58 / 100
4章 空のバースデーパーティー
少しでもいいから側にいてくれ
しおりを挟む紘夢んちで細かい作業をして、夕飯食った後、空と帰っていた。
二人乗りはせずに自転車は転がして歩いた。
「明日すげぇ事になりそうだな」
「うん。もう自分の誕生日とかじゃなくて、一条さんの趣味のパーティーだと思う事にするよ。ただ俺の写真を勝手に使われただけ……」
「まぁそう言うなって♪上手い飯食えりゃいいじゃねぇか♪ドッヂボールとかガキの頃以来で楽しみじゃん」
「俺ドッヂボールとか嫌いなんだよね。何でボールぶつけ合わなきゃいけないんだ?力の差だってあるし、運動神経無い奴が圧倒的に不利じゃん」
「そんなのどんなスポーツにも言える事だろ。弱い奴の言い訳だな」
「貴哉って何気に運動神経良いよな。足とか速いし」
「普通だ普通。あの母ちゃんに育てられたら嫌でも良くなるっつーの」
「はは、凛子さん子供相手でも容赦しなそうだもんな~」
母ちゃんだけじゃない。父ちゃんにも水泳とか他にも教わったりした。二人共運動神経良かったから出来ないとすげぇ馬鹿にされるからそれが嫌で運動は頑張ったもんだ。
「お前もバスケ上手いじゃん。かっこよかったぜ~」
「桐原さんには負けたけどなっ」
「あ、まだ気にしてんのかぁ?」
「気にするよ。あの時は悔しかったなぁ」
「なぁ、空~。ちょっと家寄ってかね?」
「あれ、貴哉から誘ってくれるなんて珍しいな。ちょっとでいいのか?」
何だか今はもう少し空といたい気分だった。
俺がそう言うと、空は嬉しそうに笑った。
「ちょっとでいい。少しでもいいから側にいてくれ」
「……了解♡」
今隣に空がいるから何とも思わないけど、もしも空がいなかったら俺は一人で何を考えてただろう?
伊織がいない今、空までいなくなったら俺は一人になる。
それを望んだのは俺だけど、いざいなくなると寂しいもんだな。
なんなら泊まっていけって言いたいけど、空は制服しか持ってねぇし、一回帰りてぇだろうしな。
俺の服貸してもいいけど、似合わなそうだし。
「貴哉、手繋ぎたい」
「えー、何で?」
「何でって!ダメなの!?今ちょー良い雰囲気だったじゃんっ」
「いいけどさ」
「やったー♡」
俺が手を出すと、ギュッと握られた。
空はこういう恋人同士がやる事が好きだ。
俺は普通。嫌いじゃないけど、敢えてやらなくても良くね?って思っちゃう。
無性にイチャイチャしたくなったり、そう言う時は別だけどな。
「あのさ、桐原さんに貴哉の事任せられてるけど、俺は今まで通りでいいんだよな?」
「その任せられたって何なの?伊織に何言われたんだよ?」
「普通に、しばらく頼むわーみたいに言われただけだよ。理由は聞いてない」
「ふーん。良いんじゃね?お前はお前のやりたいようにやりゃ。朝は迎えに来てくれよな」
「それはやるけど、俺、桐原さんに任せられたから側にいるんじゃないからな?俺が貴哉といたいんだからなっ」
「分かってるって。俺だって人に言われて嫌々いるような奴といたくねぇわ」
「あとさー、いつまでフリーでいるつもり~?早く付き合いたいんだけど!」
「さぁな。好きな奴が出来るまでじゃん?」
「何それ!?俺は!?」
「空は空じゃん」
「いやいや、俺の事好きなんじゃないのかよ!?」
「好きだよ」
「そう……か……♡」
俺がめちゃくちゃな事を言ってるのは分かってる。空が言いたい事も分かる。
俺は空の事は好きだ。その好きは友達としてもあるけど、一人の男として好きだ。キスしたいと思うし、抱き合いたいと思うし、愛おしく思う好き。
だけどまた付き合おうと思わない。
一度付き合って別れたからか今の関係がちょうどいいなとか思うんだ。
俺と付き合いたがってる空には悪いけど、もう少しだけこのままでいさせてほしい。
もしその間に空が他の奴を好きになったらとかも考えたけど、そしたらそん時考えりゃいいかなって。てか空はずっと俺の事を好きだと言ってるから他を好きになるとか想像つかねぇだけなんだけど。
空は俺がそんな風に考えてるなんて知らないだろう。
隣にいる空を見ると楽しそうに笑っていた。
10
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる