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2章 文化祭までのいろいろ
お前わざわざ売店で買って来たのか!?
しおりを挟む休み明けの学校。眠い目を擦って伊織と学校の門をくぐる……
テスト終わったからって久しぶりに茜達と夜遅くまでゲームしちまったぜ……
「結局何時まで起きてたんだよ?」
「3時」
「マジかよ!二之宮とかもか!?」
「いや、茜は2時とかに寝落ちしてた。直登と数馬は日付け変わってすぐに抜けた。紘夢は最後までいたけど、全然元気だったな~。あいつ何時までやってたんだろ?」
俺と数馬で始めたオンラインゲームは、今では賑やかになっていた。ヒーラーが欲しくて茜を誘い、その後に数馬の気を引く為に直登が参戦。そしてなんと、ずっとチャットでやり取りしていたフレンドの「ロム」が紘夢だった事が発覚して、今では俺達パーティーは五人になっていた。
これがなかなか面白いんだ。俺は今、更なる強さを求めて転生するかどうか迷っている所だ。
「お前ら良くも飽きずに……」
「お前もやる?ハマるぜ?」
「やらねぇよ。何で貴哉とネットでやり取りしなきゃなんねぇの。俺は生の貴哉といたい」
「言うと思った~」
前に一緒にいる時にゲームしてたら、俺がやってるの見ながら一生懸命構って来てた事があった。見てる分にはいいみたいだけど、実際やりたくはないらしい。伊織ならすぐに強くなれると思うんだけどなぁ。空も同じく断るんだ。
「それにしても面白いメンバーだな。二之宮以外ボラ部だし、一条がいるのは面白すぎ」
「あいつ結構前からやってたらしい!どうりで強ぇ訳だよ~」
そんな話をしながら玄関を通過する。そこで伊織はちょっと待ってろとどこかへ消えた。
トイレなら俺先に第二会議室に行ってるんだけどな~とか考えながら待ってると、すぐに伊織が戻って来た。手にはこの学校のネクタイを持って。でも伊織はちゃんと締めてる……どゆ事?
「ほら、プレゼント♪今度は失くすなよ」
「えー!お前わざわざ売店で買って来たのか!?」
確かにネクタイ買ってやるとは言ってたけど、そんなのすっかり忘れてたし!こいつどこまで俺にやるつもりだ!?
「締められねぇんだっけ?なら俺がやってやる♪」
「てかさすがに悪ぃから母ちゃんに金貰う。明日には用意するから……」
「いいって。俺が貴哉がネクタイしてるとこ見たかったんだから」
「お前、本当に口が上手いよな~」
喋りながらシュルシュルと器用に俺に買ったばかりのネクタイを締めている伊織。この高校に入ってから一度も締めた事ないネクタイだったけど、伊織に買ってもらったって事でこれから毎日締めなきゃならなくなってしまった。
少し首がキツくなった気がする……
「よし!その内締め方教えてやるよ。良いじゃん♪似合ってる♪」
「んー、とりあえずありがと……」
望んで無かったネクタイだけど、伊織は嬉しそうだしとりあえず受け取る事にした。
この高校のネクタイの色は赤。下の広がった三角の部分に白い紋章みたいなこの学校のマークが入っているんだけど、ブレザーやカーディガンなどを羽織っちまうと見えなくなるんだ。
慣れないネクタイを締めて俺は伊織と月曜の朝だから第二会議室へ向かった。
中に入ると、既に教頭がいた。ニコニコ笑顔で窓の外を見ていたみたいだ。ここからは校舎の隅っこだからメインの校庭は少ししか見えない。見えるのは運動部の部室と、その隣にある小さいグラウンドだ。
「おはようございます!」
「はよーっす」
「おっ来ましたね~!二人共おはようございます♪おや?」
教頭は俺達に気付くと、何かを見つけたように、ほっそーい目を少しだけ開いて俺に近付いて来た。
「これはこれは!秋山くん!そのネクタイ、とても似合ってるよ~」
「あ、これ?そりゃどうも……」
「秋山くんは未着用だったのでネクタイの話もいつかはしようと思っていたのですが、良い機会です。お話しときましょう♪」
「…………」
え、開けちゃダメな蓋開けちゃった?ネクタイを買い与えてくれた伊織を見ると楽しそうにクスクス笑っていた。
また説教が始まるのかと思って俺は肩を落とした。
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