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2章 文化祭までのいろいろ

良い加減伊織に気を使って話してくんねぇかな!?

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「桃山!」

「よう!貴哉からのラブコールばっちり受け取ったぜ~♡」

「ラブコール?」


 桃山がスマホをチラッと見せて言うと、隣から伊織の低い声がした。こいつは本当空気読めねぇなぁ!


「ただのメッセージだ!てか桃山待っててくれたのか?」

「そうだよーん♪俺も一緒に帰るー♪」

「お前茜は?待たないのかよ?」

「茜には昨日から文化祭まで集中したいから一人にしてくれって言われてんだよ。だから寂しくて寂しくて~。そんな時に貴哉からラブコール来たから飛んで来たって訳♡」

「そのラブコールって言うのヤメロ!い、伊織睨むな!送ったメッセージ見せるから!」


 怒る伊織に俺がさっき桃山に送ったメッセージを見せた。
『相談したい事あるんだけど、いつ暇?』
ほら!普通だろ!?


「相談したい事ぉ?桃山にぃ?」

「えっ!?これダメだったのか!?」

「何でも聞きたまえ!この湊くんに!」

「はぁ、まぁいいや帰りながら話そうぜ。貴哉の相談、俺も聞いてもいいだろ?」

「あ、うん。てかボラ部の事だし」

「そう言うのは部長の俺に相談しなさいっ」

「身内には話せねぇ事もあるよなぁ?何なら夜中に行ってやろうか?ベッドの中でじっくり聞いてやるよ。その後ちゃんと慰めてやっから♡」


 伊織がいるってのに相変わらずの桃山っぷりを炸裂させていた。俺の肩に腕を回して頭に頬を擦り寄せられた。こいつこんなにスキンシップ激しかったっけ?あ、茜に相手にされてねぇから溜まってんのか?


「お、おい、マジでヤメロ……てか俺にこんな事したらお前もヤベェぞ」

「桃山、貴哉と二度と口聞けないようにしてやろうか?」

「冗談だって~。てか貴哉にならこういう事しても茜が嫌がらねぇからしてるだけだし。なぁ?貴哉」

「俺に同意を求めるな!巻き込むんじゃねぇ!」


 桃山の言う通り、茜と桃山は付き合っている。二人共二年で、接点とか無さそうだけど、俺から見たらすげぇ仲の良いカップルだ。破天荒な桃山をしっかり者の茜が制御しつつ上手くやっていってる。

 部活で疲れてんのに、この桃山とのやり取りで更に疲れたぜ。
 三人で学校を出て駅まで向かう。桃山が電車通学だからだ。


「ボラ部のTシャツのデザインを一緒に考えてくれって?何それ面白そうじゃん♪」

「あー、それなら桃山は適任かもしれねぇな。こいつそういうの得意だから」

「だよな?浴衣も作ってくれたんだっ!あれすげぇかっこよかったもんな♪」

「浴衣?貴哉着たのか?」

「ああ着たよ。夏休みにな」

「俺知らないんだけど」

「確かそん時は空と付き合ってたんじゃなかった?四人でダブルデートしたんだよな~♪」


 またこいつは地雷を踏むような事をーーー!!
 良い加減伊織に気を使って話してくんねぇかな!?


「したな!過去にな!でも今は付き合ってねぇから!」

「へー、貴哉の浴衣姿見たかったなぁ」

「ちくしょう!来年見せてやっから!それよりも桃山、デザイン頼んだぞ」

「任せろ♪何個か作って見せるよ」

「わーい♪楽しみ~」


 俺が素で笑うと二人はホッとしたように笑った。
 え、散々人の事冷や冷やさせといて何だよその反応は!?


「やっぱ貴哉っていいわ。茜とのコラボが最高だけど、今はピンでもいいわ」

「だろ?でも今は俺のだからお前もあんま変な事言うなよ」


 二人がほっこりしながら話してるから、喧嘩してるよりいいかと思って放っておいた。

 ここで電車通学の桃山と別れて伊織と二人で歩く。


「なぁ、侑士だけどさ」

「あ、侑士の事忘れてた」


 部活の忙しさと桃山っぷりに圧倒されてすっかりそんな話をしていたのを忘れていて、思い出した。


「お前いろいろ忘れ過ぎ。まぁいいけど。侑士とはどんな話をしたんだ?」

「どんなって、本当に普通の世間話だよ。友達になりたいって言われて、俺には伊織がいるからあんま相手出来ないって言ったら分かってるって言ってたぞ」

「その友達になりたいってのが引っかかるな……」

「何で?確かにあいつなら友達なら腐るほどいそうだし、俺なんかにそんなの言うの変だとは思うけど」

「侑士ってさ、普通に良い奴なんだよ。勉強も運動も出来るし、あんな風に愛想もいいから誰とでも仲良く出来るし、でも、侑士って曲がった事が大嫌いなんだよ」

「曲がった事?」

「何事にも真っ直ぐな奴なんだ。二之宮を社交的にしたみたいな奴だな。ただ、二之宮と違う所はその嫌いな部分には厳しいってか、とことん冷たいんだ。二重人格とも言われてんなー」

「マジで?全然そんな感じしなかったけど」

「侑士を知らないからだろ。俺の予想だと貴哉はそっちだと思ったんだけどなー。まさか気に入られるとは思わなかった。ちなみに桃山と一条は侑士に嫌われてるぞ。二人の事を退学に追いやろうとした事もあった。桃山はあんなだし、一条は葵くんに守られてたから何とか無事だったけどな」

「退学!?紘夢も!?」

「一条は今じゃ良い奴になってるけど、前は酷かったからな。桃山も変わらずあんな感じだし。俺の知ってる侑士は和を乱したり、間違った事をするのを嫌ってる。まぁ普通にしてりゃ大丈夫。ってか何か言われたりされたらすぐに言えよ?」


 伊織はいつもの感じで笑いながら侑士の事を教えてくれた。今日話したばかりだけど、とてもそんな風には見えなかったぞ。てか食べ物をくれる人間はみんな良い奴だと思ってるし。
 俺もこのまま友達を続けてたらボロが出て嫌われるかな?いや、俺の事は神凪とかから聞いて知ってるみたいだし、もう嫌われててもおかしくねぇよな?まさか様子見してんのか?

 あー、直登が言ってたのってこの事か?退学ってワードを聞いて俺は焦った。とにかく深く関わるのはやめた方が良さそうだな。
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