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1章 異色のメンバー
一度にそういう奴を何人も上げた事あるぜ
しおりを挟む茜と並んで座り、電車に揺られていた。次の駅で降りるから会話も特に無かった。
話したい内容が内容だからってのもあったけど、茜は少し考えてる感じだった。
電車を降りて俺の家まで歩く。
行きはバスで来たけど、今回は歩く事にした。
「秋山、悪いな急に」
「え?泊まる事?それなら別に構わねぇよ。てか茜こそ上手いな。俺どうやって二人になろうって考えてたんだよ」
「秋山も考えてくれてたのか。嬉しいな」
「お前の話が気になるからな~」
「はぁ……まず何から話すべきか……」
思い詰める茜。とりあえず犬飼との事が聞きてぇかな?
「昨日犬飼と過ごしたよな?」
「ああ。あの後待ち合わせをして二人で過ごしたよ。俺は貰った花束を早く花瓶に生けたくて、一回家に帰る事にしたんだ」
「そういや貰ってたなお疲れ花束。犬飼も一緒にか?」
「そうだ。着いて来てもらったんだ……家にも上げた」
おー、犬飼やるじゃん。もう茜んち行ったのか。
ここから茜は話にくそうに口籠るようになった。
「その、上げるか迷ったんだけど、外で待ってて貰うのも悪かったから……上げたんだけど……」
「うん。俺でもそうするぜ?花瓶に生けるってのがどれぐらい掛かるか知らねぇけど、ただ花を置くだけじゃねぇんだろ?」
「でも、俺は湊と付き合ってるのに、自分に好意を寄せている相手を……それも知っていて上げたんだぞ?」
「あー、なるほどな。お前はそれ気にしてんのか。それを言うなら俺はどうなるんだって話。一度にそういう奴を何人も上げた事あるぜ」
「あ、秋山は特殊と言うか……そういうのやっても許される感があるだろ?俺は勿論、湊はそういうのして来なかったし、バレたら大変な事になると思うんだ」
「だろうな。普段処刑だの死刑だの言ってるもんな~。茜の事大好きだもんな」
「…………」
「茜~、あんま気にすんなって。てか桃山には犬飼と二人で過ごした事言ってねぇんだろ?それならバレないようにすればいいだけだって」
「そうだけど……やっぱり湊に悪い気がして……」
俺の隣を歩く茜は俯いてポツリポツリと言った。
茜の性格じゃそうなるだろうな。気にするなって言っても無理か。
「そうか。ならもうやらなきゃいい。やってみてやっぱちげぇなって思ったんならそれでいいじゃん」
「俺は最低だ……」
「茜~!もう過ぎた事なんだからさ~!前向いて行こうぜ?」
「違うんだっ!俺は……犬飼と……」
え?犬飼と?
励ます俺に訴えるように腕を掴んで来る茜。
何々?犬飼と何かあったのか?
「茜、とりあえず落ち着け?深呼吸深呼吸」
「ああもうダメだっ!秋山!俺は犬飼とキスをしてしまったんだっ!」
「なっ!?ってキスだと!?」
「そうなんだ……ダメだって分かっていたのに、つい……もう自分が湊と犬飼のどちらを好きなのか分からなくなって……」
意を決して伝えてくれた茜は、本当に悩んでるみたいで、この世の終わりかってぐらい青ざめた顔をしていた。
いや、茜の気持ちも分かるよ?分かるんだけどさ、そんな焦る事か?
んー、俺の感覚がおかしいのか?好きな奴とならキスしたいと思うのは普通じゃね?
まぁ茜が悩んでるのはどっちの事を好きか分からないってやつらしいけど。
「どちらを好きか分からないか。それ俺じゃねぇか」
「そうなんだよ。まるで秋山と同じ心境なんだ。いつもは第三者から見ていたから分からなかったけど、こんなにも辛いんだな」
「だろー!?分かってくれるか!?そうなんだよ!どっちも好きだけど、どっちも俺を選べとか無茶な事言いやがるんだ!面倒くせぇったらありゃしねぇ!」
「結局秋山はどちらとも付き合わない事を選んだんだよな?俺もそうするべきなのか?」
「それはちょっと違うかな?茜の事は茜が決めた方がいい。で、犬飼のどこに惚れたんだ?」
俺がニヤニヤしながら聞くと、茜は見て分かるぐらい赤くなって照れ始めた。
いつもキッとした目して堂々としてる癖に可愛いじゃねぇか♪
うんうん。これが友達とする恋バナってやつか♪
悪くねぇな。
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