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4章 空のバースデーパーティー

※ 一条さんてばどこまでやるつもりなんだろ

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 ※空side

 一条さんちに着くと、昨日と違う庭の風景に俺と貴哉は圧倒されていた。
 一条さんが庭に簡易キッチンを設置すると言ってたけど、本当に設置されていたんだ。
 広い庭の周りを囲うように何ヶ所かに設置されていて、至る所に椅子とテーブルも設置されていた。
 庭の奥にはテニスコート、その横にちょっとしたステージも設置されていた。
 何かのフェスかイベントのような光景だった。
 

「すげぇ!昨日より豪華になってんじゃん!」

「一条さんてばどこまでやるつもりなんだろ」


 俺と貴哉は一条さんに会おうと家の中に入る。
 ううっ、ドアップの自分の顔に出迎えられるって気まずい気分だな。
 中に入ると、昨日用意されていたテーブルに綺麗なお姉さんさんが座っていた。
 そして俺達を見てニッコリ笑ってテーブルの上の紙を指した。


「ようこそ早川空誕生パーティーへ。こちらへお名前と連絡先のご記入お願いします」

「あ、はい」


 受付の人まで雇ったのかよ!?
 一条家ってどんなけすげぇ誕生パーティーやってんの!?
 俺は言われるがまま紙に記入すると、綺麗なお姉さんは笑顔のまま穏やかに言った。


「まぁ、早川様ご本人でいらっしゃいましたか。本日はおめでとうございます。今日一日受付を担当させていただきます、白鳥と申します。どうぞよろしくお願い致します」

「ありがとうございます……こちらこそよろしくお願いします」

「何照れてんだよ空~。さっさと中に行くぞ~」


 全く知らない綺麗なお姉さんに祝福されて気分も良くなったな。
 貴哉も書いたのか、俺より先に部屋の中に入って行った。

 一番広い部屋、ダイニング兼大広間に行くと、昨日見た通り、壁の至る所に俺のデカい写真、デカいスクリーンの下にステージ。ちょこちょこ用意された既にたくさんのご馳走様が乗ってるテーブル。そして俺たちが用意した色とりどりの風船や花が飾られていた。
 そして何人かの知らないウエイターやウェイトレスのような格好をした綺麗な人達が行ったり来たりして続々と食べ物や飲み物を運んでいた。


「やば!俺達異世界に来たみてぇだな!」

「この先こんなの経験出来ないだろうな」


 俺と貴哉がしみじみ思っていると、動いてる人達に指示を出していた一条さんが気付いて近寄って来た。
 一条さんはグレーのカジュアルスーツを着ていて、髪もビシッと整えられていて如何にも出来る男って感じがした。それでも元々人当たりの良さそうな甘い顔をしているから、いつものように接する事が出来た。


「二人共早くこっち来て~!もうみんな来ちゃうから~!」

「え?何々?何があんの?」

「何って君たちは主役なんだから着替えるんだよ!」


 実は俺は知っていた。昨日衣装合わせで一条さんにいろいろ着替えさせられたからな。
 でも貴哉は知らなかったみたいで、さも面倒くさそうな顔をしていた。
 これは俺の提案だ。俺も着替えるなら貴哉も一緒に着替えたい。そう言ったら一条さんはノリノリでオーケーしてくれた。


「俺はちげぇだろ。俺ここにいるからお前ら行って来いよ」

「いいから早く来ーい!!」

「いてて!引っ張るなよっ」


 嫌がる貴哉を一条さんが引っ張って衣装部屋に連れて行こうとする。
 頑張れ一条さん!

 豪邸の二階にある一室まるごと衣装部屋になっていて、そこには一条さんが事前に用意した俺達用の衣装の他にも少し古そうな洋服達も眠っていた。きっと前の住人の物だろう。一条さんのお祖父さんとお祖母さんのだ。
 この家にはそういった古い物がたくさん置いてある。どれも高そうでなるべく触らないようにしてるけど、俺からしたら博物館みたいだ。

 一条さんに連れられて俺は昨日選んだ衣装のタキシードに着替える。もう一条さんに反論しても無駄だからな。大人しく従う事にしている。俺のタキシードは白なんだけど、光沢があってめちゃくちゃ派手で恥ずかしかった。白のシャツにこれまた光沢のあるベスト。そして青いネクタイを締めさせられた。
 改めて鏡で着飾った自分を見てみるけど、悪くないと思う。うーん、俺って何でも着こなしちゃうな~。

 軽く髪をいじってたら、貴哉達の方から騒がしい声が聞こえて来た。
 俺は貴哉の衣装が何なのかは知っている。
 俺と一条さんで選んだ貴哉に似合いそうな奴だ。

 見てみると、上半身を脱がされて必死で抗議している貴哉と、下も脱がそうとしている一条さんが格闘しているところだった。


「てめぇ!人で遊んでんだろ!?何で俺がそんなの着るんだよ!」

「貴ちゃんには絶対これが似合うのー!せっかく用意したんだから大人しく着ろっての!」


 貴哉に用意されたのは青色の紋付袴。誰がどう見ても日本男性の象徴と言える立派な正装だ。
 黒髪で綺麗な顔をしている貴哉には絶対似合うと思って選んだんだけど、どうやら抵抗してるみたいだな。


「貴哉~、俺はもう諦めて着たんだから貴哉も着ちゃいなよ」

「空!お前何かっこよくなってんだ!てか俺は私服でいいだろうが!」

「え♡俺かっこいい?似合う?嬉し~♡」

「空くん、髪もスタイリストにやってもらうから先に隣の部屋でやってもらってて!俺はこの暴れ馬を何とかするから!」


 ゼーバーゼーハーと息を荒くする一条さんの滅多に見れない姿に驚いた。俺は大人しく言う事を聞く事にした。

 言われた通り隣の部屋へ行き、中にいたスタイリストさんに軽く挨拶をして指定された椅子に座る。
 髪をいじったりいじられたりお洒落になるのは好きだからこれは楽しみだった♪
 今日はタダでプロがやってくれるから特にな♪

 俺が終わる頃には貴哉も着替え終わってるといいな。
 あの二人のやり取りを想像して俺はワクワクしていた。

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