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2章 文化祭までのいろいろ
へー、茜モテ過ぎだろ♪おもしれぇ〜
しおりを挟む部活動中での出来事。
今日も茜のスパルタに扱かれていてやっと貰えた小休憩で俺はテラス席に出てぐったりしていた。もう帰りてぇ……
中をチラッと見ると、他にも鬼コーチの餌食になってる奴がいてうんざりした。
「秋山くん♪」
「おわっ!ビックリした!」
俺が外から食堂の中を見てると、背後から名前をいきなり呼ばれてビクッとしちまった。
振り向くと、侑士がニコニコ笑顔で立っていた。
「侑士?こんなとこに何でいるんだ?」
「見廻りだよ♪演劇部の様子はどうかなぁって」
「へー、それも書記の仕事なの?大変だな」
「まぁそんなとこ。秋山くんは休憩中かな?」
「そうだよ~。もう毎日こんなんで嫌になるぜ!ずっと鬼コーチに怒鳴られっぱなしなんだ」
「鬼コーチかぁ。二之宮の事かな?」
俺の今の状態を説明すると、侑士は中を見ながらクスクス楽しそうに笑ってた。
俺からしたら笑えねぇけどな。
「茜の奴、本性出しやがって。まぁ普段の茜は好きだけどな♪」
「……秋山くんと二之宮は仲良いんだよね。演劇部で知り合った感じかな?」
「うん。初めはお互いいがみ合ってたけど、今じゃちょー仲良し♪夜中まで一緒にゲームしてるぐらいな」
「いいなぁ……」
「?」
侑士はうっとりするように中の様子を見ていた。
今の話を聞いていいなぁって、え、もしかして侑士って……
「お前もゲームやりてぇの?」
「ん!?いや、ゲームはやりたくはないかな~?」
「なんだ、別に混ぜてやってもいいけど、お前忙しそうだもんな」
「……秋山くんって天然?」
「良く言われるけど、それって馬鹿って事だろ?」
「そこまでは思ってないけど、あ、二之宮が来る!」
中の方を向きながら俺と話してた侑士は、ハッとして姿勢を正した。何だよ、侑士も茜がこえーの?
「秋山!いつまで休憩してるんだ!早く戻れ!」
「茜~、今生徒会様と大事な話してたんだよ~。終わったら戻るから」
「前田か……また問題でも起こしたのか?」
侑士の事をチラッと見てから、さっきまで鬼の顔をしていた茜が眉毛を下げて心配そうに聞いて来た。茜のこういうとこ好きー♡
すると、侑士が慌てて答えた。
「秋山くんは何も問題起こしてないよ!最近仲良くしてもらってるから俺から声を掛けたんだ。部活動の邪魔をして悪かった。秋山くんを返すよ」
「そうか。なら良かった」
ここで茜がホッとしたように笑顔を見せた。
この後すぐに鬼の顔になるんだろうけどな。
俺は仕方なく練習に戻ろうと席を立って侑士に一言挨拶しとこうと思い、顔を見ると大きな目をずっと見開いたまま固まっていた。あれ?気のせいか?何か顔赤くね?てか耳もだ!なに!?どしたのこいつ!
「それじゃあ秋山、中で待ってるからな」
「お、おう」
そんな侑士に気付かないのか、茜は先に中に戻って行った。
茜が姿を消すと、パッと電源が入ったかのように瞬きをし始めて侑士が動き始めた。
「あ、秋山くん、俺もそろそろ戻るよ……」
「ちょっと待て。お前さっきの何だよ?すげぇ赤くなってたけど……えっまさか、そうなのか!?」
「な、何の事だ!?年上をからかうんじゃないよ~!あはは~」
さすがに俺でも分かった。まるで棒読みな侑士は明らかに茜と話してから様子が変だ。
こいつ、茜の事が好きなのか。
「へー、茜モテ過ぎだろ♪おもしれぇ~」
「くっ、こんなに早くバレてしまうとはっ!秋山くんには隠すつもりはなかったんだ。俺は一年の頃から二之宮の事が好きだったんだ」
「そんな前から!?」
「そのー、ほら、二之宮って真面目で真っ直ぐだろ?何かいいなぁって……でも接点が無かったし、二之宮も人を寄せ付けない感じだったからなかなか仲良くもなれなくて、でも秋山くんと関わるようになって彼は柔らかくなったんだ。それで、俺も秋山くんと仲良くなれば、二之宮とも仲良くなれるかなって……でも、秋山くんを利用するとかじゃないんだ!あの二之宮をあんな風に笑わせる事が出来る人ってどんな人だろうって、気になっていたんだ」
「別にそういう理由なら利用してもいいけどよ。茜と仲良くなれても付き合うとかは無理じゃね?桃山いるし」
「別に付き合いたいとかは思っていないんだ。ただもっと仲良くなれたらなぁってぐらいで……ただ二之宮を前にすると緊張しちゃって意識すると上手く話せなくなるんだ。情けないね」
照れたように笑う侑士は何だか可愛かった。
へー、驚いちまったけど、茜がモテるのは今に始まった事じゃないからな。恋人の桃山に、演劇部裏方の犬飼と、演劇部エースの七海もか!そして生徒会の侑士。この中なら一番茜に合いそうなのは侑士だけど、桃山がなぁ。うん、残念だ。
「あ、そろそろ行くよ。秋山くんがまた二之宮に怒られちゃうからね。また話そう!」
「おう!またな~」
俺は笑顔で立ち去る侑士を見送ってから食堂内に入る。
そして相変わらず誰かに怒鳴っている茜を見てニヤける。
こりゃ他にも茜の事好きな奴いそうだなぁ~。
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