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2章 文化祭までのいろいろ
※ 時間がねぇから手短に話すけど、俺は可愛いくなりたい
しおりを挟む※伊織side
昼休みになってすぐ、俺は二年A組の教室へ来ていた。
本当は貴哉と早川、そして俺が早川に紹介しようと思っていた男と一緒に食う約束してたんだけど、その前にどうしても会っておきたい奴がいたんだ。だからその紹介したい男には先に待ち合わせ場所の屋上へ行ってもらって、俺は会いたかった男に声を掛けた。
「七海、ちょっと話せるか?」
「えっいーくん?」
俺が会いたかった相手は小平七海だった。演劇部のエースで、俺の相手役である七海は、立派な男だけど、そこらの女より可愛い見た目をしているフェミ男だ。今じゃ落ち着いたけど、前までは良くいろんな奴に甘えたり媚び売ったりして可愛がられていた経歴を持つ凄い奴。そう、七海は今の俺にはいい手本になると思ったんだ。
貴哉達をあまり待たせたくないから急いでまずは七海の外見や仕草を見る。俺が声を掛けたのに驚いているのか、両手で口を押さえてキョロキョロしていた。そして机の上にはピンク色の包みに包まれた弁当らしき物。なるほどな、こりゃ勉強になるな。
「時間がねぇから手短に話すけど、俺は可愛いくなりたい。それにはお前を真似するのが一番だと思ったんだ。協力してくんね?」
「手短過ぎて訳が分からないよ!」
「貴哉を完璧に俺のものにする為に可愛いくなりてぇんだ」
「あー、また秋山に何か言われたんだぁ?それならまずは言葉使い直したら?可愛い子はなりてぇんだとか言わないでしょ」
クスクスと唇に指を当てて笑う七海。確かに。七海は言葉使いから女っぽいもんな。
「分かった。他にはアドバイスある?こうすると可愛いく思われるとか」
「そうだなぁ?俺の経験上、下から物を言うのが受け良いと思うよ?やっぱり男の人って上に立ちたい、守ってあげたいって思うものじゃん?こんな風にさ……いーくんが会いに来てくれて嬉しいなっ♡」
そう言って七海は目の前に立つ俺に向かって上目使いで見上げてニコッと笑った。おっ確かに、たまに貴哉もこういう瞬間あるわ!あれ可愛いよなー!
「すげぇ!さすが演劇部エース!」
「えっへん♪上目使い、他には頼ってあげたり、褒めるのもいいと思う♪俺貴哉がいないとダメなんだよとか、うわぁ♡貴哉すごーい♡とか、貴哉と付き合えてちょー幸せー♡とか無邪気な感じも効果的かも♪」
「伊達に男に媚び売ってねぇな。サンキュー♪勉強になったわ」
「もう売ってないもんっ!あ、怒る時も可愛いく怒ったりすると、案外向こうから謝って来たりするよ。いーくんは外見で可愛いくなるのは無理だから、とにかくぶりっ子だよ~」
俺は貴哉より背が高くて体もしっかりしてるからな。七海から聞いたアドバイスはどれも俺には当てはまらないけど、少し自信はあった。
俺に出来ない事はない。いや、自分でやりたいと思った事は何でもやって来たから自然と出来るようになっていったんだ。今回は貴哉の為にやるんだ。必ず可愛いで貴哉を落としてみせる!
「ぶりっ子な。んじゃ俺行くわ~。礼は後でするから」
「はーい。行ってらっしゃーい」
七海はヒラヒラと手を振って俺を見送っていた。
さて、可愛いく思われる為のアドバイスも聞けたし、早速愛しの貴哉に会いに行こーっと♪
気分良く屋上への階段を登っていると、さっきまでのぶりっ子講座ののほほんとした雰囲気が一気に吹っ飛ぶぐらい頭に血が上る光景が目の前にあった。
屋上へ続く最後の階段の一番上で、貴哉と早川が手を繋いで仲良く話してたんだ。
手を繋ぐ意味あるか?あんなの誰がどう見てもイチャついてんだろ。
先に下にいる俺に気付いたのは早川だった。ヤバイという顔をしてたけど、繋いだ手はそのままだった。そして貴哉が喋った。
「はぁ、さすがにそろそろ手は離すか」
「いいんじゃない?このままでも」
「いや、面倒くせぇじゃん」
早川は俺を挑発するかのようにそう言った。
そして貴哉は決め台詞かのように面倒くせぇって言った。俺の事だろうな。
二人の浮気現場を見せ付けられて、腑が煮えくり返りそうなのを押さえ込み、俺は無理矢理笑顔を作って貴哉に声を掛けた。
「何が面倒くせぇの?」
「何がってそりゃ伊織が……あれ?今の空が言ったんだよな?……あ!伊織!?」
「仲良くし過ぎじゃね?やきもち焼いちゃうよー?」
俺は二人に近付いて、数段下で立ち止まり、貴哉に笑いかける。貴哉はヤバイ事をしたと言う顔をしていて、目が泳いでるのが分かった。
二人の手はもう離れていたけど、それをチラッと見てから少し上にいる貴哉を上目使いで見上げて、目一杯の不安そうな顔を作ってやった。
大物俳優桐咲ナツヤの息子舐めんな。
俺は浮気をされても健気で一途な好青年を演じる事にした。
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