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3章 文化祭まで一週間
※ 俺は二人を信じてるからな
しおりを挟む※伊織side
今日は文化祭の前日で、一日全校で準備が行われていた。俺は朝から演劇部の方にいる。
午後には貴哉も合流して全体の流れを一通り通してやる事になってるんだけど、13時を過ぎても来ないから電話を掛けてみたけど応答が無かった。貴哉の事だから気付かないって事もあるとは思うけど、どうも胸騒ぎがした。
「え?秋山が電話に出ない?いや、俺のとこには何も連絡来てないぞ」
貴哉と仲の良い二之宮に聞いても同じだった。
ボラ部の奴に聞いてみるか。
俺が今度は早川に電話しようとスマホをいじってると、近くにいた猿野がひょこっと入って来た。
「俺、昼前にボラ部の手伝いに行ったんだけど、貴哉なら早川と昼休憩行ってたぞ?確か荷物運んでて昼休憩入るの少し遅くなってた気がする」
「ああ、猿野は行ってたな。何時に休憩に入ったんだ?」
「んー、12時半とか?」
「ならまだどこかで休憩してるのかもな。もう少し待っても来なかったらもう一度連絡してみよう」
二之宮と猿野が話しているのを黙って聞いていた。そうか、早川と一緒なのか。詩音さんに誘われて貴哉は断ってたから、早川と食べるとは思ってたけど、少し心配だな。
本当に休憩してるだけならいいけど。
「二之宮、少しボラ部に顔出してくる。貴哉が来たら俺に連絡するように言ってくれないか?」
「分かった。13時半には始めるからそれまでに戻って来てくれよ」
二之宮に許可を取って体育館を出る。
体育館の玄関を出て渡り廊下のすぐ横にボラ部が使う予定の出店がある。
そこには一条と中西と広瀬がいた。怜ちんと那智はクラスでも出し物をやるからそっちの準備に行ってるんだろう。
「あ、いーくんだ♪見て見て~♪俺達のお店だよ~!」
「おう、準備ありがとうな。誰か貴哉を見なかったか?」
「貴哉なら空くんとご飯行きましたよー?ここにはまだ戻って来てないけど」
「何か外に食べに行くって言ってたから遅くなるかもね~。でも貴ちゃんて午後は演劇部の方行く予定じゃなかった?」
「それがまだ来ないんだ。二人に電話しても出ないんだ」
俺が説明すると、三人は目を丸くして驚いた顔をしていた。
そして一条と中西の二人はニヤ~っと笑い出した。
「電話に出ないのは怪しいね~♪二人で何してるんだろうね~?」
「そう言えば今日の空くん、貴哉を独り占め出来るからってやたら機嫌が良かったですよね~♪」
「ふ、二人共っ!貴哉と空はご飯食べてるだけだよっ!変な事言うな!」
ふざける二人に広瀬が貴哉を庇うように注意していた。俺は広瀬の頭をポンポンとしてやり、ニコッと笑顔を作った。
「広瀬の言う通りだぞー?早川も副部長として頑張ってるんだからふざけた事言ってんなよ」
「いーくんは心配じゃないのー?」
「そうですよ。だってあの二人は元恋人じゃないですか」
「俺は二人を信じてるからな。貴哉の事はもちろん、早川は良い後輩だと思ってる」
それは本当だ。貴哉の事を抜きにしたら早川は頭も良いし、気遣いも出来て頼りになる一面があるんだ。だから副部長として任せっきりにもしていられると思っている。
貴哉と早川が今でも想い合ってるのは知ってるし、何かあってもおかしくはないけど、今は貴哉を信じるしかない。
俺は貴哉の好きにさせるつもりだ。でもそれは貴哉の為であって、決して手離すと言う意味じゃない。
自由じゃなくなるのを嫌う貴哉を縛り付けておくのは良くないと思ったから、極力貴哉には自由にしてもらうつもりだ。だから早川とも遊びに行かせるし、二人が笑い合っていても気にしないようにして来た。
でもそれ以上は許さない。
あくまでも貴哉は俺のものだ。
貴哉に手を出したら早川じゃなくても俺はキレるだろう。それは貴哉にも言ってある。
早川と遊んでもいい。ただし一線は越えるなってね。
貴哉は嘘をつけない男だ。もしくは隠すのが下手。だから何かあったらすぐに分かると思ってる。
だから二人が茶化しても笑顔でいられた。
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