上 下
151 / 219
3章 文化祭まで一週間

全然!あ、俺はこれ運ぶからな!

しおりを挟む

 助っ人が来たから俺は何となくゲーム機が入ってる箱の蓋を閉じて見せないようにして、背中に隠すようにしていた。
 来てくれたのは部室にいた数馬、生徒会にこき使われていた藤野、そして演劇部からトモとその他二人が来てくれた。それでも何往復かは必要か。


「お前ら良く来てくれたな!ここにある箱を全部演劇部の控室に運んで欲しいんだ」

「うん!分かった!さっき一条さんとすれ違った時に場所は聞いたよ」

「うひょー!何だコレ?ロボットとか懐かしい~」

「秋山、これ何に使うんだ?」


 藤野に聞かれたから明日の文化祭の出し物だと言うと、おもちゃを?と不思議そうな顔をしていた。
 そりゃそうだろうな。誰もこのおもちゃ達を袋に詰め込むだなんて思ってねぇだろうよ。

 トモと、トモが連れて来た助っ人二人はそれぞれ二箱を両手に担いでくれた。


「すげぇじゃんトモ!かっこいいな!」

「だろー!?俺の事好きになったか!?」

「全然!あ、俺はこれ運ぶからな!」


 トモの言う事に適当に返して、俺はゲーム機が入った一際重い箱を持ち上げる。
 お、重いけど、これだけは他人には任せられねぇ!


「秋山重そうだな。一緒に持とうか?」

「だ、大丈夫だ!藤野はそこのぬいぐるみが入ったやつ頼む!」

「ああ。分かった」


 くそー、紘夢の奴、こんな大事な物をこんなとこに置き去りにしやがってー!俺が見付けてなかったから盗まれてたかも知れねぇだろ!

 まだ開けてないから分からないけど、他にも高級品がありそうだな。俺、見張りでここにいた方がいいよな?


「みんな悪いけど、数馬に付いてって、箱を運んでくれるか?俺はここで荷物を見張ってるから、紘夢に会ったら伝えてくれ」

「分かったー。あ、付いて来て下さい」


 数馬の指示で藤野、トモ達は箱を運んで行った。
 はぁ、そろそろ昼だから空と飯食いに行きてぇんだけどなぁ。

 俺は空に連絡してみる事にした。空はもう一つ机を借りる為に備品係の所へ行ってる筈だ。


『もしもーし?今戻るとこだけど、どうした?』

「紘夢が用意したおもちゃが大量にあってそれ運ぶのに時間掛かりそうなんだよ。昼飯遅くなりそう」

『それなら俺も行くよ。それ終わったらランチ行こ♪』

「まじ?早く来てくれー。裏の駐車場にいるからよ」


 何か空の声に癒されたわ。
 とにかく、この高級品が入った箱を紘夢に託したい。じゃなきゃ昼飯になんて行けねぇよ。
 俺が一人で空を待ってると、紘夢が戻って来た。


「貴ちゃーん♪みんなにそこで会ったよ~♪トモ達は頼もしいね~」

「紘夢!!何だよこれ!!お前こんなの詰め放題に出す気なのか!?」

「え?ああ、夢があって良くない?俺が子供だったら嬉しいかなって。あとPS5の箱とどこかにある筈だけど~」

「子供だけじゃなくて大人も食い付くわ!本当に100円にするつもりなのか?」

「勿論♪渡辺さんとそうだと思うけど、全部ボラ部に寄付するから、売上は全部ボラ部の物だよ♪知り合いから安く手に入れてるから気にしないでよ」

「お前、本当にいいのかよ?」

「貴ちゃん。これは俺なりの感謝と謝罪の気持ちなんだ。これだけじゃ返し切れないのは分かってるけど、少しでも多くの人を笑顔に出来たらって思ってるよ。でも貴ちゃんが辞めろって言うなら辞める。言う事聞くよ」


 紘夢は笑顔のまま、真っ直ぐに俺を見て言った。
 こんなの普通の奴じゃ出来ねぇ金持ちの道楽だとか思ったけど、紘夢は紘夢なりに自分が出来る事を考えていたんだ。
 なら俺から言う事はねぇな!


「そういう事ならいいんじゃねぇの?後で返せとかお前は言わなそうだしな。一緒にみんなを笑顔にしてやろう!」

「嬉しい♪貴ちゃんならそう言ってくれると思ってたよ♪」

「て事でコレと、PS5の箱は責任持ってお前が管理しろ。盗まれても知らねぇぞ!」

「はーい♡」


 背中に隠していた綺麗な箱を紘夢に渡して俺はやっと解放された気分だった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...