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1章 二学期中間テスト

やり直しって言われた理由が分かった!

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 すっかり人気の無くなった教室に俺と空が二人だけ。俺らのクラスだけ自己紹介をしていたから他のクラスなんかはとっくに下校していて、校舎自体が静かだった。

 空はボーッとしてる俺の前の席の椅子に座って顔を覗き込んでいた。


「貴哉ぁ?どしたー?てか桐原さんはー?」

「空……俺分かったわ」

「は?何がよ?」

「何で教頭に俺の自己紹介がダメだって言われたのか。やり直しって言われた理由が分かった!」

「教頭?あー、だから、いきなり自己紹介しろってなったのか」

「まずは態度だ!俺は自己紹介って聞いて自分の事すら分かって無かったから怠くてそのままの態度でいた。好きな事だって、寝るのはマジで好きだけど、理由も話すべきだった。あと、担任が言ってたけど、人柄!これを伝えられなくちゃダメだったんだ!」


 空は初め、俺が何を言ってるのか分からないといった顔をしてたけど、すぐにニッコリ笑って頷いてくれた。


「そうだな。自己紹介って自分がどんな奴なのかを簡単に説明する事だから、結構難しいけど、貴哉の最後のはたくさんの友達に囲まれた人望のある人だって言うのが想像できるな。俺達は貴哉の事をもう知っちゃってるけど、教頭はどんな人柄なのかを知らないからな。貴哉は友達の事を自慢したらいいよ♪玉山先生をリスペクトしてる理由を話してもいいかもな。なんでー?って気になるし~」

「そうか!じゃあ玉山の事も自慢しよう♪月曜日が楽しみだぜ~♪よし!俺達も帰るかー!」


 いやー!何だかんだみんなの手本って勉強になったなぁ!いろんな紹介の仕方があったけど、確かに人によって印象が違ったな。
 戸塚のは父親を尊敬してる真面目な男って思ったし、空のは明るくて楽しい未来に期待する若者って思った。数馬のは本当に人前が苦手で、でも自分も普通に話せるようになりたいってのが伝わって来たし、直登のは嫌いな事も言ってたし、好き嫌いがハッキリしてる奴だなと思った。嘘も言ってたしな!
 あと、ありきたりなものしか言わないとか、教頭の前で俺がしたようなのもあって、全然そいつの事が分からずに、次の奴のに埋もれていくのもあったな。
 教頭が言ってた「自分は価値があるかどうか」の意味がやっと分かった気がした。

 俺が話を解決させると、空はパァッと笑顔を輝かせて立ち上がった。


「貴哉、もしかして一緒に帰れるの!?」

「ん?そのつもりだったけど」

「嬉しい♡帰りはいつも桐原さんと帰ってたから、今日もそうなのかと思った」

「いや、今日は空と予定入れてたし、伊織も怜ちん達と帰るって」

「じゃあ帰ろっか♡」

「おう!」


 久しぶりに空と二人で学校を出た。すっかり生徒がいなくなった中、自転車置き場まで来てふと不安がよぎる。今俺と空二人きりだけど、万が一伊織に見られたらどーしよう?もう帰ったとは思うけど、あいつのファンにでも見られてチクられたら?


「貴哉ー?行こうぜー?」

「なぁ空、悪ぃんだけど、先行ってくんね?もし伊織にバレたらさ……」


 一瞬空が悲しそうな顔をして、俺は言葉を失った。そして空はプクッと膨れてチャラ男号に跨った。


「やっぱり一緒に帰れないんじゃんっ!」

「空……」

「嬉しかったのにっ期待させんじゃねぇ!」

「はぁ!?お前だって状況分かってんだろ!バレたらヤバいって!」

「だから!俺言ったじゃん!気にするぐらいなら俺と会わない方がいいって!貴哉が俺と遊びたいって言ったんじゃん!」

「そうだけど……」


 俺は左手に嵌めた指輪を見て強く手を握った。
 空が言ってる事が正しいのは分かっていた。俺のワガママで、二人を困らせてるんだって。


「貴哉はさ、桐原さんを大切にしたいんだろ?そんな高そうな指輪まで買ってもらったんだ。俺でも大事にされてるって分かるぞ」

「……空のバカ」


 空にそう言われて胸がキュッてなった。
 嫌なんだよ。空にそう言う事言われんの。
 何か他人事みてぇな感じ。
 まるで俺とは関わりたくないみたいな……


「はぁ!?今なんつった……って、お前泣いてんのぉ!?」

「泣いてねぇよ!泣きそうになっただけだ!」


 危なかった!今視界が潤んだけど、まだ泣いてねぇ!
 首をブンブンと横に振って、空に向き直って俺は先に歩き出した。


「もうバレてもいい!一緒に帰るぞ!」

「……喧嘩しても知らねーかんな~」


 チャラ男号に跨ったまま、俺の歩く速度に合わせて転がして来る空。もうバレてもいい!てか今はまだ昼過ぎだ!夜じゃねぇしな!

 
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