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2章 文化祭までのいろいろ

ごんちゃんもパーティーに入れてやるよ♪

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 俺と伊織は前座った場所に並んで座って、今日は教頭も椅子に座って俺達の方を向いていた。
 そして学校の校則の話を始めた。


「うちの高校は進学校でありながら身だしなみの校則は他よりは緩いんです。でもね、数年前までは頭髪の色はもちろん、長さまでキッチリ指定があったんだよ」

「へー、今じゃ結構金髪とかいるよな?赤いのもいるし」


 俺は隣の伊織を見てニヤリと笑う。「あはは」と気まずそうに笑った。


「数年前の生徒会長が身だしなみの校則の撤廃を主張したんだよ。生徒達にも個性を与えるべきだと主張して、生徒達から多くの支持を得ていました。この学校の生徒会長の影響力が我々指導者側より強いのは知っているかな?その頃から強まったんですね~」


 にこやかに話す教頭は機嫌が良さそうだった。
 この調子で俺の自己紹介無しにしてくれねぇかな?とか考えていた。
 

「見事に我々指導者側を捩じ伏せて校則の一部を改正する事になったんだけど、学校側も意地を見せました。それはこのネクタイです。著しく風紀を乱す服装などは禁止。校章入りのネクタイだけは必ず着用する事。それを校則に残すのが条件として校則の改正を飲みました。結果的にうちの高校は生徒達から人気が出て、今では色んな子達が通うようになり僕は毎日が楽しみなんだよ」

「そんな話知りませんでした。凄いのは葵くんだけじゃないんですね」

「いやいや神凪くんは歴代の生徒会長でもトップだよ。そうだね、その校則の一部を変えた生徒会長と並ぶぐらいにね。ここだけの話、神凪くんは校則が緩くなったのには賛成だけど、城山高校の学力が年々落ちているのが気になっていたみたいなんだ。そこで神凪くんが生徒会長に就任してから提案していたこの学校のシステムを大きく変える事を彼はやってのけた。僕はそのシステム面白いなと思ったよ。来年度から実施される予定なんだけど、残念ながら神凪くんはもう少しで引退だ。次の生徒会長が引き継ぐ事になっているんだ。神凪くんは一年という短い任期で本当に良くやってくれました」

「あ、それって特進とか一般とかクラスが分かれるやつ?」

「え、あの噂本当だったのか?てか貴哉良く知ってたな」

「直登から聞いた。あいつそういう話詳しいんだよ」

「二人共知っているみたいだね。その噂がどんな風に出回っているのかは分からないけど、大体合ってるでしょう。話が逸れましたが、秋山くんが今着けている赤いネクタイは城山高校の生徒である証です。やっとその姿を見る事が出来て僕はとても嬉しいです」


 にこやかに教頭は言った。
 んな事言われたらこれからずっとネクタイ締めてなきゃじゃん!伊織からの貰い物だし、あー面倒くせぇ事が増えちまったなぁ。
 でも、ネクタイ着用が必須な理由を聞いてちょっと教師達が可愛いく思えた。
 確かに、その条件を飲んだから空とか数馬とかみてぇな奴らでも入学しようと思って今生徒になってるんだもんな~。実際二人共頭良いし、学業を頑張って欲しい城山としてはプラスだろ。


「ごんちゃんの言いたい事分かったよ!俺、ネクタイ締められるように練習するわ!」

「ごんちゃん!?」

「はは!秋山くんは本当に面白いな~!では約束通り秋山くんに自己紹介してもらって今日は終わりにしましょう」

「あー!覚えてたのかぁ!やっぱやらなきゃダメ?」

「はい。僕に秋山くんの事を教えて下さい」


 やっぱ教頭は只者じゃねぇな!
 俺は仕方なくその場に立って、教頭に向かって自己紹介を始めた。


「俺は城山高校一年A組の秋山貴哉です。趣味は寝る事……とゲーム!友達とやってるゲームが面白くて良く寝不足になるまでやってます。苦手なのは勉強かな?だからみんなから何で城山入ったのって聞かれるけど、正直言って家から近かったから。ここ受ける前はお前じゃ絶対無理って言われたけど、こうしてちゃんと通ってんだからそん時俺を馬鹿にした奴らにはザマァ見ろって感じ!まぁ進級危ねぇけど、母ちゃんに怒られたくねぇから勉強も頑張ってますっ!今の目標は生徒会長の神凪葵と約束した部活で成果を上げる事です。あと、ネクタイ自分で締められるようになる事です!以上!秋山でした!」


 俺は言葉使いを意識しながら喋った。やっぱり上手くは言えなかったと思うけど、何となく達成感はあった。こうやって自分の事を誰かに教えるとかあんました事ねぇから照れ臭いけど、ずっと笑顔で聞いてくれてた教頭を見ていたら自然と出来た。
 そして俺が話し終わると、教頭はパチパチと拍手をしてくれた。俺の隣にいた伊織も一緒に。


「ありがとうございました。秋山くんと言う人柄がとても良く出ていて素敵な自己紹介でしたね♪趣味を共有出来る友人に恵まれていて、自分が掲げた目標にも周りに無理だと言われながらも取り組んで達成させている。きっと今の目標も秋山くんなら達成出来るよ。苦手な勉強でも僕で良ければ力になるからね」

「うっ解説されると恥ずかしさが増すな!」

「いや~、先週のとは大違いで驚いたな~!今度僕にもそのゲーム教えてくれない?」

「いいぜ!ごんちゃんもパーティーに入れてやるよ♪」

「おまっ!いい加減にしろって!教頭先生だぞ!てかそんな事したら他の奴らが驚くだろっ」

「はは、秋山くんは飽きないな~。では今日はここまで。また来週もよろしくね」


 俺と伊織は第二会議室を出て廊下を歩く。
 いや~!どうなるかと思ったけど、教頭ってば満足してくれた感じ?これも玉山のおかげだな!会ったら教頭に褒められたって自慢しよっと♪
 俺が機嫌良く歩いてると、伊織に笑われた。


「本当に貴哉は面白いな」
 
「は?お前さっき怒ってたじゃん」

「それは教頭先生に向かって上から言ってたからだ。さっきはいいけど、他じゃああいうのは辞めた方がいいぞ」

「分かってら~。教頭もゲームやりてぇみたいだから仲間に入れてやろうと思ったんだ」

「てかごんちゃんて何だよっ!馴れ馴れし過ぎるだろ!」

「教頭の名前が権次郎だからだよ。面白い名前だから覚えてたんだ♪」

「はぁ、一瞬冷やっとしたけど、やっぱ貴哉っていいわ♪」


 伊織が安心したように笑った。そうだ、伊織にお礼言わなくちゃ。


「俺がさっきちゃんと自己紹介出来たのは伊織のおかげでもある。ありがとうな」

「俺何かしたっけ?」

「ネクタイだよ。これ買って締めてくれたから、教頭が昔話しだして、それから自己紹介ってなったじゃん?いきなり言えって言われるより言いやすかったな~って。それと、教頭に褒められた♪俺がネクタイしてるの見て機嫌良くなったみてぇだし、だから自己紹介もクリア出来たんじゃね?」

「そんな事思ってたのか……」

「だって、確かに前回よりはちゃんと出来たと思うけど、言葉使いも上手く出来なかったし、結構めちゃくちゃな事言ってなかったか?」

「ううん。貴哉はちゃんと出来てたよ。俺も聞いててもっと秋山貴哉を知りたい、秋山貴哉と話したいって思ったもん」

「はは!お前が言うなら間違いないな♪ちゃんと出来て良かった~♪」


 その後、伊織に教室まで送ってもらって俺はネクタイを締めたまま自分の机に座った。


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