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2章 文化祭までのいろいろ
二年だけど、貴哉に似てるの一人知ってたわ
しおりを挟む俺が類と言い合ってると、類越しに赤い派手な男が見えた。やべ!伊織が来ちまった!
類と話してる俺に気付いた伊織はとても爽やかな笑顔で自然に入って来た。
「貴哉、お待たせ♪君、この前の子だよね?」
類は伊織に声を掛けられてパァッと嬉しそうに笑った。
「俺の事、覚えててくれたんですかぁ!?」
「勿論。石原くんだろ?青い髪色とか珍しいし、貴哉の友達ならすぐに覚えるよ♪」
「俺の事は類って呼んで下さい♪伊織さんって呼んでいいですか?」
「類ね。いいよ。俺の事は好きに呼んで♪」
伊織は終始良い先輩オーラ全開にしていた。それに対して類は笑顔をキラキラさせてさり気なく伊織に近付いていた。何かムカつく!
俺は二人の間を裂くように、会話に入ってやった。
「二人共挨拶は済んだか!?それなら俺と伊織は行くから!類お前は帰れよ!明日も学校だろ!」
「いやいや、俺貴哉に会いに来たんだってば♪」
「そうか、それなら残念だな!これから伊織と二人で遊ぶ予定なんだ!俺に用ならまた今度に……」
「俺も遊ぶー♪混ぜて~♪」
「なっ!」
こういう図々しい所は相変わらずだなぁ!俺と類のやり取りを見ていた伊織はサッと俺の肩を抱いて、類にニコッと笑って言った。
「悪いけど、俺が貴哉と二人で遊びたいんだ♪石原くんはまた今度貴哉を誘ってよ。それと親が心配するから早く帰りな?じゃあまたな」
「伊織……」
「貴哉行こう♪」
類は伊織に言われてそれ以上食い付いて来る事はなかった。
俺と伊織は歩いて俺んちの方へ向かって歩いていた。
さっきの伊織って、やっぱ助けてくれたんだよな?俺が類を苦手なの分かっちゃったかな?
「伊織、あのさ……」
「んー?」
「類だけど、巻き込んで悪かったよ」
「はは、んな事気にしてんのか?そんな事で謝るなんて貴哉らしくねぇじゃん」
「なんつーか、類は……類の事は苦手なんだ……」
「苦手!?嫌いじゃなくて?貴哉と言えば好きか嫌いかどっちかじゃん」
「普通もあるわ!」
「まぁ前会った時とさっきの貴哉の反応で何となく分かったけどさ、じゃあ俺の行動は間違えて無かったって事か?」
「え、ああ。助かったよ。ありがとう」
実は類が名前で呼んで良いって言ってたのに、伊織は類の事を石原くんって呼んでいた事が嬉しかったんだ。
伊織のそのさり気ない優しさがモテる男らしくて良いなと思う。
「貴哉の為ならお安いご用だ♡貴哉の事は俺が守るから安心しろよ♡」
「かっこよ過ぎだ!はぁ、俺もお前みたいになれたらな~」
「なぁ、話変わるけど、早川は大丈夫だったのか?少し怜ちんから聞いたけど、何があったんだ?」
ニコニコ笑っていた伊織は少し真剣な表情で聞いて来た。あー、やっぱり部室でのやり取りを見られてたか。伊織には隠したくないから空の話は避けてちゃんと話す事にした。
「怜ちんからは何て聞いたんだ?」
「なんか、早川の手首に痣があってそれを見た貴哉が早川を連れて出てったって言ってた」
「痣見られたのか!?」
「その痣はどうしたんだ?何かあったのか?」
「うーん。俺が今から話す事は絶対空には言うなよ?」
「ああ。分かった」
「実は昔空はバイト感覚で知らない男と会って金貰ったりしてたんだよ。俺と付き合ってからはやらなくなったんだけど、俺と別れてから寂しさを紛らわす為に最近またやり出したみてぇで。その痣はそん時に付けられたやつらしい。俺は空を止めたくて、それで今日もう危ない事はやるなって説得したんだ」
俺の話に伊織は少し驚いていた。
そりゃそうだろ。俺も初めは驚いたぜ。
男が男と会って金銭のやり取りをしてるなんて、普通は思わないもんな。
「なるほどな。それで貴哉は早川に異常に絡んでたのか~」
「こんな話、空も他の奴には知られたくないだろうし、マジで内緒な?」
「他言しないって約束する。で、説得して早川は何て?」
「もうやらないって言ってくれた。やりたくなったらまず俺に連絡をするように言ったんだ」
「ふーん。それ、連絡来たら貴哉はどーすんの?」
「もちろんやらないように止める!」
「どうやって?離れてて電話とかじゃ切った後やるかもじゃん。止められるのか?」
「会いに行く!」
「ダメだ」
「ダメェ!?」
まさかの反対の声に、俺は固まってしまった。
今の伊織なら笑顔で頑張れとか言ってくれるかもとか思ってたのに!
伊織の声のトーンは低く、表情も険しくなっていた。
「当たり前だろ。そんな状況で連絡来て貴哉が会いに行ったら絶対手出されるだろ。そんなの行かせられねぇよ」
「でも、そうでもしないと空を止められねぇし、もう約束しちゃったんだって!」
「それさー、貴哉じゃないといけないのか?」
「……ダメだ」
「貴哉が早川に会いたいんじゃなくて?」
「はぁ?」
「お前らが両想いなのは知ってんだよ。多分俺だけじゃなくて他の奴らも知ってるだろ。友達として心配するのは分かるけど、恋愛感情が絡んでの心配は応援出来ねぇ。意味分かるよな?」
「うっ……分かるけど……」
「早川に新しい恋人でも出来ればいいんだけどな~。そうすりゃ貴哉じゃなくてもいいんだろ?」
空に、新しい恋人……確かにそうだけど、だけど!それはそれでモヤモヤするぞ!
「そ、空は男相手は俺以外無理って言ってたんだ。だから同じ高校じゃ出来ねぇよ」
「そんじゃ恋人のような友達でもいいじゃん。あ、俺が紹介してやるよ♪適任者いるから。二年だけど、貴哉に似てるの一人知ってたわ」
ここで伊織は笑顔になった。
思わぬ展開に、俺は本当に大丈夫か?と不安になった。てか俺に似てる奴なんて城山にいるのか?俺って自分で言うのも何だけど、不真面目だし、勉強出来ねぇし、それに、何より空の茶化しにちゃんと返せるようじゃないと務まらねぇぞ?
「明日の昼休みに連れてくから、早川を誘っとけ♪四人で食おう」
「分かったよ。くれぐれも変なのは連れて来るなよ!俺がダメって判断したらダメだからな?」
「そいつの事、貴哉はダメって言わねぇよ♪」
楽しそうに笑う伊織は、相当自信があるようだった。
とりあえず明日の昼休み、そいつがどんな奴で空にふさわしいかをしっかり見極めてやる!
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