【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

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4章 文化祭

昨日したじゃん!駅のトイレで!

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 空と会議室へ向かう途中で伊織から電話が来た。さすがに無視は出来ねぇから電話に出て正直に空といる事を伝えると、少し不機嫌そうだった。


「桃山んとこ行ってから戻るから、だからそっち行くの遅れる!」

『なぁ、それって俺とじゃダメなのかよ?俺が桃山に言って貰ってやるよブレスレット』

「いや、大丈夫だから。とにかく急ぐから切るぞ!」

『待て!貴哉!』

「何だよ!?」

『分かった。待つよ。それともうすぐ俺はお前のパシリは終わるんだからな』

「はぁ?何言ってんだ?」

『文化祭まではパシリになるって約束だ。とにかく、終わったら俺はパシリじゃなくてお前の彼氏になる。それ忘れんなよ』

「っ……分かったよ!」


 何だか意味不明な事言われたけど、あいつが俺のパシリ?そんな約束したっけ?てかもう彼氏じゃん。
 良く分かんねぇけど、怒ってる事は確かだな!

 隣を歩く空は心配そうにしていた。


「やっぱりもう戻ろうぜ?桐原さん怒らせたら大変なの貴哉じゃん」

「もう怒ってるから戻らなくても一緒だろ。ふん。勝手に怒らせとけばいいって」

「はぁ、本当貴哉は後先考えないんだから」

「なんだよっお前は俺といたくねぇのかよ!?」

「いたいよ。でも、今は桐原さんと付き合ってるんだろ?演劇部が終わったら一緒に過ごすって約束してるのも目の前で聞いてたし、俺は貴哉を困らせる事はしたくねぇんだよ」

「昨日したじゃん!駅のトイレで!」

「バカ!大きな声で言うな!」

「お前が元気なさそうだったから、もう少し側にいてやりたかったんだよ。迷惑だって言うなら伊織んとこ行くよ」

「もー!貴哉の分からず屋!」

「それはお前だろ!手出して来たり引いたり!何なんだよほんと!」

「元気無かった理由は……兄貴の元彼に会ったんだよ、貴哉が演劇部の方に行ってる時に。その人、芽依ちゃんの婚約者になってたんだ。でもその人は兄貴の事がまだ好きでさ、芽依ちゃんもだけど、本当に好きな奴と結ばれない状況が自分と似てて……ちょっとモヤモヤしたんだ」

「はぁ?何だよその三角関係!てか俺別に伊織と婚約してねぇし!似てねぇだろうが!」

「同じようなもんだろ!何で貴哉はそう言うの分からないかな!?」

「分かる訳ねぇだろ!俺はお前の兄貴の元彼でもなければ芽依でもねぇ!空でもねぇんだ!俺は俺だ!ふんっ!勝手にモヤモヤしてろ!もう知らねぇよっ」

「ちょ、貴哉!」


 何だよ!俺が空といたかったから時間作ったのに!俺の事さっき愛してるって言ったばっかなのに何で伊織のとこに戻そうとするんだよ!
 
 もう空も伊織も面倒くせぇから俺は帰る!
 打ち上げにも行かねぇ!
 ちゃんと演劇部はやり切ったし誰も文句言わねぇだろ!てか言わせねぇ!

 あーくそ!気分悪ぃなぁ!

 ここで再び電話が鳴った。また伊織からだと思って俺は誰からかも確認せずに電話に出た。


「うるせぇ!俺は帰る!もう電話掛けてくんな!」

『随分な言い方だな?何にそんな腹を立てているんだ?』

「なっ!?誰だお前っ!?」


 てっきり伊織だと思ってたのに、全く違う声、口調が返って来て俺は慌てて画面に表示された名前を確認する。すると「かみなぎ」と出ていた。


『ほう、お前は私の番号を登録していなかったのか?』

「神凪ぃ!?いや、名前見ないで出ちまったんだよっ!てっきり伊織からかと思って……何か用か?」

『ああ、秋山に話があるんだ。今ボラ部の催し物の場所まで来たんだが不在だったからこうして電話を掛けているんだ』

「マジかよっ!?」

『教頭先生と玉山先生もいらっしゃるぞ。お前帰ろうとしていたのか?私からの電話を桐原と勘違いしていたようだが、何があったんだ?』


 ちょっと待て!何で教頭と玉山までいんの!?
 伊織が神凪の近くにいるのか、後ろで伊織の声が聞こえた。

 どんどん面倒くさくなって来やがったじゃねぇか!どうする俺!?いや、こうなったら神凪んとこ行くしかねぇだろ!はぁ、何でいつもこうなるんだ……

 神凪にすぐに行くと伝えて、電話を切る。


「空、俺神凪んとこ行かなくちゃいけなくなったわ……」

「だ、大丈夫か?」

「大丈夫な訳ねぇだろ!それと!ちょっと言い過ぎたよ!悪かったな!」


 俺が乱暴に謝ると、空は安心したように笑った。


「あと、ボラ部の打ち上げとか言ってたな?俺、演劇部の方も出る事になってっから、後から参加する!だからお前俺が行くまで絶対待ってろ!分かったな!?」

「うん♡待ってる♡行ってらっしゃい♡」

「行ってきます!」


 俺はまだ人の多い廊下を走ってボラ部の陣地まで向かった。
 さっさと神凪の用事片付けちまおう。

 もう猛犬注意のブレスレットの事は綺麗さっぱり忘れていた。

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