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4章 文化祭
こっちは二人の保護者の光ちゃん!
しおりを挟む会議室の中は空が言った通り、個人でやってるような店が壁に沿っていくつも並んでいた。
その中の一角に桃山の陣地があって、本人も座って本当に接客をしていた。手作りの看板には「ネイルサロン」と書かれていた。
ネイルって女が良くやってる爪に何か塗るやつだよな?桃山ってそんなのまで出来るのか!
「桃山~!来てやったぜ♪」
「おう貴哉じゃん。ちょっと待ってな?もうすぐ終わるから~」
相変わらずのマスクにどんどん伸びる長い襟足。前髪斜めも変わらずで、左目は隠れて顔が見えるのは右目の部分だけになっていた。両サイドの髪は刈り上げてるから耳は丸出しなんだけど、そこにはびっしりピアスが付けられていて、俺とかは慣れてるから平気だけど、一般人からしたら何とも近付き難い雰囲気だった。
そんな桃山だけど、接客されていた女子はとても嬉しそうに自分の手を見て喜んでいた。
「うわ~♪凄い綺麗~♪お兄さんありがとう!」
「はーい♪そんじゃ千円ちょーだい♪」
「こんなに安くネイルしてもらえるなんて友達にも声掛けますね♪」
「おう!宣伝頼むわ~」
ちょうどキリ良く終わったらしく、はしゃぐ女子が立ち去った後、桃山は俺達を見た。
「え、誰?貴哉の新しいコレ?」
桃山は後ろにいた雪兄と光ちゃんを見て小指を立てて言った。
「ちげぇよ。こっちは空の兄貴の雪兄で、こっちは二人の保護者の光ちゃん!」
「貴哉!俺はもう大人だ!失礼な奴だな!」
「あはは!いいじゃねぇか!間違えてねぇよ♪こちらの個性的な兄さんは二人の友達か?」
「友達ってか、こいつが猛犬だ」
「はーい♪猛犬の湊くんでーす♪お兄さんかっちょいーね。ネイルしてかない?次の予約まで時間あるからやってやんよー♪」
桃山は光ちゃんに言うと、こっちこっちと空いた席に手招きした。
こいつも俺と同じで誰にでもこういう態度だよな。
光ちゃんは桃山の態度を気にする様子もなくいつものように「おっ」と笑って椅子に座った。
「おじさんがやってもいいのか~?ネイルとか気になってたんだよな~♪」
「全然有りっしょ♪シンプルに黒のみがかっこいいと思う~♪ジェルだから仕上がりも綺麗だし長持ちするよん」
「そんじゃ全部任せるからかっこよくしてくれよ」
「光ちゃんノリノリ~♪」
「光児さん、ネイルに興味あったんだ~?」
「すぐ若い子がやってるのやりたがるんだからっ」
雪兄がやれやれって感じで言うと桃山がじーっと見ていた。
「何?じっと見て」
「いや、ゆっきーと空似てんなーって。美人兄弟だね」
「兄弟だもん当たり前だろ♪」
桃山に言われて嬉しそうにしている雪兄。ほんとブラコンだなぁ。
俺がそんな事を思ってると、空はトントンと俺の肩を叩いて耳打ちしてきた。
「貴哉、桃さんの左手首にあるやつって」
「んあ?あ!」
空に言われて桃山の左手首を見ると、正に俺が探していたお宝の赤いブレスレットを付けていた!
やっぱり桃山が猛犬だったんだ!
「なぁ桃山、その左手に付けてるブレスレットだけどさ、ちょっと貸してくんね?」
「ああコレ?……へー、貴哉B組のやつやってんだぁ?」
桃山は器用に光ちゃんの爪を細長いやすりか何かで磨きながらチラッとブレスレットを見ながら言った。
「悪いけど今手が離せねぇんだ。ちょっと待てるか?」
「お、おう!光ちゃんの終わるまで待つわ」
俺は空と顔を見合わせて、ブレスレットが手に入ると思い込んで笑い合った。
いやー、まさかこんなに簡単に手に入るなんてな!一番難易度が高い特賞のやつだろ?一般人からしたら猛犬が桃山だとは思い付かないからそれで難易度が高いのかもな~。
俺達はそんな事を呑気に考えながら光ちゃんにネイルをしている桃山を待つ事にした。
正直あまり時間が無い。
そろそろ体育館へ行かなきゃいけない筈だ。
俺は早くブレスレットを受け取って演劇部の方へ向かう気持ちでいた。
この後まさかの展開になるとも知らずに……
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