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1章 二学期中間テスト
こうして2ケツすんのも懐かしいなぁって
しおりを挟む俺は夜の道を走っていた。疲れるから走るのは好きじゃねぇけど、今は夢中で走った。時々止まって休んで、また走って、空の家の方向まで真っ直ぐに進んだ。
やっと空が元に戻ったんだ。
それに、電話での空はとても弱っていて、やっぱり俺に助けを求めているんだと思った。
俺が空に電話をした事は伊織には言ってない。こうして今空に会いに行こうとしてる事も話してない。今は伊織に説明してる時間も惜しかった。少しでも早く空に会って、無事を確かめたかった。
俺と別れてから空がおかしくなって、俺が口を出すのは間違ってるってのは少しは分かる。だけど、好きでもねぇ奴と金の為にしたくもねぇ事するのはダメだろ!
これは空だから止めるんだ。空にはもっとちゃんとやってって欲しいから。あいつなら出来るから。俺はそれを知ってるから。
だから……空、もうこれ以上一人になるな!
「はぁはぁ……登り坂キツ……てかあいつまだ来ねぇのかよ」
さすがに登り坂を走るのは無理だった。だから疲れた体を休める為にゆっくり歩いていた。
今何時だろ……明日もテストなのに、こんな事してていい筈がねぇ。ちゃんと寝なきゃ名前すら書けなそうで怖ぇ。
スマホで時間を確認すると、23時前だった。母ちゃんにはコンビニに行くって言って出て来たけど、早めに戻らないとマズいな。お巡りにでも見つかれば補導されるだろうし。
「貴哉ー!」
「!」
登り坂の先を見ると、猛スピードで向かって来る自転車が一台。俺の名前を呼びながら走って来た。チャラ男号だ!
俺は立ち止まって空を待っていた。
空は俺の横まで来て急ブレーキを掛けて止まった。空も急いで向かっていたのか少し息切れしてしていて、Tシャツの上に羽織ってた大きめのカーディガンが乱れていた。そして自転車から降りて真っ先に抱きつかれた。空の匂いがして俺も抱き返した。
「はは、お前髪ボサボサ~」
「貴哉っ会いたかった……」
「ん。俺も♪走ったら足痛くなっちまったぜ~」
空に無事会えた事と、空が俺にこうして触れてくれた事の嬉しさで自然と笑顔になれた。
良かった。ちゃんと会えたな。
空は少し体を離して俺を覗き込んで来た。
少し不安げなその表情に、俺はニッて笑ってやると、空もニコッと笑った。
「空、時間平気か?ここじゃ人に見られたらマズいから家来いよ。少し話そうぜ」
「行っていいのか?」
「当たり前だろ♪」
今問題を起こしたらこれまでの努力が水の泡だからな。時間も時間だし、何より遅くなると母ちゃんに怒られる。母ちゃんなら理由を話せば分かってくれるだろうけどな。
俺と空は久しぶりにチャラ男号で二人乗りをして家まで向かった。
空の漕ぐ自転車の後ろに乗りたかったのもあった。一学期の途中までは毎日のように世話になってたんだ。俺はこの場所がとても居心地が良くて好きだった。
俺を乗せて一生懸命に漕ぐ空の背中に頭と顔を付けて空の温もりを感じた。暖かい空の背中は、ここまで必死で漕いで来たのが分かるぐらい熱を持っていて、心臓の音も早かった。
空がいる。俺を乗せて走ってくれてる。その事がとても嬉しくて、俺は遂に空にぎゅーって抱き付いてしまった。
そんな俺に空は柄にもなく戸惑ってるみてぇだった。
「た、貴哉?」
「へへ♪空だぁって思ったら嬉しくってよ♪こうして2ケツすんのも懐かしいなぁって」
「前はこんな風にギュッてされなかったけどな」
「だってハズイじゃん!今はほら暗ぇし、誰もいねぇし?」
「俺も、貴哉とこうしていられるのが凄く嬉しい。やっぱり貴哉だなぁって思った」
「一緒だな♪」
「うん♪」
空も同じ気持ちだって分かって俺の気分はとても良くなった。もちろん伊織に言ってないのは引っかかってたけど、何かあいつも大人の階段登ってっし?今のあいつになら後からでもちゃんと言えば平気かなって。だって変な事しなきゃいいんだろ?
俺も伊織にされたら嫌な事。多分、これはギリギリだろうな。
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