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1章 二学期中間テスト
そっか。俺は短い方が好きだけどな
しおりを挟む空んちは意外と遠かった。途中から二人乗りして移動したんどけど、空が今住んでるマンションを越えて更に走ったとこにあるらしい。
「なぁ空~?俺腹減った~」
「あ、何か食ってく?近くにファミレスあるけど」
「食う~」
学校近くはマズいと思ってここまで我慢してたんだ。ここら辺なら学校の奴らともすれ違わねぇし、大丈夫だろ。
空とファミレスに入って俺はハンバーグセットを選んだ♪空はミートドリア。
「相変わらず肉好きだな」
「大好き♪てか空ちゃんと食ってんの?そんな細かったっけ?」
「貴哉と別れてから2キロ減ったよ」
「ぶっ!マジで!?」
「まぁちゃんと食ってるけど、食欲はねぇかな」
「な、何か悪ぃな」
「いいよ。死ぬ訳じゃないし。貴哉とこうしてまた話せるようになったから体重も戻るんじゃない?」
元々細かったけど、更に痩せた気がする。
それと、髪伸びたなーって思う。もう肩まで伸びてて、たまに縛ってるのを見るぐらいだ。
「なぁ、髪は?また伸ばすのか?」
「伸ばすよー。髪いじるの好きだからな」
「そっか。俺は短い方が好きだけどな」
「……貴哉の為に切ったら俺に良い事あるの?」
「え?別に切れって意味じゃねぇよ」
「良い事ないなら伸ばす!」
ふいっと顔を横に向けてドリアを突く空。
髪の長い空も似合ってるし良いと思うけど、個人的には短い方が好きなだけだ。セックスの時邪魔だったからな。でも今は俺と空がセックスする訳じゃないし、空のしたいようにすればいいと思ってる。
「空、俺は?長いの似合うかな?」
空の機嫌を取るように、自分の髪をいじりながら聞いてみる。俺はいつも黒髪で長さも普通をキープしてる感じだ。前髪は少し長いかなって来たなと思うけど、まだ邪魔じゃねぇ。
空は俺を見て、優しく微笑んで答えた。
「貴哉は今のままが似合うと思うな」
空にそう言われて嬉しかった。
まるで今の俺を好きって言われてるみてぇで。
「そ。じゃこのままでいる♪」
「えー、もし桐原さんに切れとか伸ばせって言われたら?」
「何で伊織が出て来るんだよ?かっこ良くなるならするけど」
「だって、今の貴哉は桐原さんのだから。いつかは桐原さん色に染まるでしょ」
「……そうなのか?」
「その指輪だって良い例だよ。誰から見ても二人は付き合ってますって分かるし」
「コレ!?てかコレを買う事になったのはお前がああ言ったからだろっ」
「他に良い言い訳が浮かばなかったんだよ。桐原さんに怒られずに尚且つ喜ぶようなセリフがさ」
「確かにすげぇ喜んでたけどよ」
「だろうね。桐原さんって凄い独占欲強いもんね」
「お前だって似たようなもんだったじゃねぇか。すぐ泣くし」
「だった?過去形にすんな。現在進行形だ」
「は?どういう意味だよ?」
ここで空の口調が強くなったから、俺はちょっとビクッとしちまった。
え、今の怒るとこだったのか?
空の態度がコロコロ変わるのトラウマだから焦るわ。
「朝その指輪を見た時あんな事言わなきゃ良かったって後悔した。どんどん貴哉が桐原さんと仲良くなってってるの見るのムカつくし、辛いんだ。俺のだったのに、俺も好きなのに……」
「空っ!」
「またこうして貴哉といられるだけでもって思ってるけど、本当はもっといろいろしてぇよ。抱き締めてキスして、貴哉とずっと二人でいたいっ」
「っ……」
俺は言葉を間違えたんだ。悪い癖が出た。後先考えずに喋るからこうやって空を傷付けちまう。
何やってんだ俺……やっと空が笑ってくれるようになったのに……
「本当は距離を置くべきなんだ。でもそれをしたら貴哉は俺を見てくれなくなるから、それも嫌で、俺は、だったら友達としてでもって……でも好き過ぎるんだ」
「空、俺も好きだ。今はこの指輪を嵌めてるけど、俺は空の事を伊織と同じぐらい好きだ。いや、それ以上なのかもしれないな。俺にとって空は何よりも大切だ」
「じゃあ何で桐原さんと付き合ってるんだよ?何で俺と別れたんだよ?」
「お前を傷付けない為だよ。何度も浮気してたから、別れればもう傷付けなくて済むと思ったんだ」
「結局傷付いてんじゃん。今」
「おま、相変わらず噛み付いてくんなぁ」
「貴哉こそ相変わらず俺の相手してくれるな。そういうとこが凄く好きだ」
いつもとは違った言い合いだけど、どこか懐かしくて俺が笑いながら言うと空も笑った。
空とは友達から始まって告白されて、断ったけど、結局惹かれて好きになって付き合った。
そうしてる間にもどんどん空が俺の中で大きな存在になってって、別れた今でも手放したくないぐらい好きになっていた。
「はぁ、もういいよ。さっき桐原さんよりも俺の事の方が好きって言ったけど、それ本当?」
「あ?ああ、本当だ」
「あは♡ヤバい嬉しい♡」
空は本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔が眩しくて、俺の左手にある指輪が酷く冷たく感じた。
俺は空に手を伸ばして触れたかった。それを止めるかのように指輪は重く冷たくなっていったような気がした。
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