【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後

pino

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3章 年下の友達

俺は今はムラムラしてねぇ

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 空はスマホをいじって写メを見せて来た。
 それは伊織がアップで笑顔で写ってる物で、後ろには黒髪の男の横顔が写っていた。俯いてスマホいじってるみたいだけど……え?黒髪の伊織?


「貴哉にはこれ送られて来なかったか?」

「何これ?知らない」

「茜さんが貴哉んちに泊まった日の帰り道に送られて来たんだ。手前が桐原さんで、奥にいるのが桐原さんのお兄さんだよ」

「え!この人伊織の兄貴なのか!?何で空に!?」

「実は前に桐原さんからお兄さんと上手くいってないって聞いてたんだ。桐原さんはそれを気にしてたみたいだけど、そしたらこんなに嬉しそうな桐原さんの写メが送られて来たんだ」


 空に伊織がそんな話をしていたなんて、全然知らなかった。写メを改めて見ると、伊織の兄貴って言う男は伊織そっくりで、横顔だし無表情だけど、それを撮ってるであろう手前にいる伊織はとても嬉しそうに笑っていた。まるで兄貴といるのを自慢するかのように。


「貴哉は桐原さんが大変な事になったのを自分のせいだって責めてるみたいだけど、桐原さんにとっては悪い事だったのかな?詳しくは知らないけど、俺から見たらこの写メの桐原さんは幸せそうに見えるよ」

「そっか。あいつ……」


 兄貴が家に帰って来てくれて嬉しかったのか。
 それなら良かった。俺のせいであいつがおかしくなって、家でも怒られて窮屈になってんじゃねぇかって思ってたけど……
 はは、確かに伊織は幸せそうに笑ってら。


「だから貴哉は自分を責める必要はないよ。話を聞けば何も考えずにお金使ってた桐原さんも悪いんだし、俺にも貴哉を頼むってちゃんと言って来たし」

「分かった。ありがとうな空」

「ううん。俺は桐原さんの事好きだよ。貴哉が絡んで来ると容赦ないけど、それ以外では面倒見のいい良い先輩だから。だからあの人は本当に凄い人だなって尊敬してる。貴哉の事にならなければなっ」

「空……」


 空の本心を聞いて俺はホッとしていた。
 俺の前ではいつも二人は言い合ったり仲が良いとは言えないような関係だったから、俺の知らない所では普通にしてんだってちょっと嬉しかった。

 あー、くそ。俺にはこんな写メ送って来なかった癖に空には送ってんのかよぉ。
 

「だからさぁ~。元気出して?貴哉が元気ないと俺つまんねぇよ~」

「そうかそうか。なら元気出るような事してくれよ」

「元気出るような事ぉ?」


 俺がニヤニヤ笑いながら空に言うと、空はパッと反応して顔をぐいっと近付けて来た。
 そしてチュッとキスをして来た。
 顔を離して照れたように俺を見た。
 

「どう?元気出た?」

「あはは!出た出た!お前がいてくれて本当に良かったっ!」

「っ♡!」


 自分からしといて照れてる空がおもしろくて俺は空にのしかかるように抱き付いてやった。
 空から励まされて、らしくもなく落ち込んでたのが嘘のように心が晴れた気がする。
 伊織の事は応援するしかねぇ。あいつが決めた事だからな。全く関わりが無くなる訳じゃねぇし、最後に言ってたあいつの言葉を信じて俺は待つ事にした。

 絶対にまた惚れさせてみやがれ!

 空は俺を抱き返して深く強く抱き締めて来た。
 


「貴哉♡こんな事したらしたくなっちゃうよ♡」

「お前はいつもやりたがるな」

「んなっ!?貴哉だって先週ムラムラしてたじゃん!」

「あれは男なら仕方ねぇ事だ」

「それなら今もそうでしょうが!」

「俺は今はムラムラしてねぇ」

「貴哉がしてないとダメなのかよっ!」

「さて帰るかー。今日は早く寝るかな~」

「おいっ!話終わらせるなよ!」


 まだうるさい空をシカトして立ち上がり伸びをして夜空を見上げる。
 

「なぁ空、俺達もなんだかんだ一緒にいるよな」

「そうだな。これからもずっと一緒だぜ~?」


 空も立ち上がって、俺に抱き付いて来た。
 いろいろあったけど、やっぱりこいつといるのが一番楽で落ち着くな。
 
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