83 / 157
2章 文化祭までのいろいろ
※ 時間がねぇから手短に話すけど、俺は可愛いくなりたい
しおりを挟む※伊織side
昼休みになってすぐ、俺は二年A組の教室へ来ていた。
本当は貴哉と早川、そして俺が早川に紹介しようと思っていた男と一緒に食う約束してたんだけど、その前にどうしても会っておきたい奴がいたんだ。だからその紹介したい男には先に待ち合わせ場所の屋上へ行ってもらって、俺は会いたかった男に声を掛けた。
「七海、ちょっと話せるか?」
「えっいーくん?」
俺が会いたかった相手は小平七海だった。演劇部のエースで、俺の相手役である七海は、立派な男だけど、そこらの女より可愛い見た目をしているフェミ男だ。今じゃ落ち着いたけど、前までは良くいろんな奴に甘えたり媚び売ったりして可愛がられていた経歴を持つ凄い奴。そう、七海は今の俺にはいい手本になると思ったんだ。
貴哉達をあまり待たせたくないから急いでまずは七海の外見や仕草を見る。俺が声を掛けたのに驚いているのか、両手で口を押さえてキョロキョロしていた。そして机の上にはピンク色の包みに包まれた弁当らしき物。なるほどな、こりゃ勉強になるな。
「時間がねぇから手短に話すけど、俺は可愛いくなりたい。それにはお前を真似するのが一番だと思ったんだ。協力してくんね?」
「手短過ぎて訳が分からないよ!」
「貴哉を完璧に俺のものにする為に可愛いくなりてぇんだ」
「あー、また秋山に何か言われたんだぁ?それならまずは言葉使い直したら?可愛い子はなりてぇんだとか言わないでしょ」
クスクスと唇に指を当てて笑う七海。確かに。七海は言葉使いから女っぽいもんな。
「分かった。他にはアドバイスある?こうすると可愛いく思われるとか」
「そうだなぁ?俺の経験上、下から物を言うのが受け良いと思うよ?やっぱり男の人って上に立ちたい、守ってあげたいって思うものじゃん?こんな風にさ……いーくんが会いに来てくれて嬉しいなっ♡」
そう言って七海は目の前に立つ俺に向かって上目使いで見上げてニコッと笑った。おっ確かに、たまに貴哉もこういう瞬間あるわ!あれ可愛いよなー!
「すげぇ!さすが演劇部エース!」
「えっへん♪上目使い、他には頼ってあげたり、褒めるのもいいと思う♪俺貴哉がいないとダメなんだよとか、うわぁ♡貴哉すごーい♡とか、貴哉と付き合えてちょー幸せー♡とか無邪気な感じも効果的かも♪」
「伊達に男に媚び売ってねぇな。サンキュー♪勉強になったわ」
「もう売ってないもんっ!あ、怒る時も可愛いく怒ったりすると、案外向こうから謝って来たりするよ。いーくんは外見で可愛いくなるのは無理だから、とにかくぶりっ子だよ~」
俺は貴哉より背が高くて体もしっかりしてるからな。七海から聞いたアドバイスはどれも俺には当てはまらないけど、少し自信はあった。
俺に出来ない事はない。いや、自分でやりたいと思った事は何でもやって来たから自然と出来るようになっていったんだ。今回は貴哉の為にやるんだ。必ず可愛いで貴哉を落としてみせる!
「ぶりっ子な。んじゃ俺行くわ~。礼は後でするから」
「はーい。行ってらっしゃーい」
七海はヒラヒラと手を振って俺を見送っていた。
さて、可愛いく思われる為のアドバイスも聞けたし、早速愛しの貴哉に会いに行こーっと♪
気分良く屋上への階段を登っていると、さっきまでのぶりっ子講座ののほほんとした雰囲気が一気に吹っ飛ぶぐらい頭に血が上る光景が目の前にあった。
屋上へ続く最後の階段の一番上で、貴哉と早川が手を繋いで仲良く話してたんだ。
手を繋ぐ意味あるか?あんなの誰がどう見てもイチャついてんだろ。
先に下にいる俺に気付いたのは早川だった。ヤバイという顔をしてたけど、繋いだ手はそのままだった。そして貴哉が喋った。
「はぁ、さすがにそろそろ手は離すか」
「いいんじゃない?このままでも」
「いや、面倒くせぇじゃん」
早川は俺を挑発するかのようにそう言った。
そして貴哉は決め台詞かのように面倒くせぇって言った。俺の事だろうな。
二人の浮気現場を見せ付けられて、腑が煮えくり返りそうなのを押さえ込み、俺は無理矢理笑顔を作って貴哉に声を掛けた。
「何が面倒くせぇの?」
「何がってそりゃ伊織が……あれ?今の空が言ったんだよな?……あ!伊織!?」
「仲良くし過ぎじゃね?やきもち焼いちゃうよー?」
俺は二人に近付いて、数段下で立ち止まり、貴哉に笑いかける。貴哉はヤバイ事をしたと言う顔をしていて、目が泳いでるのが分かった。
二人の手はもう離れていたけど、それをチラッと見てから少し上にいる貴哉を上目使いで見上げて、目一杯の不安そうな顔を作ってやった。
大物俳優桐咲ナツヤの息子舐めんな。
俺は浮気をされても健気で一途な好青年を演じる事にした。
10
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
【※R-18】αXΩ 懐妊特別対策室
aika
BL
αXΩ 懐妊特別対策室
【※閲覧注意 マニアックな性的描写など多数出てくる予定です。男性しか存在しない世界。BL、複数プレイ、乱交、陵辱、治療行為など】独自設定多めです。
宇宙空間で起きた謎の大爆発の影響で、人類は滅亡の危機を迎えていた。
高度な文明を保持することに成功したコミュニティ「エピゾシティ」では、人類存続をかけて懐妊のための治療行為が日夜行われている。
大爆発の影響か人々は子孫を残すのが難しくなっていた。
人類滅亡の危機が訪れるまではひっそりと身を隠すように暮らしてきた特殊能力を持つラムダとミュー。
ラムダとは、アルファの生殖能力を高める能力を持ち、ミューはオメガの生殖能力を高める能力を持っている。
エピゾジティを運営する特別機関より、人類存続をかけて懐妊のための特別対策室が設置されることになった。
番であるαとΩを対象に、懐妊のための治療が開始される。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる