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2章 文化祭までのいろいろ

貴ちゃんはどちらかと言うと部長タイプじゃない?

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 そして皆んなで楽しい夕食の時間が始まった。デリバリーだったけど、どこのデリバリーですかって言うぐらい豪華なご馳走ばかりだった。厚切りのステーキに、生ハムが乗ったお洒落なサラダ、魚料理に、揚げ物、一口サイズの色んな色のケーキ、小さいグラスに入ったピンク色のヨーグルトみたいなもう名前すら分からない物まで広いテーブルにびっしり並んでいた。
 うちにあるピザとか定食屋とかのメニューじゃこんなご馳走見た事ねぇぞ。


「たくさん食べてねー♪」

「こりゃ一流ホテル並だな」

「すげぇ!こんなに分厚いステーキ初めて見た!」

「うまー!秋山ぁ!早く食ってみ!めちゃくちゃ柔らかいぞ!」

「一条さんいただきます。急にお邪魔する事になったのにこんなに用意してくれてありがとうございます」

「直登くんと数馬くんも来れたら良かったけど、また次回だね♪今日はこのメンバーで楽しもーう♪」


 紘夢が言う通り、直登と数馬から来れないって連絡があったんだ。どうやら二人は一緒じゃないらしいけど、それぞれ予定があったみたいだな。


「少し食べたらお待ちかねの上映会するからね~」 

「てかスクリーンデカ!こんなの前来た時あったっけ?」


 俺は広ーい白い壁に吊り下げられていた、デカいスクリーンを見て聞いた。


「ここには無かったよ。倉庫にあったのを的場に運んで設置してもらったんだ♪お婆ちゃん達、映画とか好きだったからこれを使って見ていたんだろうね」

「庭にはテニスコートあるし、金持ちって感じだな~」

「今度シアタールームでも作ろうと思うよ♪」


 紘夢は楽しそうに笑っていた。
 紘夢だけじゃなく、ここにいるみんなも、美味い料理と、楽しい雰囲気で、みんなが笑顔だった。
 

「そうだ、Tシャツだけど、昨日業者に頼んだから来週の月曜日には出来上がるって♪楽しみだね~」

「そんなに早く出来上がるのか?」

「決まってるデザインをプリントしてもらうだけだからね。みんなで同じデザインのTシャツ着て文化祭に参加するとか学生っぽくてワクワクが止まらないよぉ♪」

「確かに学生っぽいな!俺も楽しみだぜ♪」

「そう言えば、露天やったり、休憩したりの人の配置は決まってるのか?」

「それなら一条さんと話して決めてますよ。桐原さんと貴哉は演劇部の方メインになりそうなので、そっちが終わるまではそっちに集中して下さい♪ボラ部は俺達に任せて絶対成功させて下さい」

「なんてったって演劇部は城山しろやま高校の城跳じょうちょう祭の目玉だからね~!毎年いろんな大学や業界からもそれを見たくて足を運ぶ人がたくさんいるから、そんな大舞台にボラ部から二人も参加出来てるのは誇らしい事だよね~♪応援してるから頑張ってね♪」


 空と紘夢から安心出来るような答えが返って来て、伊織も微笑んでいた。
 てかうちの文化祭の名前って城跳祭って言うんだ?前から演劇部の凄さは聞いてたから知ってたけど、そんなに期待されてるとは思わなかったな。茜があんなに鬼になる理由が性格だけじゃないって少し分かった気がするぜ。


「俺も二人の演劇見たいぞ!いーくんのは去年見たけど、秋山のは見た事がないからな」

「時間があればみんなで見に行きたいけど、難しいだろうね。人気だから指定席は一般優先になるし、フリー席もすぐに埋まるだろうから。だから後でみんなで見れるように高性能カメラで録画する予定だよ♪もちろん葵くんに協力してもらってね♪」

「本当一条さんが入部してくれて助かりますよ♪俺だけじゃ今までのボラ部を維持するのがやっとだったのに、更に前へ進もうとしているから毎日楽しいです」

「空くんは一年生なのに副部長として良くやってるよ~♪それと今までの形を維持させるのってとても難しい事なんだよ?だって前部長や副部長とは違う人がやる訳なんだから~」

「そうだぞ早川。俺は早川なら出来ると思ったから声を掛けたんだ。今なら間違ってなかったと自信を持って言えるしな」

「はは、先輩達に褒められちゃった~♪」


 二人から褒められて照れる空。なんかめちゃくちゃ良い雰囲気じゃないか!?みんな仲良くて、楽しくて、俺、こういうの好きだぞ!
 と、ここで思い付いたように空が話し始めた。


「そう言えば、初め貴哉に副部長やらせようとしてましたよね?あれ、本気だったんですか?」

「あー!そうだよ!俺伊織に誘われたもん!気付いたら空がやる事になってたけどよ~」

「あはは~!貴ちゃんが副部長かぁ!それはそれで面白いかもね!」

「本気に決まってんだろ。俺が部長やるなら副部長は貴哉がいいと思ってたからな」

「空が入ってくれて良かったぜ……」

「でもさ、貴ちゃんはどちらかと言うと部長タイプじゃない?」

「「部長ぉ!?」」


 俺と空は揃って驚いた。紘夢の奴、俺をからかってんのか!?一番言葉に影響力のある奴がとんでもねぇ事言い出したぞ!


「副部長って、本来は部長の補佐役なんだよ。だから今の空くんは部長であるいーくんの代わりにボラ部を支えてるでしょ?」

「まぁ確かに。部長が不在なら副部長がトップかなって思いますけど」

「だから副部長は誰かの下に付くのが得意な人向けだね。貴ちゃんは向いてないと思うー♪あはは~」

「間違ってねぇな。命令されたりすんの嫌だもん」

「紘夢は何で秋山が部長タイプだと思うんだ?」

「周りを引っ張っていく事が出来るからだよ。いーくんとは違って分かりにくいと思うけど、何だかんだで貴ちゃんの周りには人がどんどん集まってるでしょ?ボラ部の前の部長と同じタイプだね」

「渡辺かー!確かにあいつ、部長らしい事してるの見た事ねぇ!いつも庭いじりしてたもんな~」

「梓さん自身もやる気なさそうにしてたり周りからもそう思われがちだけど、それって考え方を変えてみたら下の人達を信頼してるって事じゃない?副部長はもちろん、優秀な後輩達にもね。あの頃はいーくん達しかいなかったかな?」

「んー、まぁ捉えようによってはそう見えなくはねぇな!俺は梓さん好きだぜ!何でもやらせてくれるし、何でも話聞いてくれたしな」

「部長ってのはその組織の長であって、中心だ。それがしっかりしてないと組織として成り立たないどころか下の人達は何を指針にして動けば良いのか分からなくて目標を失う。でもそれでもボラ部がこうして活躍していろいろな場所からヘルプの声がかかるのは初代部長がいたからだと思うんだ。元々葵くんが作った部活だけど、作っただけでほとんどノータッチだったから、ボラ部は本当に梓さんと裕一さんが作り上げたんだよ」


 渡辺とは少し前に中庭で話した時に話は本人から聞いたけど、周りからはこんなにも慕われていたなんて思いもしないだろうな。あの人は俺と同じで面倒くさがりで、周りからの評価なんかを気にするような奴じゃない。
 でも、誰よりも仲間想いで、植物を愛するそんな男だってのは分かる。
 また馬鹿面を見たくなるとか言ってたけど、今ならその気持ち分かるかな!


「だから貴ちゃんは部長タイプなんだよ。貴ちゃん自身にその自覚がなくても、周りにいる俺達は貴ちゃんの為ならって思えるでしょ?」

「確かに。貴哉が部長だったら俺は副部長として全力でサポートします。色んな意味でですけど~」

「俺も貴哉に付いていくぜ~♪」

「俺も意義なし。貴哉が部長とか面白そうじゃん♪」

「絶対やらねぇけどな!」


 ボラ部ってだけで面倒くせぇのに、部長なんてやってられっか!
 
 その後もそんな深い話を交えつつ夕食は楽しく続いた。
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