上 下
206 / 219
4章 文化祭

とりあえずみんなのとこ回って旨そうなのあったら食って来る~♪

しおりを挟む

 俺が茜達の席に戻ると、やり取りを見てたのか茜が心配そうに聞いて来た。


「早川と言い合ってたけど、どうしたんだ?」

「知らねぇ!あいつが勝手に怒ってるだけ!てか犬飼!まだ焼けねぇのか!」

「もう出来るから落ち着けって」


 怒ってる俺が来た事で、ここの席の奴らも黙り込んで様子を見てるようだった。
 ふん。そんなの知るかっ!俺は今腹減ってんだ!

 犬飼が焼けたお好み焼きにソースとかあおのりとかをトッピングして、四つに切り分けて、それを茜が取り皿に一切れ乗せてくれた。

 旨そうな匂いに俺の機嫌は少しマシになった。


「サンキュー♪いただきまーす♡」

「あ、機嫌直ったな」

「ヤバ。めちゃくちゃ単細胞じゃん」


 犬飼が訳分からない事言ってるけど、俺は気にせずお好み焼きにガブッとかじり付く!
 

「ってあちぃ!!おい犬飼!あちぃよ!火傷するだろ!」

「焼き立てだから当たり前だろ!フーフーして食え!」

「仕方ないなぁ、秋山貸してみろ」


 あまりの熱さに再び怒りが込み上げて来たから犬飼に当たっておいた。口に入れた物を出す訳にはいかねぇと、頑張って飲み込んだ。
 それを見てた茜が仕方ないなぁと笑いながら俺のお好み焼きを一口サイズに切り分けて、自らの口元に持っていき、フーフーし出した。
 え?俺の母ちゃんですか?


「ほら秋山、冷めたぞ」

「え、ああ、サンキュー……」


 茜が冷ましてくれた一切れをそのまま俺の口元に持って来たから、戸惑いながらもパクッと食った。

 俺の前に座る犬飼が羨ましそうな目で見ていた。


「あ、秋山お前っ!あっさり茜ちゃんにあーんなんてしてもらいやがって!」

「うま♡茜~♪もっと~♪」


 程良い温度のお好み焼きに俺は満足して、茜に次の一切れを催促してると、もう一人のうるさいのが入って来た。キャンキャンチワワの七海だ。


「何甘えてんだ遅刻野郎!ちゃっかり二之宮の隣座りやがって!」

「あ、七海じゃん。お前犬飼に負けたのか?」

「はぁ!?何言ってるの?訳分からな……って、犬!何だよその顔は!」

「いや、負け犬の遠吠えオツ~♪」

「ちょ!訳分からないっ!何負けって!二之宮どういう事!?」

「俺にも分からない。それよりも秋山早く食べるんだ。冷めすぎると美味しく食べられないぞ」


 俺も良く分かってねぇけど、この二人が茜を好きで取り合ってるのは知ってる。だから見たまんまを言っただけ。
 その後も気にせず茜に食わせてもらって、何とか俺の空腹は満たされてさっきまでの怒りもなくなった。

 あれ?俺何に怒ってたんだっけ?

 
「おいモブ共!どけよ!俺が二之宮の隣に座るんだから!」

「七海ちゃんこわーい♪無駄に吠える犬は番犬も出来ない馬鹿犬だって言うよな~?」

「はぁ!?駄犬に言われたくないよ!」

「あーもうお前らうるさい。ほら俺がどくからここ座れよ」

「秋山どこへ行くんだ?」


 チワワの甲高い声で頭痛くなる前に立ち去ろうとすると、茜が心配そうに聞いて来た。
 

「とりあえずみんなのとこ回って旨そうなのあったら食って来る~♪」

「そうか。行って来い」


 どこまでも俺の母ちゃん役をやる茜は笑顔で見送ってくれた。
 
 さて次はどこの席行きますか?
 俺はキョロキョロして旨そうな物がありそうな席を物色してると、店の窓際の大きなテーブルが目に入った。そこは裏方チームで固まってるのか、一際賑やかそうだった。

 俺が近付くと、一番デカいトモが気付いて手を振って来た。


「貴哉~♪お前どこ行ってたんだよ~♪」

「おっすトモ♪ちょっと寝坊した。食い物ちょーだい」


 適当に言ってテーブルの上をチラッと見ると、裏方連中が続々と声をかけてきた。


「物乞いですか」

「秋山~!漬物あるぞ漬物~」

「おーい秋山来たぞ~!席空けろ~」


 突然来た俺の事も空気を変えずに受け入れてくれる裏方連中は、正に漢って感じの奴らが多くて、俺も気が合う奴らばっかなんだ。
 俺は裏方のこの雰囲気が好きで、茜のスパルタ指導中でも抜け出して良く遊びに行っていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

処理中です...