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2章 文化祭までのいろいろ
戸塚さん!?何か言おう!?今目ぇ合ったよな?
しおりを挟むしばらく布団の上で三人で戯れてると、どこに行っていたのか戸塚が部屋に入って来て、俺達を見て何も言わずにそのまま一番近くに敷いてあった布団に入った。
俺達三人は戸塚の何もなかったかのような反応にどうしたらいいのか分からずにいた。
「戸塚さん!?何か言おう!?今目ぇ合ったよな?」
「春樹~♪どこ行ってたのー?七並べ楽しかったよー♪」
「本を読んでいた。何も言わないから三人で好きにやっていてくれ」
「クールだねぇ」
紘夢は戸塚の所に行って話し掛けてるけど、戸塚からは冷たい返事が返って来るだけだった。うん、まぁ戸塚はこんな男だ。
そして俺は伊織と二人になり、目を合わせる。伊織が笑った。
「やっと二人きりだ♡」
「ん。空の事助けてくれてサンキューな」
「でも助けられなかったじゃん。ただの赤い髪の男だとよ」
「あはは、俺さ、伊織と空が仲良いの大好き♪これからも仲良くしてやってよ」
「……努力はするよ」
俺の隣に膝を立てて座って少し寂しそうに笑った。
伊織が気を使ってのはちょっと気付いていた。空にも土産買って来たり、前だったら怒ってたのに怒らずに我慢してくれたり、それと最近しおらしくして周りにも優しく喋ったりもしてたな。
俺も伊織の事ちゃんと見てやらないとな。
「伊織、いろいろ無理させて悪いな」
「あ、無理してるって分かるか?」
「ああ」
「正直、行動するのは苦じゃねぇんだ。早川に何かしてやるとか、あいつ自体は良い奴だと俺も思ってるからな。でも、心がちょっとな~。まだ追いつかない部分もある」
「だよな~!俺だったら速攻で諦めてるわ!てか良く俺なんかと付き合ってられるよなお前も」
「貴哉だから付き合ってられんだ。他の誰かじゃ嫌だ」
伊織は俺の左手を握って、薬指に付けてる指輪を触りながら言った。
「少しずつだけど、貴哉が貴哉のしたいように出来るようにするから。貴哉はそのままでいいから」
「……ん」
とびきり優しく笑って伊織は俺の指輪にキスをした。うわぁ、めちゃくちゃかっこいいじゃん。久しぶりにときめいたかも!
そしてその後強気に俺を見てニヤリと笑った。
「だけど、お前は俺の男だ。これだけは忘れんな♡」
「んっ!」
そのまま俺を引き寄せて俺の唇にキスをした。
少し離れた所で紘夢と戸塚が見てたけど、俺も目を閉じて伊織を感じていた。
伊織のこういうとこズルいよな。ただでさえかっこいいのに、そんなセリフ言いながら平気でこういう事しちゃうんだもん。
伊織、好きだよ。ありがとう。
そして唇が離れて伊織はいつもの顔で言った。
「ほら行って来いよ」
「へ?」
「早川の事気になるんだろ?ビリだったからヘコんでるんだろ。寝ないで待っててやるから行って来い」
「いいのか!?」
「やっぱ止めようかなー?」
「行ってくる!」
意地悪そうに言われたから慌てて立ち上がって、俺は伊織の気が変わらない内にと思ってそのまま部屋を出た。
あの伊織が変わった。無理してるなとは思ってたけど、ちゃんと俺の事を引き止めながら自由にさせてくれてる。
どっちもなんていい訳ないのは俺も分かってる。
でも今は選べない。どっちも好きだし、どっちも大事だから、俺はどっちも今のままの関係を大切にしたい。
いつか選ぶ時が来るんだ。そしたらそん時に思ってる通りに動こう。
ただ今はこうしたいからこうする。
俺は俺のしたいようにする!
多分、こんな俺だから二人も好きになってくれたんだ。
俺は七並べの後に一人で出て行った空を探して一階まで来た。あいつどこでしょげてんだぁ?
変わったのは伊織だけじゃない。空も空なりに変わったと思うんだ。
空の場合は伊織より変わりようが激しい。
俺と付き合う前は普通に何でも言い合える友達みたいだったのに、付き合った途端やきもち焼いて怒ったり泣いたり忙しかったな。
そんで別れたら急に冷たくなったり、俺から離れようとしたり、でも優しい時もあったりで今思えばあの時が一番荒れてたな。
少しずつだけど、強くなってって今は俺と伊織が一緒にいるのを見ても普通にしてくれてる。
これからも今の空でいて欲しいから、それには俺がちゃんと見ててやらないとダメだと思うんだ。
広い屋敷の中を探して辿り着いたのはみんなで飯食ったりするデカいリビング。の、ベランダだった。窓が開いていて、背の高いカーテンが揺れていた。
やっと見つけた。
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