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1章 異色のメンバー

か、母ちゃんが敬語使ってる!!

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 家に着いたのは20時半とかで、既に酒飲んでテンションの高い母ちゃんはキッチリ挨拶をする茜にすかさず食い付いていた。
 俺が誰かを連れて来ると絡まない日はない。
 俺は慣れてるけど、茜は少し気まずそうだった。


「こんばんは。夜分遅くにすみません。城山高校の二年の二之宮茜です」

「おやおや!これまた珍しいの連れて来たね~!茜!こっち来い♪」

「えっ?あ、はい……」


 俺が連れて来る友達はいつも派手な頭してたり、挨拶も「ちーす」みたいな奴らばっかだから、クソ真面目に挨拶する茜を珍しがってんだろ。
 茜は俺の母ちゃんに戸惑いながらも言われた通りリビングの入り口から進んで母ちゃんが座るテーブルの前の席の前に立った。
 

「茜って名前は貴哉から良く聞かされてるよ。部活で世話してくれてる鬼コーチだろ?」

「鬼コーチ……はい。周りからはそう思われてます……」

「いや~!有難いね!貴哉ってこんなんだから厳しくしてくれる奴がいてくれて私は嬉しいよ♪貴哉の面倒を見てくれてありがとうございます」

「か、母ちゃんが敬語使ってる!!」

「いえ!俺はお礼を言われるような事は何もっ!秋山のおかげで演劇部も助かりました。お礼を言うのはこちらです。秋山の人柄と努力で演劇部の雰囲気も大分変わりました。本当にありがとうございました」


 茜に褒められて俺は嬉しくてニンマリしてると、母ちゃんは立ち上がり茜に近付いて肩をぐいっと引き寄せた。
 この酔っ払い何する気だ!?


「茜!気に入った!その堅苦しい所、竜太郎みたいで嫌いじゃない!私の息子になりな!」

「竜太郎?息子?あ、秋山、俺どうしたら?」

「あー、竜太郎ってのは俺の父ちゃんで、息子ってのは母ちゃんのお気に入りになっちまったって事。どっちも気にしなくていいから。それよりも母ちゃん風呂入りてぇんだけど、沸いてるのか?」

「あ、今竜太郎が入ってるよ。てかお前今日風呂掃除サボっただろ?休みの日はやれって言ってあるだろ」

「し、仕方ねぇだろ!母ちゃんの息子の茜に会ってたんだから!」

「そうなのか?」

「いや、俺は夕方から参加しました……」

「それなら掃除する時間あっただろ!言い訳してんじゃないよ!明日も休みだろ?やらなかったら小遣い渡さないからな!」

「茜の裏切り者!」

「あ、秋山!」


 俺はまた母ちゃんに怒られるのが嫌で茜を残してさっさと自分の部屋へ逃げようと廊下へ出る。
 そりゃ掃除しなかった俺が悪いけどさぁ~。
 
 ちょうど風呂から出て来た父ちゃんと会った。
 母ちゃんとデートでもしたのか機嫌が良さそうだった。


「貴哉、帰ってたのか」

「ただいま。今日俺の友達泊まるから」

「えー、今日はどんなイケメン連れて来たんだよぉ~。もう勘弁してくれよ~」


 俺の連れて来る奴を気に入りまくる母ちゃんに、父ちゃんはいつもヤキモキしていた。
 俺に言われてもなぁ?てかさっき茜の事を父ちゃんみたいで嫌いじゃないって言ってたし、今までで一番ヤバくね?
 父ちゃん最大の敵現るか!?

 しょんぼりしながらリビングに入って行く父ちゃんの後をこっそり付けてそーっとリビングを覗いて見てみる。
 リビングにはすっかり母ちゃんに絡まれてる茜がいて、そこに入って来た父ちゃんに気付いた茜はまた丁寧に頭を下げて挨拶していた。


「あ、お邪魔してます。城山高校の二年の二之宮茜です」

「あ、どうも、貴哉の父の秋山竜太郎です……」

「竜太郎~!貴哉がまともな友達連れて来たぞ!もてなせ!」

「そんなお構いなく!あの、えっと……」

「二之宮くんって、もしかして文化祭の時魔女役やってた?」

「あ、はい。演劇部で役者やってました」

「えっ!あの意地の悪い魔女の事か?茜お前、全然違うじゃねぇか!あんな演技出来るなんてすげぇじゃん!」

「はは、ありがとうございます……」

「驚いたな~。こんなにもしっかりした子がやってたなんて。あ、何か飲む?ご飯は食べた?」

「あ、食べて来たので気にしないで下さいっ」


 あ、あれ?何か馴染んでね?
 てか父ちゃんも茜を気に入った?
 相変わらず茜はずっと困ってるみたいだけど、二人は俺の事なんか忘れて茜に夢中だった。

 茜、やるじゃん!

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