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4章 文化祭
とりあえずみんなのとこ回って旨そうなのあったら食って来る~♪
しおりを挟む俺が茜達の席に戻ると、やり取りを見てたのか茜が心配そうに聞いて来た。
「早川と言い合ってたけど、どうしたんだ?」
「知らねぇ!あいつが勝手に怒ってるだけ!てか犬飼!まだ焼けねぇのか!」
「もう出来るから落ち着けって」
怒ってる俺が来た事で、ここの席の奴らも黙り込んで様子を見てるようだった。
ふん。そんなの知るかっ!俺は今腹減ってんだ!
犬飼が焼けたお好み焼きにソースとかあおのりとかをトッピングして、四つに切り分けて、それを茜が取り皿に一切れ乗せてくれた。
旨そうな匂いに俺の機嫌は少しマシになった。
「サンキュー♪いただきまーす♡」
「あ、機嫌直ったな」
「ヤバ。めちゃくちゃ単細胞じゃん」
犬飼が訳分からない事言ってるけど、俺は気にせずお好み焼きにガブッとかじり付く!
「ってあちぃ!!おい犬飼!あちぃよ!火傷するだろ!」
「焼き立てだから当たり前だろ!フーフーして食え!」
「仕方ないなぁ、秋山貸してみろ」
あまりの熱さに再び怒りが込み上げて来たから犬飼に当たっておいた。口に入れた物を出す訳にはいかねぇと、頑張って飲み込んだ。
それを見てた茜が仕方ないなぁと笑いながら俺のお好み焼きを一口サイズに切り分けて、自らの口元に持っていき、フーフーし出した。
え?俺の母ちゃんですか?
「ほら秋山、冷めたぞ」
「え、ああ、サンキュー……」
茜が冷ましてくれた一切れをそのまま俺の口元に持って来たから、戸惑いながらもパクッと食った。
俺の前に座る犬飼が羨ましそうな目で見ていた。
「あ、秋山お前っ!あっさり茜ちゃんにあーんなんてしてもらいやがって!」
「うま♡茜~♪もっと~♪」
程良い温度のお好み焼きに俺は満足して、茜に次の一切れを催促してると、もう一人のうるさいのが入って来た。キャンキャンチワワの七海だ。
「何甘えてんだ遅刻野郎!ちゃっかり二之宮の隣座りやがって!」
「あ、七海じゃん。お前犬飼に負けたのか?」
「はぁ!?何言ってるの?訳分からな……って、犬!何だよその顔は!」
「いや、負け犬の遠吠えオツ~♪」
「ちょ!訳分からないっ!何負けって!二之宮どういう事!?」
「俺にも分からない。それよりも秋山早く食べるんだ。冷めすぎると美味しく食べられないぞ」
俺も良く分かってねぇけど、この二人が茜を好きで取り合ってるのは知ってる。だから見たまんまを言っただけ。
その後も気にせず茜に食わせてもらって、何とか俺の空腹は満たされてさっきまでの怒りもなくなった。
あれ?俺何に怒ってたんだっけ?
「おいモブ共!どけよ!俺が二之宮の隣に座るんだから!」
「七海ちゃんこわーい♪無駄に吠える犬は番犬も出来ない馬鹿犬だって言うよな~?」
「はぁ!?駄犬に言われたくないよ!」
「あーもうお前らうるさい。ほら俺がどくからここ座れよ」
「秋山どこへ行くんだ?」
チワワの甲高い声で頭痛くなる前に立ち去ろうとすると、茜が心配そうに聞いて来た。
「とりあえずみんなのとこ回って旨そうなのあったら食って来る~♪」
「そうか。行って来い」
どこまでも俺の母ちゃん役をやる茜は笑顔で見送ってくれた。
さて次はどこの席行きますか?
俺はキョロキョロして旨そうな物がありそうな席を物色してると、店の窓際の大きなテーブルが目に入った。そこは裏方チームで固まってるのか、一際賑やかそうだった。
俺が近付くと、一番デカいトモが気付いて手を振って来た。
「貴哉~♪お前どこ行ってたんだよ~♪」
「おっすトモ♪ちょっと寝坊した。食い物ちょーだい」
適当に言ってテーブルの上をチラッと見ると、裏方連中が続々と声をかけてきた。
「物乞いですか」
「秋山~!漬物あるぞ漬物~」
「おーい秋山来たぞ~!席空けろ~」
突然来た俺の事も空気を変えずに受け入れてくれる裏方連中は、正に漢って感じの奴らが多くて、俺も気が合う奴らばっかなんだ。
俺は裏方のこの雰囲気が好きで、茜のスパルタ指導中でも抜け出して良く遊びに行っていた。
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