真相はわからずじまいでしたね! 今回の動画はここまでで~す」
「黒い人、多分怒ってたッス。皆無事に帰ってこれて良かったッスね」
「らん。らん。らん」

 三人の他に人影は見えない。敷石を踏む音が聞こえる。カメラの後ろから聞こえている。

「ちょっと撮れ高が少なそうなんで、皆に感想を聞いてお茶を濁しましょうね。メジェ子、どうだった?」
「二度と動画に呼ばないでほしいッス」
「雪丸はどうかな?」
「らん。らん。らん」
「ということで、今回はこんな終わりになっちゃいましたが、いかがだったでしょうか!
 ベルベル怪奇倶楽部はこれからも色んなオカルト、心霊現象を追いかけていきますので、面白かった方はチャンネル登録高評価をよろしくお願いしま~す」
「よろしくッス~」

 ばいばい! と鈴々がカメラに向かって大きく手を振る。メジェ子は画面外を両手で指差している(補足。動画投稿サイトのUIではメジェ子が指差した方向にチャンネル登録ボタンが存在する)。雪丸は特に何もせずカメラを見ている。



 動画終了。
 以降もベルベル怪奇倶楽部の動画投稿は続く。

 削除理由:手水鉢に人体の一部が映り込んでいたため。

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