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1章 異色のメンバー

いつも負けてるけど!

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「どこに惚れたって言われると……優しい所、かな?それと、ずっと好きって言ってくれる所も安心するなって」

「ぷはっ!犬飼の奴、いつも茜ちゃん茜ちゃんて追い掛けてるもんな~。へー、そういう所がいいんだぁ?優しくて一途に想ってくれる人がいいんだぁ?」

「あ、秋山のタイプはどういう人なんだ?桐原と早川はタイプが違うだろ」

「俺ぇ?俺は俺が好きになった奴がタイプだな~。面倒くさくない奴だな」

「秋山らしいな。それなら桐原と早川以外でも好きになる可能性があるって事か」

「そりゃあるだろ。今はそんな気は全くねぇけどな」

「なるほどな」

「話戻すけどよ、犬飼からして来たのか?」


 キスの話に戻すと、再び茜の顔が強張って頬を赤くしてた。やべー、茜の反応マジ面白ぇ♪
 

「そ、そうだけど」

「けど?茜も断らずにキスを受け入れた。てか犬飼の奴良くそれで済んだな……あ?もしかして襲われたりした?」

「バッ!襲われる訳ないだろ!犬飼は、これ以上はちゃんと付き合ったらにするって言ってくれたんだ」


 嬉しそうに微笑む茜。ちゃんと付き合ったらって、犬飼の奴、茜と付き合えると思ってんのかよ。これでやっぱり彼氏の桃山がいるんでお断りしますなんて言われたら犬飼ちょっと可哀想だな。


「ふーん。あいつって意外と紳士だな。トモには俺を襲えとか命令する癖にな」

「そう言えばあったなそんな事」

「あれか、自分の好きな奴にはめちゃくちゃ甘くなるやつ。ツンデレのデレしか見せねぇ奴だあいつは」

「確かに、犬飼はいつも優しくしてくれるな。怒ったりするのかな?」

「するだろ!桃山に対していつも怒ってんじゃん!いつも負けてるけど!」

「……そうだな」


 桃山の名前を出したからか茜は困ったように笑った。そうだよなー。桃山の事も嫌いな訳じゃなくて、むしろ変わらず好きなんだからそりゃ悩むわな~。

 例えばよ?例えば、俺が桃山と犬飼どちらを好きになってどちらを選びますかって聞かれたら……犬飼かな?
 危険度と面倒くささを考えてこの結果になった。
 茜愛はどちらも同じぐらいあるように見えるけど、桃山の場合は普通じゃねぇからな。喧嘩っ早いし、目を離すと何しでかすか分からねぇし、安心感がねぇよな。
 それに比べたら犬飼はまともだと思うんだ。見た目も申し分無い容姿をしてるし、周りをまとめるリーダー気質もあるし頭も良いらしいしな。好きな奴にはとことん甘いとか理想じゃん?

 でも茜の場合、先に付き合っていたのは桃山だ。
 ずっと側で見て来たけど、茜と桃山の組み合わせは異色でありながらもとても仲良くてバランスの取れたカップルだと思うんだ。
 暴走しがちな自由奔放な桃山を、クソが付く程真面目な茜が制御して成り立つカップル。
 
 伊織も空も俺の言う事聞かねぇ事あるから、そこは茜が羨ましいなと思っていた。


「桃山とは連絡は取ってるのか?」

「ああ、今日はメッセージを数件やり取りした。会いたいと言われたけど、昨日の犬飼との事もあったから断ってずっと家に引きこもっていたんだ」

「それ、何て言って断ったんだ?よくしつこく会いたがらなかったな」

「普通に体調が悪いって言ったんだよ。湊は気分屋だからな。元々向こうにも予定があったみたいだし、だからしつこくなかったんだと思う」

「じゃあ昨日のは何て言ったんだ?お好み焼き屋の後の事」

「家族で出掛けるって言ったよ。実際両親が出掛けてるからそれに付いて行った事にしたんだ。正直心が痛んだよ。湊は信じたか分からないけど、人に嘘をつくのは経験が無いから……」

「そっか。お前真面目だもんな~。まぁ桃山には言わなくていいと思うぜ?犬飼も言わないだろうし。後は茜がどうするかだな」

「…………」


 茜は元気なさそうに俯いていた。
 ゆっくり考えろって言いたいけど、多分それだと桃山が変な勘を働かせて犬飼との事を疑って来そうだ。
 
 茜には幸せになってもらいたい。
 茜が幸せになるのに俺が必要なら力は貸すつもりだ。ただ茜の気持ちがハッキリしないと動けねぇ。

 てか今の茜って桃山と普通にしてられるのかぁ?

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