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3章 年下の友達
電話で黙るなっての!
しおりを挟むやっと金曜日!今週は月曜が休みだったから楽勝だと思ってたけど、案外そうでもなかったな~。
相変わらず授業は眠くなるし、部活はあーだこーだ面倒だし、やっと遅くまで寝てられるぜ~!
「貴ちゃーん!明日の打ち合わせするからちゃんとうちに来てよー?」
「分かってるって!ちゃんと夕飯用意しとけよなー!」
帰ろうとボラ部部室を出るとこで紘夢に念を押される。紘夢は今度こそ空のバースデーパーティーを成功させたいらしく、張り切って今日から仕込むそうだ。
見事に俺は雑用に任命された。
それを知ってる空は隣で苦笑いしていた。
「何笑ってんだ!お前は主役だから除外されたからって馬鹿にしやがって!」
「馬鹿になんてしてないって。俺も行くし」
「は?お前は来ちゃダメって言われてんじゃん」
「貴哉がいるなら行くよ♪一回帰るの?」
「おう。どんなけ時間掛かるか分からねぇし、制服着替えたいからな」
「俺も着替えたいけど、そしたら遅くなるしな~」
「だからお前は来なくていいって」
「俺も行くのー!一条さん張り切りすぎてとんでもない事するんじゃないかって不安だからな」
「確かに。あいつ一回失敗したからすげぇ燃えてるもんな」
あの日から紘夢は徹底的にやろうとしているのが見ていて分かった。
まず、空のバースデーパーティーの事をチラシやネットワークとやらを使って大々的に宣伝していた。学校中に貼られた「一年A組早川空くんをみんなで祝おう!」のポスターはどこを歩いても目に入った。
それからパーティーの内容だ。空の紹介VTRとビンゴ大会はそのままにして、更にイベントをいくつか用意したらしい。最早ちょっとした祭りだ。
あの紘夢がやるんだからすげぇ事になりそうだ。
「一条さんて良い人なんだけど、こうだと思ったら曲げないからな~。曲げたと思ったら更に上を行きながら諦めてないから凄いよ」
「まぁそんなけお前の事気に入ってるって事だろ。紘夢カンパニーだっけ?就職先もう見つかって良かったじゃん。将来安泰じゃん」
「どうだろうね?結構危ない会社かもよ?」
俺と空はふざけて言いながら学校を出る。
紘夢んちに行く前に一回帰るんだけど、その道中で電話があった。双葉からだった。
ビデオ通話をしてから連絡なかったけど、本当に懐かれたもんだな。
俺は何も気にせずに電話に出る。
「もしもーし?」
『……貴哉』
「ん?」
あれ?何か元気なくね?
勉強嫌になったとか?
また声が聞きたいからとか言われるかと思ってたから、意外過ぎて驚いた。
「俺だけど、何だよ。何かあったのか?」
『俺、どうしたらいいのか分かりません』
「はい?いやいや、んな事言われても俺もどうしたらいいのか分からねぇから。いきなり何言ってんだ」
「貴哉ー?誰からー?」
隣にいた空に聞かれて「双葉」と答える。
すると双葉はまた黙り込んだ。
「おーい?電話で黙るなっての!お前今どこよ?」
『……学校、出たとこです』
「俺も~。今日塾は?」
『あります。19時30分から』
「んじゃ会いに行くわ。どこの中学?あ、類と同じって事は第三か?ちょっと遠いな」
「貴哉~、遅れたら一条さんに怒られるよー?」
「ちょっとぐらい平気だろ!お前は黙ってろ」
空が喋ると双葉に聞こえてるみたいで黙るからやめてもらいたい。
とにかく双葉の様子が変だから会ってみようと思うんだ。
会ってみて何ともないならそれでいいし、何かあったなら電話よりも顔合わせた方が手っ取り早いしな。
「おい、双葉ー?そっち行くまで少し掛かるからどっかで待っててくれね?出来れば分かりやすい所のが助かる」
『いえ、今日は大丈夫です。声を聞けたから頑張れそうです。また連絡しますね』
「あれっおい?」
双葉は簡単にそう言って電話を切りやがった。
あーもう、空が余計な事言うから~!
電話が切れたのが分かったのか、空が呑気に聞いて来た。
「どうなったんだ?」
「今日は会いに来なくていいですって!お前のせいだからな!」
「俺ぇ!?でも一条さんに怒られるのは本当じゃんっ」
「別に紘夢に怒られても恐くねぇよ。はぁ、気になるけどいいって言ってるし帰るか~」
とりあえずまた連絡くれるらしいから待つか。
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