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1章 二学期中間テスト
※ ほら~!俺じゃないんじゃん!
しおりを挟む※空side
俺は自転車の後ろに貴哉を乗せてとあるショッピングモールに向かっていた。二階建ての綺麗なモールは、中学の頃に良く友達と溜まってた所でもある。
何故そこに向かっているのか、それは桐原さんと話し合う為だ。
今俺の後ろにいる貴哉はギュッと俺の上着を握っていた。そんな可愛い貴哉と今付き合ってる桐原さんは、電話越しだけどめちゃくちゃ怒ってるのが分かった。
一応貴哉に被害が無いように嘘ついたつもりだけど、あの桐原さんにどこまで通じるかは分からない。俺と桐原さんが話してる時に隣にいた貴哉には、桐原さんに本当の事を言うと何度も言われたけど、俺は止めた。
桐原さんに怒られるのは俺一人でいい。貴哉は今まで通り桐原さんと一緒にいればいい。
きっと桐原さんは貴哉を手離さないだろう。それなら、もう貴哉が戻って来ないなら、貴哉が幸せなまま側にいたい。傷付くのは俺だけでいいんだ。
「空!やっぱり俺言うからな!」
「貴哉は余計な事言わなくていいよ。俺が何とかするから」
「でも、俺も空としたかったんだぞ!てか俺から誘ったんじゃん!」
「うん♡とても嬉しかった♡だからまたしよ♡その為には桐原さんを何とかしなくちゃだから」
「だから本当の事話した方がいいって!」
「本当の事を話してどうなるの?貴哉はまたどちらかを選ばなくちゃならなくなるよ?そしたらどっちを選ぶの?」
「それは……」
「ほら~!俺じゃないんじゃん!それならせめて今のまま側にいさせてよ~。俺の好きにさせて?」
「でもっ空が悪者になっちゃうじゃんか!」
「今更善人になろうなんて思ってないから。貴哉が俺の事を想っててくれさえいればそれでいい。貴哉は桐原さんを選びな。そうすればあの人喜ぶから」
「空のバカ!」
本当貴哉はとんでもない人に気に入られちゃったよ。みんなの人気者で、俺じゃ到底勝てないような大物にさ。実際桐原さんの方が貴哉を幸せに出来ると思うんだ。頼り甲斐あるし、周りからの信頼や評価も高いし、何でも好きな物買って与えてくれるしな。
その点俺は?女好きのチャラ男だと言われて、周りからの評価も低い。金も無ければ何もない。情けないけど、あんな人と比べたら貴哉を幸せになんて出来ねぇよ。
貴哉は情に厚い所があるからな、俺と桐原さんをどちらかを選ぶのは出来ないってのは分かる。今の桐原さんと付き合うって選択は貴哉なりの最大限の行動だと思うんだ。
その点俺はほら元々淡白な性格だからさ、うん、少なくとも貴哉よりはそうだから、今の立ち位置でもいいかなって思えるんだ。
貴哉との関係がどんな形であれ、少しでも側にいられるなら今のままでいいんだ。その上で貴哉を守る。貴哉にだけは火の粉が落ちないように。
俺は桐原さんに殴られる覚悟で自転車を漕いでいた。
「チャラ男はチャラ男らしくしてるから♪もし桐原さんと別れられたら俺んとこ来いよ♡それまではちょー仲の良い友達でいよう♡」
「……友達とはあんな事しねぇだろ」
「じゃあ俺と貴哉だけ特別な友達って事でいーじゃん♡」
「はぁ、分かったよ!お前に合わせてやる!でもバレそうになったら全部本当の事言うからな!お前だけが悪いんじゃねぇって!」
「りょうかーい♪」
「くそー!俺が悪いのに!何でいつもお前ばっか傷付けちまうかなっ」
「それがさ、今はそれほど傷付いてねぇんだわ。貴哉とまた愛し合えたし、好きな人が俺以外を見てるのって辛いけど、たまに相手してもらえる喜びもあるんだよな」
自分が何と重ねて言ってるのか、きっと母さんと貴哉を重ねてしまってるんだろう。
俺の他に違う人が映っていて振り向いてもらえなくても、心のどこかで期待してしまう。好きだから。とても大切な人だから。
でもさ、俺の事本当にどうでも良かったら母さんも家には帰って来なかったと思うんだ。そんなの俺の勝手な解釈かもしれないけど、貴哉も同じで、俺の事を本当に想ってくれてるからこうして離れずにいてくれてるんだって思う。
だから、俺は欲はかかずにその小さな喜びを大切にしようと思う。
もっと欲しいけど、一気に貰ったらそれで終わりって事にならないように、小分けにして少しずつ貰おう。
それに満足出来なくなるのは俺自身がもう少し大人になってからにしよう。
頑固な貴哉を説得して、俺は急いで桐原さんとの待ち合わせ場所まで向かった。
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