【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

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3章 文化祭まで一週間

美少女ヤメロ

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 俺は着替えようと再びステージ裏へ戻る。と、そこはさっきまでとは違う殺伐とした雰囲気に包まれていた。
 まだここにいた侑士は、犬飼に何かを問い詰めているみたいだった。
 

「犬飼、二之宮に謝れ。そして二度と近付くんじゃねぇ」

「だからぁ!何で俺が謝らないといけねぇんだよっ!何もしてねぇだろ!」


 お、噂のもう一人の人格か?さっき俺と話してた時の侑士とは違って黒いオーラが漂ってらぁ。
 どうやら茜も関係してるらしいな。茜はここにはいないみたいだけど、三角関係じゃん。


「さっき二之宮を虐めていたのをこの目で見たんだよ。お前は他にもいろいろな罪もあるからもう逃れられないぞ。無期懲役だ」

「虐めてねぇよ!お前は何でいつもそう一方的に決め付けんだ!裁判起こしてやんよ!勝訴!!」

「お前の弁護をしてくれる人間なんている訳ないだろう?大人しく刑期を全うするんだな。一生塀の中でな!安心しろ。すぐに仲間の桃山と一条も送ってやる。三人で仲良く刑務作業でもするんだな」

「ぐあー!マジムカつく!!」


 何か難しい話してるけど、犬飼が押されてる感じ?
 俺は巻き込まれないように、コソコソと自分の着替えが置いてある椅子に向かった。


「てかお前いつまでここにいんだよ!そんなに暇なのかよ生徒会長様はよぉ?」

「忙しいに決まってるだろ。お前みたいな輩が大人しく自首して来ないからな。ほら行くぞ犬飼。二之宮に謝るんだ」


 てかマジで何したんだ?犬飼は茜の事好きだけど、トモみたいな馬鹿じゃねぇから変な事するとは思えねぇけど。
 制服のズボンに履き替えて、ベルトを締める。ずっとニーハイって言う長い靴下に足が締め付けられてたからすげぇ開放感♪


「誠也ー!何サボってんの!クライマックス来るぞー!」

「吉乃!助けてくれ!前田が邪魔するんだ!」

「ゲッ!前田とか無理だわ。誠也休んでていーよ」


 雉岡は侑士を見て「やべ」って顔をして逃げようとしていた。雉岡も侑士が苦手なのか。
 ここでステージの方へ戻ろうとした雉岡と目が合った。


「あ、金髪美少女」

「美少女ヤメロ」

「秋山ー!?ちょ、お前いたのかよ!」

「雉岡のせいで見つかっちまったじゃねぇか」


 雉岡はピアスの付いた舌をベーッと出してステージの方へ消えて行った。
 見つかったら隠れても仕方ねぇや。面倒くせぇけど、犬飼を助けてやっか。


「秋山くん、綺麗に撮ってもらえた?」

「!!」


 あれっ!?さっきまでのおっかねぇ侑士はどこ行った!?俺の知ってるホワイトな侑士の笑顔に俺はちょっと戸惑った。
 

「おう。バッチリな」

「秋山!こいつ追い出してくれよ!部活動の邪魔しやがるんだ!」

「少し話聞いてたけど、お前茜に何したの?侑士めちゃくちゃ怒ってんじゃん」


 俺が聞くと、犬飼は首をブンブンと大きく横に振って、俺にしがみ付いて来た。マジこいついちいち近ぇんだって。


「何もしてない!ただ茜ちゃんと楽しく話してただけなのに、いきなりこいつが首根っこ掴んで来やがったんだ!」

「だってよ。侑士。お前の勘違いなんじゃねぇの?」

「勘違いなもんか。二之宮が犬飼と楽しく話なんかする訳ないだろ?部活だから仕方なく相手している二之宮のあの辛そうな顔を見たら俺……居ても立っても居られなかったんだ……」

「テメェ良い加減にしろよ!俺と茜ちゃんの事何も知らねぇ癖に勝手な事言ってんじゃねぇ!」


 とうとうキレた犬飼は侑士に掴み掛かろうとしたから俺は抱き付いて止めた。こんなとこで喧嘩なんかして、それこそ茜に謝らなきゃじゃね?
 

「落ち着けよ犬飼!今騒ぎ起こしたら全部台無しになるだろ!そんな事したら茜に嫌われるぞ!」

「ぐっ……」


 茜に嫌われるのが嫌なのか、それを聞いたらピタッと動きを止めた。
 てかこいつ俺よりデケェから止めるの大変だわ!早く帰りてぇ!!


「侑士も決め付けるのは良くねぇよ。犬飼って悪い奴だったけど、今では結構良い奴よ?茜に聞けば分かるからさ」

「そう言えば、夏休み中に演劇部でBBQ大会があったらしいけど、その時にある一年生が犬飼率いる悪党二年生達に襲われたとか言う話を聞いたんだ。二人は知ってるか?」

「は!?」

「なっ!!」


 満面の笑みで問い掛けて来る侑士に俺と犬飼は絶句した。
 いや、生徒会にいた侑士ならその話を知っててもおかしくはない。だけど、あれはもう終わった話じゃねぇの?
 てか何で今その話出すんだ?
 侑士は笑顔だったけど、俺には見えた黒いオーラ!


「犬飼達は本人に直接謝って許してもらえたみたいだけど、肝心の罰を受けてないよな?大人数で一人をとか弱い者いじめとか俺許せないんだ。その被害者の一年生もさぞかし怖かっただろうね。その子の為にも断罪するべきだろ?」

「待って待って?断罪って何だよ?てか俺弱くねぇし!全然怖くなかったし!」

「ほらな!こいつ頭おかしいだろ!?逃げようぜ秋山!」

「逃すものか!悪党め!」


 あー、みんなが言う前田侑士はヤバいっての少し分かったかも。
 普段はニコニコ明るいホワイトな良い奴だけど、悪い奴には容赦なく非情な言葉を浴びせるブラックで怖い男。

 確かに関わらない方がいいってのは間違ってねぇ。
 絶対敵には回したくないタイプだ。


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