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2章 文化祭までのいろいろ
姉弟ってそういうもんなの?
しおりを挟む次の日の昼休み。
俺のとこに客が二名程、伊織よりも先に来た。
「貴哉~♪何でここに生徒会の犬がいんだよ?」
「それはこっちのセリフだ桃山。お前こそ何でまだこの学校にいるんだ」
桃山と侑士は俺の目の前で睨み合っていた。
昨日伊織が言ってたの本当だったんだ!侑士は桃山の事が嫌いだって言ってた。
てかこれ本当に昨日の侑士か!?廊下の途中から桃山と一緒だったらしいけど、俺の教室に入って来るなり、不機嫌そうにおっかねぇ顔してんだ!
て事は紘夢にもこんな感じって事!?
「秋山くん、もし桃山に脅されているんだとしたら力になるから言ってくれ。こいつからの被害届は他にも多く出てるんだ」
「うるっせぇなぁ。俺と貴哉は親友なんだよ。テメェこそお山の大将になるからって調子乗ってんじゃねぇぞ」
このままじゃ平和な俺のクラスが戦場になってしまう!俺は二人を引っ張って廊下に出させて話を聞く事にした。
「俺は貴哉に頼まれてたデザイン持って来たんだよ。見せる時間は昼休みぐらいしかないからな」
封筒をチラッと見せて桃山が言った。うん。これは普通な理由だ。
「俺は秋山ともっと親しくなりたいから一緒にお昼ごはん食べようと思って来たんだ。デザインだか何だか知らないけど、後にしてくれよ」
侑士の言い分も分からなくはない。けど、俺が伊織と過ごしてるの知ってる筈だし、約束もなくいきなり来るのは……どっちもどっちだよな!?
「なぁ貴哉ぁ!こうなったらお前が選べ!」
「面白い!俺を選んでくれるよな?秋山くん!」
「はいぃ!?てかどっちも選びたくねぇ!」
右腕を桃山に、左腕を侑士に引っ張られ、俺の取り合いが始まった。
あーもう面倒くせぇ二年だなぁ!ガキじゃねぇんだから仲良く出来ねぇかな!?
俺がキレそうになった時、救世主の伊織が現れて、二人の腕をやんわり解いてくれた。
「伊織~♡」
「二人共何してんの?あんま貴哉にベタベタすんなよ」
「いーくん!前田が貴哉に言い寄ってるぞ!いいのか!?」
「桃山、お前と話してると馬鹿馬鹿しくなるな。秋山くん、また今度一緒にお昼ご飯を食べてくれるかな?騒がせてしまってごめんね」
ここで俺の知ってるニコニコ笑顔の侑士になった。そして一人立ち去って行った。
マジで二重人格かもしれないな……
すると伊織は険しい顔をして俺を見て来た。
「侑士は何でいたんだ?」
「また昼飯一緒に食おうとしたんだって。そしたら桃山もいて二人が喧嘩してたんだ」
「てか貴哉、何で前田なんかと仲良くしてんのよ?あんな偽善者と関わるなよ」
「偽善者?」
俺は意味が分からなかったから、伊織を見ると、ニコッと笑って教えてくれた。
「上辺だけ良い人に見えるって事だよ。侑士は良い奴だよ。桃山とは合わないだけだ」
「いや!あいつは悪い奴だ!貴哉!騙されるなよ!」
「で、桃山お前は何でいるの?」
「コレだよ♪貴哉に頼まれてたデザイン何個か作って来たから見せようと思ったんだ♪」
また手に持ってた封筒を見せて嬉しそうに言った。
俺達は食堂のテラス席まで行き、昼飯を食いながらそれを見る事にした。
「貴哉、好きなの選んで♪」
じゃーんとテーブルの上に持っていた封筒の中身を広げて見せて来た。その数、十数枚!どれもかっこよくて、普通に売っててもおかしくないような物ばかりだった。
てか桃山の奴、あの後家でこれだけの数のデザインを考えて書いて来たってのか!?
これには伊織も感心して手に取って見ていた。
「へー、さすがデザイン部だな。良くこんなに書けたな」
「俺、こういうの考えるの好きだから♡姉ちゃんもノリノリで協力してくれた♡ほら、これ姉ちゃんがモデルなの」
桃山がピラッと見せて来たのは、クールな感じの絵のタッチで、裸の女の後ろ姿の絵だった。
「え、お前姉ちゃんに裸になってもらったのか!?」
「うん。姉ちゃんスタイル良いよ。だから絵になる」
「姉弟ってそういうもんなの?」
「俺んちはそうだけど?風呂も一緒に入るぜ?」
「いや、普通は無いだろ。よっぽど仲良くないとな」
「まぁ仲は良いよ。ミシンとかの使い方も姉ちゃんに教わったんだ。人使い荒いけど、かっこよくてセンスあるから俺は好き」
「……………」
「へー、姉ちゃんもいいなぁ~。伊織は兄ちゃんがいるんだよな?」
「え、ああ。いるよ。でもうちはそこまで仲は良くないかな」
「いーくんの兄ちゃんとか見てみたーい♪写メとかねぇの?」
「ないな。本当にお互い干渉し合わないから、連絡先とかも知らないんだ」
伊織の家族の事なら少し聞いてたから知っていた。両親は仕事柄ほぼ帰って来なくて大学生の兄貴もたまにしか帰って来ないって。
俺は黙って聞いていた。そして桃山は質問を続けていた。
「兄ちゃんと仲悪い感じ?」
「俺はそうでもないけど、兄貴がどう思ってるかな。昔よりは話す事増えたけど、それも月に数回とかだ」
「意外だな~。てかいーくんは上かと思ってたぜ!面倒見いいしー?」
「それ、俺も思った。弟か妹いるかと思った」
「はは、俺って何でも出来ちゃうからなぁ~」
伊織はいつものように笑っていたけど、少し元気なさそうに見えた。だから心の内は分からない。俺に兄弟がいないから普通の兄弟がどんなのかは未知の世界だ。
だから桃山のような姉弟関係もだけど、伊織の兄弟関係もどちらも不思議な感じだった。
てか伊織の兄貴に会ってみてぇなぁ。見た目は伊織似で元ヤンだったって言ってたけど、どんな感じなのか気になる。話してみたら空の兄貴の雪兄みたいなのかもしれない。さすがに忙しそうな両親には会えないだろうけど、いつか兄貴になら会えるかな?
俺のもっていない兄弟、ずっと兄弟がいるのが羨ましかったけど、いろいろな関係がある事を知って良い事ばかりじゃねぇのかなとも思いつつあった。
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