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4章 文化祭
※ 貴哉そのものが可愛いくて仕方ない
しおりを挟む※伊織side
自分でもここまで気が短いとは思わなかった。
今日は土曜日で、朝から学校の文化祭で忙しくしていた。まず全く参加出来ない自分のクラスに顔を出して準備だけ手伝い、その後は演劇部の方に行きっきり。詩音さん達と打ち合わせとか準備とか手伝ってたら時間はあっという間に過ぎていった。
こんなのは去年もだったから苦じゃない。
辛いのは貴哉といれなかった事。
本当は貴哉と過ごしたかったんだ。
貴哉の側にいる早川を見る度に俺の心の中で怒りが増し、押さえ込むのに必死だった。
昨日の件があってから俺は自分の感情が抑えきれなくなって来ていた。
何でも出来て何不自由なく生きて来れたと思っていたのに、いつからこんなに余裕がなくなってしまったのか。
貴哉と出会ってから?
いや、そもそももっと前からか?
とにかく今は早川にだけじゃなく、貴哉に関わる者全てが鬱陶しかった。
俺って、こんなに心の狭い人間だったんだな……
「伊織さん?どうしたんですかー?ボーッとしてますよー?」
「あ、悪い。何か言ったか?」
横から名前を呼ばれて反応すると、俺と同じぐらい背の高い、青い髪の石原くんが心配そうに見ていた。
石原くんは貴哉の昔の知り合いらしい。
詳しくは知らないけど、どうやら貴哉はこの石原くんの事が苦手で、あまり関わりたくなさそうなんだ。
だから二人を引き離したかったのもあって今こうして食堂まで案内してあげてるんだ。
石原くんは見た感じは普通の大人っぽい中学生だ。貴哉が言う苦手だって言う要素はどこだ?と初めは思ったけど、もしかしたらこれは自惚れかも知れないけど、俺に好意を寄せている所か?
早川と付き合っていた頃の貴哉は、早川が他の男といちゃついてると勘違いしてやきもちを焼いていたって言う話はいくつか聞いた事があるけど、俺に対してはそんなに思い付かないんだ。
悔しいけどな。
はぁ、とにかく早く食堂まで送って貴哉の所へ戻ろう。また変な虫が寄って来たら困るからな。
「伊織さんと貴哉って、付き合ってるんですか?」
「うん。付き合ってるよ」
堂々と答えた。貴哉は俺のだ。誰にどう聞かれようが答える事は同じだ。
すると、石原くんはニコッと笑った。
「やっぱりー?二人の距離って普通の先輩後輩とかじゃないなぁって思ってたんです♪でも嬉しいなぁ!貴哉にこんな素敵な彼氏が出来て♪あ、貴哉もとーっても良い所あるんですよー?口は悪いのは相変わらずみたいですけど、めちゃくちゃ優しいんです♪」
「はは、優しいとこも変わってないよ。俺だけじゃなくてみんなから愛されてるよ」
「そうなんだー!やっぱり貴哉は凄いなぁ♪俺にとって自慢の兄貴みたいな存在だからっ♪」
この石原くんの反応は意外だった。
てっきり貴哉の事を悪く言うのかと思ったけど、どうやら慕ってるらしい。
ますます貴哉の石原くんに対しての苦手が分からなくなったな。
こうして話している分には明るくて良い子だと思うけど。
「伊織さん!貴哉の好きな所教えて下さい♪」
「んー、面倒くさいとか言いながら何でもやっちゃう所とか。あと、可愛いところ」
「面倒くさい!変わらないな~!可愛いって顔がですか?確かに綺麗だなとは思いますけど」
「全部だよ。貴哉そのものが可愛いくて仕方ない」
「へー。そりゃ凄いなぁ~」
石原くんはずっと笑顔だった。楽しそうに貴哉の話をしていた。
すると、食堂に着く手前で石原くんのスマホが鳴った。
「あ、連れからです!ちょっと失礼しますね!……はいはーい?俺ぇ?今食堂向かってるよ……はぁ?門に向かってるって、双葉~勝手に動くなよ~!」
どうやら連れとすれ違っていたらしいな。
でも今どこにいるのか分かったし、ちょうど良かったな。
電話を切った石原くんは、両手を合わせて一生懸命謝って来た。
「伊織さんっごめんなさい!友達が門で待ってるって!せっかく食堂まで案内してくれてたのに」
「いや、無事会えそうで良かったな。門までは行けるか?」
「はい♪本当にありがとうございました♪じゃあまた!あ、貴哉の事よろしくでーす♪」
石原くんは手を振りながら歩いて行った。
最後まで良い子だった。
とにかく貴哉の所へ戻ろう。
そしてもう残り少ない時間だけど、貴哉と過ごそう。
やっと二人で過ごせる。そう思ったら俺は嬉しくてたまらなくなった。
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