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3章 文化祭まで一週間

※ 良い奴ぅ?てかお前、前田と知り合いなのかよ?

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 ※犬飼side

「でよ~!トモが捕まってヤバかったから俺が助けてやったって訳~。まぁあいつも俺の事信じてたみたいで堂々としてたけどな~。吉乃の情報収集も優秀でさ~」

「ふーん。そうなんだー」


 今日から文化祭までは体育館で活動するらしいんだけど、茜ちゃんがいなくて体育館の隅っこでつまんなそうにしてた秋山を捕まえて俺の活躍話をしてやっていたんだけど、どうにも反応が薄い。
 秋山はまるで興味無さそうにしていた。


「ふーんって、お前、俺がどんなけ賢いか分かってねぇだろ?」

「ズル賢いのは知ってるよ。てかその武勇伝ってただのイジメだろ?雉岡を裏で動かして、イジメ自体をトモにやらせて、お前は安全なとこで見物してるだけじゃねぇか。そんな話聞かされて感動するとでも思ってんのか?」

「イジメじゃねぇよ。調教だ」

「ちょうきょう?」

「生意気な奴を懲らしめて自分の立場を分からせてやるんだよ」

「ふーん。そうなんだー」

「またお前はっ!ほんっとうに生意気だなー!」


 秋山こそ生意気代表だ。けど、こいつには怖ぇボディガードが何人かいるからもう手は出さねぇって決めたんだ。まずこいつの彼氏の桐原だろ?そんで桃山にー、あと俺が唯一頭脳では勝てない一条もいるな!怖くはないけど茜ちゃんもだな。
 俺の大好きな茜ちゃんはとにかく秋山の事が好きなんだ。見て分かるぐらいな。でもそれは後輩として。二人のそんな関係はもう誰もが認めていた。

 そんな生意気な秋山は何かに気付いて「あ」と声を出した。


「あれって侑士じゃん」

「侑士だぁ?」


 嫌な名前が出て来て俺は秋山が見てる方を確認する。
 ゲッ!マジであの前田侑士じゃん!
 俺は見つからないように秋山の後ろにササーっと隠れた。


「あ?何お前隠れてんの?ダサ」

「あいつ苦手なんだよ~。あいつも俺の事嫌ってんだ」

「ますますダセェな。何で苦手なんだ?良い奴じゃん」

「良い奴ぅ?てかお前、前田と知り合いなのかよ?」

「ああ、友達だ」

「友達ぃ!?」


 秋山が言う事に驚いて大きな声出しちまった!俺は慌てて身を小さくして口を押さえた。


「ふぅ、危ねぇ~」

「ああ、あいつ悪い奴の事嫌いなんだっけ」

「そうなんだよ!前に演劇部に生意気な一年入って来たからいつもみてぇに調教してたら前田に見つかってよ~。まぁトモになすり付けてなんとか逃げられたんだけど、前田は主犯格の俺を目の敵にしてあの手この手使って陥れようとしてんだ」

「さも自分が被害者みてぇに言ってるけど、悪いのはお前じゃねぇか」


 秋山は俺をゴミでも見るかのような目で見て言った。
 とにかく俺は前田侑士が苦手。生徒会長なんかになりやがったから益々関わりたくねぇ奴だ。

 なるべく見つからないように大人しくしながら、前田の行動を伺うと、ステージの方へ向かって行って、誰かに声を掛けていた。
 忙しそうにしてたそいつは前田に呼ばれて振り向いて近付いていた。


「なんだ、侑士の奴茜に会いに来たのか」

「おいおい、何であいつが茜ちゃんに声掛けてんだぁ?」


 茜ちゃんと前田が話してるのなんて見た事ねぇぞ?え、茜ちゃん何かしちゃったの?俺は急に心配になったけど、相手が相手だからすぐに行く事が出来なかった。


「何でってそりゃ……あー、お前もじゃん」


 秋山は何かを言いかけて、途中でニヤッと笑い出した。なになに!?何言おうとしたのよ!?
 俺は秋山の肩を両手でガッシリ掴んで後ろから顔を覗き込んだ。


「秋山何か知ってるのか!?教えろ!」

「うおっお前顔近いって!離れろっ」

「あー!茜ちゃんがステージから飛び降りたー!」

「うるせぇなぁ!耳元で大声出すなよっ」

「なぁ俺行った方がいい!?助けに行くべきだよな!?」

「ああもうっ!行かなくて平気だろ!侑士は生徒会長として見に来ただけだって!そもそも茜が何かやらかす訳ねぇだろ!」

「そ、そうだよな?茜ちゃんが何か悪い事をやるなんて……ああー!!」

「うるせぇってんだ!テメェしばくぞ!!」


 ステージ下にいる二人は少し話した後に、前田が自分のスマホを出して茜ちゃんに画面を見せていた。え!え!?二人共何見てんの!?気になるー!


「ほう、侑士の奴やるじゃん」

「お、俺行ってくる!」

「バカ、やめとけって。お前が行っても揉めるだけで茜に迷惑掛けるだろ」

「だって俺の茜ちゃんがぁ~」


 意を決して俺が立ち上がろとすると、秋山に止められた。
 うう、茜ちゃんの所に行きたい気持ちと、秋山に止められてホッとしてる自分がいた。
 出来れば前田とは関わりたくねぇからな。


「とりあえず落ち着け。茜なら大丈夫だって。あいつ超天然だから」

「そうか?茜ちゃんが無事ならいいけど……」

「なぁ、お前茜の事まだ好きなのか?」

「好きだよ。どうせ俺には無理だって言いたいんだろ?」

「んな事言わねぇよ。俺は茜が幸せなら何でもいい。お前が茜の事本気だって分かるから、そこに関しては何も言わねぇよ」

「なぁ、最近茜ちゃんと桃山が一緒にいるの見ないけど、普通に付き合ってるよな?」

「ああ、何か茜が文化祭までは一人にしてくれって桃山に言ったらしい。休みの日は会ってるみたいだぜ?」

「そう言う事か……ん?て事は部活ん時とか放課後は茜ちゃんってフリーなのか!?」

「フリーっちゃフリーだけど、お前変な事考えるなよ?桃山がどこで見てるか分かんねぇぞ」


 秋山が呆れたような顔して見てたけど、俺はそう思ったらワクワクして来た。今日の帰りとか誘ってみる?茜ちゃんなら一緒に帰ってくれそうじゃね?
 桃山がいないって分かったら何か無敵になった気がした。

 そして気付いたら前田もいなくなっていて、俺は秋山を連れて茜ちゃんの所へ飛んでいくのだった。

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