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1章 二学期中間テスト
※ 那智、どうせなら何か賭けようぜ
しおりを挟む※伊織side
金曜日、中学テスト最終日。午前で終わったから怜ちんと那智とカフェで昼飯食って帰る事になった。
前から怜ちんから誘われてたんだけど、俺はいつも貴哉と過ごしてたからずっと断ってたんだ。
今日は貴哉の方に予定があるみてぇだから良い機会だと思って二人と過ごしてる。本当は貴哉も一緒に四人でって話だったけど、訳を話したら「貴ちゃんはまた今度♪」と機嫌良く返事をされた。
貴哉の方の予定ってのは何でも早川と遊ぶとか。あと、瑛二っつー友達もいるらしいけど、正直俺は会った事がねぇからどちらにせよ嫌だった。
普通元彼と会うかね?誰か他にいたとしても、体の関係を持った相手だぞ?また何があるか分かんねぇじゃん。
怜ちん達と飯食いながらも俺はモヤモヤしていた。
「いーくん!その様子だと貴ちゃんと上手く行ってないのー?」
「んな事ねぇよ」
「だよね~?ど平日にペアリング買いに行っちゃうぐらい仲良いもんね~♪じゃあ何でそんなに機嫌が悪いの?」
「秋山がいねぇからだろ」
お、那智ってば珍しく鋭いじゃん。
その通りだ。俺は手の届く所に貴哉がいないと嫌だ。ずっと側に置いておきたいんだ。
「友達と予定あるんじゃしょうがないよね~。まさか友達と遊ぶなとか言ってないよね?」
「言ってねぇよ。なぁ、付き合ってて元彼と会うのってどーなの?俺的にはすげぇ嫌なんだけど」
俺は恋愛経験が0だ。何もかも貴哉が初めてなんだけど、この二人も豊富って訳じゃねぇから期待出来ねぇが、俺よりは詳しいだろうと思って聞いてみた。
「ああ、空くんと遊んでるのか。だから機嫌悪いんだね」
「で、どーなのよ?二人は恋人がいたとして、そいつが元彼と会ってたらどー思う?」
「俺は嫌かなぁ?付き合いたては我慢しちゃうかもだけど、快く行ってらっしゃいとは言えないよね」
「俺は平気だぜ!その代わり俺も好きにやらせてもらうからな♪」
怜ちんは俺と同じか。那智は……てか那智に恋人がいた話なんか聞いた事ねぇから、そんな答えが返って来てちょっと引っかかった。
「なぁ、那智って誰かと付き合った事あるのか?」
「あるよ」
「ええー!あるのぉ!?俺聞いた事ないけど!」
「中学の時に何回か。別に言う事でもねぇかなって思ったから言わなかったのと、内緒にして欲しいって言われた事もあったんだよ」
怜ちん同様、俺も驚いた。スポーツ馬鹿だとばかり思ってたら、俺らの中で一番経験豊富じゃねぇか!今では立派なヤリチンだけど、まさかちゃんと付き合った事があるとはな!
ちなみに怜ちんも中学の頃に年上の奴と付き合ってるのは聞いた事がある。怜ちんは理想が高いから那智みたいに誰とでもって訳にはいかねぇみてぇな。
でもさ、付き合ってて内緒にってのはどうなんだ?俺的に嫌なんだけど。
「何で内緒にするんだよ?」
「さあ?何か目立ちたくないとか言ってたけど」
「あー、分かる気がする。俺達って何だかんだ目立ってるからね~。特にいーくんファンとか何するか分からないじゃん?」
怜ちんは俺をチラッと見て言った。
目立ちたくないってのは貴哉にも言われたな。
でも仕方なくね?周りが勝手に騒いでるだけだし、俺が頼んでる訳じゃねぇもん。貴哉に手出したらただじゃおかねぇけどな。
「那智、お前ちゃんと付き合えたのか?そもそもちゃんと好きだったのかよ?」
「うーん、今思えば告られて嬉しかっただけなのかもしんねーな?何か付き合ってもすぐフラれるし、だから今は告られても付き合わねぇよ。面倒くせぇから」
「その方がいい。お前に恋愛はまだ早ぇよ」
「那智くんも心から好きな人に出会えるといいね」
「怜ちんはどーなんだよ?恋人欲しい欲しい言ってっけど、良い奴いねぇの?」
那智が怜ちんに聞いていた。確かに欲しい欲しい言ってるよな。怜ちんこそ俺らの中じゃ普通に恋愛出来そうだけどな。
「欲しいんだけどね~、なかなかね~」
「怜ちんのタイプに当てはまる奴はそうそういねぇだろうな」
「えへへ♪」
「まずは、黒髪が絶対条件だっけ?真面目で一途で寡黙な奴だろ?俺と那智は見事に外れてるんだよな~」
「寡黙って何だ?どんな奴だよそれ?」
「お前じゃねぇって事だよ」
ここまでは普通だ。こっからは漫画とかドラマの中かよって言うような好みが出てくる。それもちょいちょい足されていくから面白いんだ。
「そうそう♡図書館が似合う大人しい人で~、頭が良くて~、一回告白したぐらいじゃOK出さないような人で~、高い物を取ってくれるぐらい背が高くて~、どんな時も落ち着いていてクールで~、基本無表情だけどたまに笑う笑顔がちょーかっこよくて~」
「アハハ!まだ出てくるよ!」
「ギャハハ!おいいーくん止めてくれ!笑い止まらねぇ!」
うっとりしながら真面目に自分の理想の恋人を語る怜ちんに、堪え切れなくなった俺と那智はほぼ同時に笑い出した。
これ前からだから。怜ちんのタイプはこんな風に細かくて、注文が多い。総合的に聞いたら大人っぽい人だと思ってるけど、それも少し違うらしく、遊び心のある人とか言った時もあった。
理想を描くのは自由だけど、そんな奴いないだろって俺達にとっては笑い話だ。
怜ちんは真剣なんだろうけど。だから腹抱えて笑う俺達にプクッと膨れて残ってたサラダを突き始めた。
「あー、笑った。それに当てはまるのって葵くんぐらいじゃん?」
「しかいないよな~。でも違うんだろ?」
我らが生徒会長の神凪葵くん。三年生で、教師達よりも影響力のある男だ。いつも堂々としてて、葵くんが通れば誰もが道を開けて跪きそうな風格を持っている。正に城山高校の王様って感じ。俺ら三人は気に入られてて良くしてもらってるんだ。
「葵くんもいいけど、ちょっと惜しいんだよね!みんなから注目浴びてる所がタイプじゃないんだ。地味でいいんだよ地味で」
「プッ!お前あの葵くんにダメ出しとか強っ!」
「おい今度怜ちんのタイプ見付けようぜ!どっちが先に見付けられるか勝負だ!」
「面白ぇじゃん♪那智、どうせなら何か賭けようぜ」
「いいね~♪俺は新しいスニーカーが欲しい!」
「了解。んじゃ俺は……」
欲しい物は特にねぇんだよな~。大抵の物なら買えるし、本当に欲しい物……それは金では手に入らない物だ。
「なになにー?いーくんの欲しい物って気になるー!」
「俺の小遣い分かってるよな!?五千円だぞ!いーくんの感覚で言うなよ!」
「物って言うか、俺と貴哉に何か奢ってくれ♪貴哉は那智の事大好きだから喜ぶ♪」
貴哉は那智と気が合うらしく、すげぇ懐いてんだ。確かに二人は似てる所あると思う。物事を考えずに発言、行動する所とか、好き嫌いがハッキリしてる所とか。まるで兄弟みたいだ。
だから俺は貴哉が喜ぶ事を言ったんだけど、二人とも一瞬固まって、すぐにニヤケ出した。
「いーくん良い彼氏かよ!もーどこまでも良い男だなぁ!」
「分かった!俺が賭けに負けても秋山に奢ってやる!」
「いや、那智?それ意味分かんねーから」
とまぁ俺の大切な幼馴染達はこんな感じな訳よ。何でも話せるし、話してくれるし、いつも笑ってられる。
今では恋人の貴哉優先してるけど、それでもこうして仲良くしてくれる存在を改めてありがたいなと思った。
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