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3章 文化祭まで一週間
※ もし襲われてなかったら帰りますからねっ
しおりを挟む※空side
部活が終わったから一条さんと二人で玄関で貴哉達を待っていた。
今日の演劇部は体育館で活動してるから、貴哉達は終わったらそのまま玄関に来る事になってるからだ。
「それにしても空くんがうちでご飯作ってくれるなんて~♪楽しみ~♪」
「一応、中西に作り方は聞きましたけど、期待しないで下さいね。俺、肉じゃがとか作った事ないですから」
「俺味にはうるさいよ?お給料払うってなると厳しくしないとだからね」
「ちゃんと働きますよ。月、水、金でいいんですよね?的場さんに用がある時は土日も」
「いいよ~。休みたい時は言ってくれれば的場に用意してもらうから。ねぇ、貴ちゃん達遅くない?吉乃もまだ来ないし」
「確かに、いつもならとっくに帰って来てますね。あ、貴哉からメッセージ来た」
二人で待っているけど、もう三十分は経つ。貴哉に電話をしてみようとスマホを出すと、ちょうどメッセージが届いた。
「なになにー?貴ちゃんなんてー?」
「あ、演劇部でトラブったから先に帰っててくれって。肉じゃがが出来る頃には行くって……えー、トラブルって何だよぉ」
貴哉ってばまた何か問題起こしたのかぁ?
口に出してメッセージの内容を読み上げると、一条さんは嬉しそうにニヤ~っと笑った。あ、良くない事考えてるな……
「面白そー♡ねぇ、行ってみようよ♡」
「俺達が行ってもどうしようもないでしょ。貴哉は先に帰れって言ってるし帰りましょ?買い物しなきゃだし」
「あれ?空くんは気にならないのー?もしかしたら貴ちゃんが猿野に襲われてるかもよー?」
「…………」
「あ♪気になってるー♪」
「ちょっとだけですよ?もし襲われてなかったら帰りますからねっ」
そう言えば演劇部には貴哉の事を気に入ってる猿野さんがいるんだった。俺は二人の接点などを人から聞いた所までしか知らないけど、何でも貴哉と猿野さんは友達になったらしい。
貴哉は自分が認めた相手とは誰とでも友達になるけど、相手は毎回良い人とは限らない。下心があって近付いてる事も全然有り得る。特に猿野さんの噂は悪い事しか聞かないからかなり不安だ。
俺は楽しそうにワクワクしながら歩き出す一条さんの後ろを歩きながら貴哉の事を心配に思っていた。
演劇部の方には桐原さんもいるし、茜さんもいるから大丈夫だろうけど、貴哉はすぐに問題起こすからなぁ。
それが貴哉なんだけど。
玄関から体育館までの廊下を歩いていると、前から騒がしい集団が来るのが見えた。一目で分かった人物は演劇部の犬飼さんだ。背が高くて華やかな見た目をしてるから遠くからでも分かった。そしてもう一人は一際小柄な体をしている、あれは小平さんか。貴哉がチワワって呼んでたぐらい小さくて、まるで女の子のような見た目をしている人だ。その二人は真ん中にいる見た感じ普通の男を何やら押さえ込んで止めてるように見えた。
そんな三人を後ろから追って来た二人は雉岡さんと、猿野さんだって分かった。
何だろう?揉めてる感じ?
近付いて来る集団に足を止めて俺と一条さんは様子を伺っていた。
「くそ!卯月の奴どこへ逃げたんだ!」
「二之宮落ち着いてって!」
「そうだぞ茜ちゃん!らしくねぇよ!」
あ、真ん中にいたのは茜さんか!
どうやら犬飼さんと小平さんの二人は茜さんを落ち着かせようとしているみたいだった。
「茜ちゃん怒ってる?トラブったって茜ちゃんとなのか?」
「えっ!あの二人が!?」
一条さんが集団を見てポツリと言った。
そんなまさか!貴哉と茜さんは俺から見ても羨ましいぐらい仲良しな筈だぞ?いや、あの二人だからこそ喧嘩したりするのかな?
確かに不真面目な貴哉と真面目な茜さんだもんな。いくら仲良くても二人共気が強い同士だし、お互い気に入らない事があったら激しい言い合いになってもおかしくはないか。
どんどんこちらへ近付いて来た集団に声を掛ける事にした。
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