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1章 二学期中間テスト

楓って覚えてるか!?俺の中学の頃のダチ!

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 今日一日、空と藤野が何を話したのかが気になってずっとモヤモヤしていた。

 あの後、藤野に聞いても、中間テストの話だったと絶対空が話題にしなそうな事を言うばかりだった。

 こうなったら直接聞くしかないと、空に接触を試みるが、素っ気なく返されたり、話を掛けるなと言わんばかりに俺が近付くより先にいなくなったりと、空とはまともに話も出来ずにいた。


「あんのやろー!何で避けるんだっつーの!」

「そりゃもう貴哉に興味無くなったからだろ。元々空くんてそういう男じゃん。いろんな子と遊んでたみたいだし?去るもの追わず?淡白な感じ?」


 俺が怒りを露わにしてると、後ろにいた直登が鞄を持って言った。
 俺に興味がなくなっただと!?そりゃ、心当たりはあるけどよ!
 でも普通に話してくれても良くね?俺だって心配してんのに!

 直登と帰るんで待っていた数馬が聞いて来た。


「貴哉はどうして空と話したいの?」

「どうしてって……」


 内容は言えねぇよな。あいつが危ない所にいるっぽいから心配だなんて。


「それなー。空くんを振ったのは貴哉なんだろー?諦めようとしてる相手にしつこくするのは期待させるだけじゃない?」

「俺はそんなつもりで話し掛けてるんじゃねぇ!」

「だからぁ、何で話したいのって数馬くんも聞いてんじゃん。それなりの理由があるならいいかもだけど、ただ期待させるだけならそっとしといてあげた方がいいんじゃない?って話~」

「ぐうっ……」

「ぐうの音が出た!数馬くん帰ろ~?そろそろ桐原さん来るし」

「は!そうだ!早くしねぇと伊織が来ちまう!」


 そうなると空に声を掛けるのは出来なくなる!その前にもう一度空と話がしたい!
 俺はリュックを背負って教室から出て行こうとする空を追いかけた。あいつ最近帰るの早ぇからな!
 教室を出たとこで空に声を掛けると、音楽を聞こうとしていたのか、イヤホンを付けようとしている所だった。空は機嫌が悪いのかいつもの笑顔はなくて、真顔だった。


「空!待って!」

「……何?」

「少し話したい」

「今?」

「そうだ」

「でも迎えが来るじゃん。三人で話すのか?俺やなんだけど」

「伊織は入れねぇよ。あいつが来るまでだ」

「……あのさ、もう俺に関わるのやめてくんね?迷惑なんだよ」


 ため息を吐きながら凄く嫌そうな顔をしてそう言われた。別れてから初めてハッキリと空に突き放された。
 俺は一瞬頭ん中が真っ白になったけど、首を横に振って言い返す事に決めた。


「迷惑だろうと何だろうと、お前が心配なんだ!伊織にはバレねぇように言うから今日は一緒に帰るぞ!」

「は?何それ?あの人にバレねぇようにとか出来る訳ねぇだろ。面倒な事に俺を巻き込むなよっ」

「うるせぇ!お前こそ何なんだよっ!俺の事避けやがって!別れたぐれぇでそんなんなる程度の好きだったのかよ!」

「……声デカいって」


 空が気まずそうに言って、俺はハッとして周りに見られていたのに気付く。俺何言ってんだ!今はそんな事言ってる場合じゃねぇだろ!
 くそ!空が言う事聞かねぇから本音が出ちまったじゃねぇか!


「とにかく!伊織には何とか言って先に帰ってもらう!だからお前はチャラ男号持って近場で待ってろ!約束したからな!」

「…………」


 俺は空の答えも聞かずに一方的に言って、教室の中へ急いで戻った。
 こんな現場を伊織に見られでもしたらそれこそマズイからな。
 空が待っていてくれるかは分からないけど、俺は何とか空と話がしたいからとりあえず伊織には今日は先に帰ってもらおうとしていた。

 それからすぐに伊織が迎えに来た。
 いつも通りの伊織だったからさっきの空との事はバレてないっぽいかな。


「貴哉~♪帰ろうぜ~♡」

「あのさ、悪ぃんだけど今日予定出来たから先に帰っててくんね?夜連絡するわ」

「予定って何?一緒に帰れねぇの?」

「あー、楓!楓って覚えてるか!?俺の中学の頃のダチ!」

「覚えてる。電話で話した光陽の奴だろ?」

「楓が急に相談してぇ事があるとか言い出してよ~。彼氏の事で悩んでたからこりゃ親友として親身に聞いてやらなきゃなって思ってよ!」

「それ、俺もいたらダメなやつ?」

「へっ!?」

「貴哉の親友って言うぐらいだから野崎楓には一回会ってみたかったんだ。この前の礼も言いたいし、ちょうどいいから紹介してくれよ。二人きりが良いって言うなら挨拶したら俺は帰るから」


 伊織はニヤリと笑って言った。
 こいつ、もしかして疑ってるのか?
 これはマズイ!もちろん楓とはそんな約束なんかしてねぇ。咄嗟についた嘘だけど、こりゃ本当にするしかねぇな!
 楓には急で悪いが、協力してもらうしかねぇ!
 伊織はちょっとした隙でも見せると嘘だとバレる可能性があるからな!俺はなるべく普通を装ってやり過ごす事にした。


「それなら大丈夫だと思うぜ!俺も伊織に楓を紹介したかったんだ。楓に伊織も行くって連絡しとくなー」


 あくまでも自然に。さも楓と予定していたという風に。俺はスマホを出して楓にSOSを出す事にした。『楓!俺を助けろ!今すぐに駅前のマックに来い!俺は伊織を連れて行く!そんでお前は彼氏の事で悩んでろ!』と慌てて無理矢理打ったメッセージを送って、伊織にニコッと笑いかける俺。


「さぁ行こうか伊織♪楓とはマックで待ち合わせしてんだ」

「ん。光陽の野崎か~。会うの楽しみだな~」


 正直伊織がどこまで俺を疑っているのかは分からない。もしかしたら疑ってないかもしれないし、楓と会ってみたいってのも本当かもしれない。だとしたら凄ぇ罪悪感だけど、今は仕方ない。まぁ伊織はメンタル強いからな。
 とにかく今の俺は何度も俺のピンチを救ってくれた楓に、今回も期待するしかなかった。

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