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3章 年下の友達

歳は取りたくねぇなぁ

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 遊園地はやっぱり空いていた。
 それでも人がたくさんいるのはここが人気な遊園地だからだろう。
 俺と双葉はそれぞれチケットを買って早速メインのジェットコースターに並ぶ。って言ってもすぐに順番になりそうで、俺は気分が良かった。


「双葉~、次だな次♪」

「うん。次だね♪緊張して来ました~」

「あ、今更だけど、絶叫系平気なのか?まぁダメでも乗らせるけど」

「本当に子供の頃にしか来た事がないから、乗った事ないですね」

「へー、じゃあ初めてか!まぁ乗ってみねぇとダメかどうか分からねぇしな」

「悲鳴が聞こえるけど、そんなに恐いんですか?」

「恐いってかこうグワッと来る感じ?」

「グワッ?良く分からないけど、恐くはないんですね」

「高い所平気なら面白ぇよ♪」

「じゃあ俺も楽しめそうです♪」


 そんな会話をしてたら俺達の番になった。
 隣同士で座って安全バーが目の前に降りて来ていざ出発♪
 この感じ懐かしいな~♪
 そうそう。初めはゆっくり進むんだ。そんで急な坂をゆっくり登ってって……あれ?結構高くね?
 俺は周りの景色を見て思う。うわぁ、すげぇ登ってるけど、まだ頂上つかねぇの?
 やべ、余裕ぶっこいてたけど、俺も結構緊張して来たわ!


「貴哉貴哉~!見て下さい!あそこにコーヒーカップあります♪次乗りましょう♪」

「お、おう……そうだなっ」

「貴哉?どうしました?」


 少し小声になっちまって、双葉に顔を覗き込まれた。余裕ねぇのバレたか?でも俺はコーヒーカップがどこにあるかなんて考えてられなかった。
 少しずつ頂上に近付いて行く度にこの後の出来事を想像する。
 お、俺絶叫系のアトラクション大好きだったよな?ガキの頃とか何度も乗りたがって母ちゃんに怒られたぐらいじゃん!
 ま、まさか俺今恐いと思ってる?


「そうだ!俺初めてなんで、俺にもあれやってくれませんか?」

「あ、あれ?」

「そうです。前のカップルがやってるようなやつ♪」


 あまり余裕の無い俺は恐る恐る前の席に座る若いカップルを見てみる。
 あ、手繋いでんじゃん!女はすげぇビビってて、それを男が茶化してた。
 え?あれをやれと?


「俺も少し恐くなって来ました。ああやって手を繋げば恐くないかもですよね?」

「お前……」


 隣でニコッと笑う双葉。確かに誰かに触れていれば少しは安心出来るかも知れねぇ。
 俺はゆっくり左手を出した。


「あ、繋いでくれるんですかー?やったー♪」

「俺のが年上だし面倒見てやらねぇとな!」
 
「……ありがとうございます♡」


 俺の強がりを聞いてクスクス笑いながら手をギュッと握って来た。
 そんなやり取りをしていたらいつの間にか俺達は頂上に到達して、有無を言わさず坂を下り始めた。
 そこからはノンストップで急加速。
 何だよコレ!猛スピードで走るわ、めちゃくちゃ強引に揺れるわ、全然面白くねぇじゃん!


「キャー!」

「ギャー!!!」


 俺と前に座る女の悲鳴が響き渡る。
 同時に繋がれた左手に力が入って、双葉の手をギューっと握ってしまった。


「あはは~♪楽しいー♪」

「おまっ!!全然へいきなのかっひぃぃぃ!!!」

「ジェットコースターもですけど、貴哉もですよ~♪面白ーい♪」


 まさかの初めてだと言う双葉の方が余裕だったって言うオチ。
 数分間俺と前に座る女をグワングワン揺らして怖がらせたジェットコースターは無事出発地点に戻って来る事が出来て、俺は双葉に支えられながらヨロヨロと歩いて何とか下にあったベンチまで来る事が出来た。


「大丈夫ですか?飲み物買って来ますよ」

「あー、昔はあんなに平気だったのにクソ……歳は取りたくねぇなぁ」

「何中年のくたびれたオヤジみたいな事言ってるんですか」

「本当なんだって!てかさっきのってこの遊園地で一番ヤバい奴じゃん!?くそー!初めから攻めるのは間違ってたか~!」

「あはは♪貴哉って本当に楽しい♪」

「笑うな!次は絶対平気だから!」

「あ、ごめんなさい……」

「ん?別に気にしてねぇけど?」

「いえ、ついタメ口聞いてしまいました」

「タメ口ぃ?んなのもっと気にしねぇよ!はは!お前って真面目なんだな!俺なんか誰にでもこうだから良く学年主任とかに怒られてるってーの」

「そうなんですか?」

「そうなんです!てかお前と話してたら大分落ち着いたわ。次コーヒーカップだっけ?行こうぜ」


 俺が立ち上がると双葉はジッと黙って見ていた。
 俺何か変な事言ったか?

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