【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後

pino

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2章 兄と弟

※ どうしてそんなに俺を嫌うんだよ!

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 ※伊織side

 俺は部屋着に着替えてから言われた通り兄貴の部屋の前に来た。
 すると兄貴がミネラルウォーターを持って階段から上がって来た。

 
「兄貴、話って何?」

「中入ってから話す」

「うん」


 言われるがまま兄貴が部屋に入ってから俺も中に入る。
 兄貴の部屋はベッドがあるだけで特に何も無い。クローゼットの中には昔の服とかが入ってるけど、家を出て行く時に家具はあらかた持って行っていた。

 兄貴はベッドにドカッと座って俺をジロリと睨んだ。
 

「まずさ、お前、俺がいない時に勝手に部屋に入ってんだろ?」

「へっ!?あ、うん。ごめん」


 数回しか入った事はない。貴哉が初めて俺の家に来た時にローションを探した事があったんだ。俺は持ってなかったけど、兄貴は持ってるかもって思って勝手に入ったんだけど、どうやらバレたらしい。


「盗んだ物何に使った?」

「何にって……そりゃ……」


 俺が言いにくそうにしてると、兄貴は鼻で笑った。


「お前今誰かと付き合ってんのか?」

「……うん」


 今度は兄貴は俺の左手を見て言った。
 昨日振られたけど、俺の中ではまだ付き合ってるから嘘では無い。

 それにしても兄貴がこんなに話すなんて、どうしてそんな話をしてくるんだろう?


「母さんから連絡があったんだ」

「母さんから?何て?」

「お前が最近カードで馬鹿みたいに買い物してるから様子見てくれって」

「っ!」


 確かに普段俺が使ってるカードは父さん名義の物だ。まさか俺が何に使ってるのか見てたなんてな。
 母さんは今は仕事で海外にいるから一番近くにいる兄貴に頼んだんだろう。父さんは国内にはいると思うけど、正直どこに住んでいるのかは分からない。


「その恋人に貢いでんのか?」

「その言い方やめろよ。普通に遊ぶのに使ってるんだ」

「お前自分がしてる事分かってる?高校生が数十万もするアクセサリーなんか買ってプレゼントするか?」

「分かってる……悪かったよ。控えるから」

「ま、俺はどうでもいいけど。近々父さんもここに来るらしい」

「えっ!来れるのか?」

「桐原家の可愛い可愛い次男様が間違って育っちまってるから心配してんだよ。お前学校で謹慎食らったんだって?」

「…………」


 学校での緊急連絡先などは全て親戚の家に行くようになっている。親戚が学校から聞いて俺の両親に伝えるのは当たり前だ。もちろん親戚から聞いた父さんと母さんの両方から電話はあった。
 だけど、謹慎中会いには来てくれなかった。

 俺は何も言い返せなくて、ずっと黙ってると、兄貴は馬鹿にするように笑って言った。


「ハッ!あんなけ周りにスター扱いされてたお前がまさかこんなに問題起こすなんてな。笑えるぜ」

「…………」

「何がかっこいいだ。何が何でも出来るねだ。結局は親の金がねぇと何も出来ねぇただのガキじゃねぇか。学校でも迷惑掛けて、こんな時間までほっつき歩いて。調子に乗んなクソが」


 何で兄貴はこんなに言うんだ?
 ただ様子を見てくれって言われただけなんだろ?
 どうしてそんなにも俺を嫌うんだ?
 俺は兄貴からしたらクソなのか?

 確かに俺はもう何でも出来る完全無欠の男じゃない。
 好きな奴を手離すまいと必死に嫉妬しまくる余裕の無いダセェ男だ。

 今の自分の心境と、言われた事へ反論出来ない悔しさで俺の感情は爆発しそうだった。


「……っんでだよ」

「あ?聞こえねぇよ」

「何でだよっ!何で兄貴にそこまで言われなきゃならねぇんだよ!」

「お前の言いたい事ってそれ?」

「答えろよ!どうしてそんなに俺を嫌うんだよ!やっと話してくれたと思ったら嫌な事ばかり!俺が兄貴に何をしたって言うんだよっ!」

「…………」

「俺は、兄貴の事心配してたのにっ兄貴と話したかったのにっ」


 ずっと我慢していた何かが溢れて出た。
 兄貴はゴミを見るような目を向けて顔色を変えずにベッドに座っていた。
 そして冷たい声で答えた。


「うぜぇ。お前のそう言う所虫唾が走るんだよ。俺はお前が大嫌いだ」

「……だから、何で……」

 
 兄貴の口からハッキリそう言われて辛かった。
 やっぱり嫌われていたんだ。
 たった一人の兄弟から物凄く嫌われていた。

 誰かから嫌われる事がこんなにも辛い事だなんて、俺は今までに味わった事のない感情に頭が痛くなった。

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