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2章 文化祭までのいろいろ

相変わらずだな雪兄は

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 俺と空は光児さんが作ってくれた昼飯をペロリと平らげて、その後は少し開店まで話をしていた。


「改めて俺は千歳光児ってんだ。空と雪の兄貴分ってとこだな。貴哉、よろしくな♪」

「俺は秋山貴哉!光児さん財布ありがとう!大事に使うな!」

「見てみて~♡お揃い~♡」


 空は俺とお揃いで買った財布を自慢そうに見せていた。すかさず俺も出しておいた真新しい財布を見せる。


「おー、マジでお揃いにしたんだな!若いって良いね~。どれ?見せてみ」

「汚さないでよ?」


 空と光児さんは本当に仲が良かった。本当の兄弟みたいで、空が俺の知らない人とこんなに親しげに話してる姿を見て驚きもしたけど、何だか嬉しくもあった。
 と、ここで誰かが店に入って来た。振り向くと、茶色い紙袋を両手で抱えて重そうにしてる雪兄がいた。
 

「光ちゃん~!頼んでおいた珈琲豆取って来たよ~って、貴哉ぁ!?」
 
「よう雪兄!久しぶり♪」


 俺がいる事に気付いた雪兄は、驚きつつも少しムッとして荒々しく持っていた紙袋をカウンターにドンッと置いた。うわー、機嫌悪そー!


「久しぶりじゃねぇよ!お前何空の事振ってんだよ!しかも何で一緒に店来てんだよ!何和んでんだよ!」

「相変わらずだな雪兄は」

「雪~、入って早々怒るなっての。二人がせっかく遊びに来てくれたのに」

「だって俺にあんなにかっこよく挨拶した直後に空の事振ったんだぞ!俺の可愛い弟をだぞ!それを何のこのこ人の店に来てんだ!」

「兄貴落ち着けって。貴哉とはもう仲直りしたから」

「ん!?寄り戻したのか?」


 空の言う事に一瞬怒るのをやめて聞いて来る雪兄。俺は正直に答えた。


「戻してねぇよ。友達だ」

「戻してないのかよ!」

「あれ、お前らまた付き合ったんじゃなかったのか。財布お揃いとかてっきり戻ったのかと思ったぜ~」


 光児さんもこれには驚いていた。まぁ俺と空の関係は曖昧なものだけど、言葉にして言うなら友達だ。


「光ちゃん!貴哉はこういう奴なんだよ!人の弟をたぶらかして高い財布買わせるような酷い男なんだ!」

「ちょ、兄貴何言ってんだ!流石に怒るぞ!」

「言ってくれるなクソ兄貴!そんなに言うなら返してやるよ!」

「貴哉!兄貴は冗談で言ってるだけだからっ」

「俺は本気だ!こうして文句言いたいのを、空が止めるから我慢してたんだからな!」

「そんなに弟が大事なら首輪繋いで肌身離さず見とけ!」

「そんな事出来る訳ないだろ!頭悪過ぎじゃないかお前!」

「出来ねぇなら文句言うんじゃねぇ!空が誰と付き合って別れようがテメェじゃなくて空次第だろうが!」

「このクソガキ~!!」

「ストップ!そこまで!雪は店開く準備する!空は貴哉を落ち着かせてくれ!ほら雪こっち来い!」


 俺と雪兄の言い合いに割って入って来た光児さんはまだ俺に何かを言おうとしている雪兄を引っ張って店の奥の部屋に連れて行った。
 残された俺は、空と二人きり。空は申し訳なさそうにポツリと喋り始めた。


「貴哉、ごめん……俺が兄貴に話したから……嫌な思いさせちゃったよな」

「ああ!すげぇ嫌な思いした!でもお前は悪くねぇだろ!謝るなら兄貴だろ!」

「うん。兄貴には謝ってもらうよ。なぁ、貴哉……」


 元気の無い空は俺のシャツの裾をギュッと引っ張って悲しそうに見てきた。
 はぁ、俺は怒りがまだ収まらねぇけど、そんな空を見てたら少し冷静になれた。そうだよな、自分の兄貴があんな風に言われたら嫌だよな。


「悪かったよ。お前の兄貴にクソ兄貴とか言って。俺も謝るわ」

「貴哉……ううん。悪いのは兄貴だから、貴哉が許してくれるならそれでいい」

「にしても本当にお前の兄貴は弟馬鹿だな!本当に愛されてるんだなお前」

「うん。性格とかキツいけど、昔から俺の事心配して守ってくれてたんだ。今の俺があるのは兄貴のおかげなんだ。だから俺も兄貴の事は好き。出来れば貴哉とも仲良くなって欲しいんだけどさぁ」

「なれなくはねぇんじゃん?やっぱお前らは兄弟だなって思うよ。さっき言い合った時、何かお前と言い合ってるみてぇでさ、ムカついたけど、今はそうでもねぇよ。ま、雪兄が謝るって言うなら俺も謝ってやるよ!」

「貴哉……ありがとう♡」


 空は嬉しそうに笑ってギューって俺を抱き締めて来た。うわ、空とこういうのするの久しぶりじゃね?空が凄く近くにいるのが、何だか懐かしくて俺は少し恥ずかしかった。
 こ、これは状況的に浮気じゃねぇよな?


「貴哉、大好きだよ。友達でも、何でも、こうして一緒にいてくれるだけで俺は幸せ♡」

「空……」

「ずっと貴哉とこれが続くならもう付き合えなくてもいいや」

「…………」

「何かさ、今の俺達ってちゃんと付き合うよりも近い存在な気がするんだ。お互いだけが想い合ってて、一線引いてるようで引けてない感じ。それが続けば続くほど想いは大きくなってって、なくてはならない存在になってる」

「ああ。そうだな。お前が言ってる事、分かる気がする」

「貴哉も?本当に俺らって仲良しだな♪」


 空は俺から離れてニコッと笑った。
 俺の好きな空の笑顔。
 空の言いたい事は凄く良く分かった。
 多分俺達はどんな形でも心で繋がっていられる存在なんだ。

 俺も空とずっとこうしていられたらいいなと思う。

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