【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後

pino

文字の大きさ
上 下
13 / 100
1章 異色のメンバー

こうなったら全部ストライク取りに行くわ!

しおりを挟む

 自販機でジュースを買ってると、空が機嫌良さそうに話し出した。


「さっきの惜しかったな~。二人がいなかったらしちゃってたよな♡」

「黙れチャラ男……俺は何もしようとしてねぇ」

「えー、認めなって。俺とチューしようとしてたじゃん♡」

「してねぇ!それ以上言ったらもう遊ばねぇぞ!!」


 俺が脅しても機嫌の良いまま。
 くそー。別にしてもいいんだけど、伊織とは中途半端なままだからあんまそういうのはしたくねぇ。
 だから誘惑に負けそうになった自分に腹が立った。
 やっぱ空と会うのはまずかったか……


「なぁ、お前帰るか?」

「酷!!俺来たばっか!!まだ投げてもねぇし!!」

「だってよー、お前といると調子狂うんだって~」

「いいじゃん狂っても♡貴哉は今フリーなんだし♡」

「ダメだダメ!お前これ以上俺を誘惑したら帰すからな!」

「えー、じゃあ控えるよ。フリーになったのに、その指輪はしたままなのか?」


 空はやっと分かったのか、少し残念そうに言った後に、俺の左手を指差して聞いて来た。
 伊織に買って貰ったペアリングだ。
 正直外すか迷った。だけど俺は外さずにそのままいつも通り過ごしていた。


「ん、これにも慣れたし今更外しても周りにうるさく言われそうだから付けたままだよ」

「……俺と付き合ったら外してよな」


 多分空は良く思ってねぇな。
 俺に帰れって言われたくないから渋々我慢してる感じだった。

 茜と七海の分も飲み物を買って戻ると二人共ぐったりしてベンチに座ってた。
 スコアを見るとガーターのマークが見えて大体予想できた。


「二之宮ってマジ頑固……俺は違うって言ってるのに……」

「うるせぇ……秋山がやってた通りにやっただけだ……お前の教え方が悪いんだ……」

「二人共お疲れ様♪まぁまぁジュースでも飲んで休んでろって♪次は一年チームのチャラ男が行くからよ」

「出来るかな~?まぁ茜さんよりはマシだと思うよ~」


 空は自信なさ気だったけど、フォームはちゃんとしていた。そして投げ方も普通。球はストレートに転がってったけど、あれなら何ピンか倒れるだろ。
 空が倒したのは真ん中の五本。
 もう少しスピードがあれば良いとこ行ってたんじゃね?


「両端に残っちゃった!アレどーやって倒すんだぁ?」

「とりあえずどっちか狙って少しでも倒しゃいいよ。お前真っ直ぐ投げられるから立ち位置変えてみ~」

「よし!やってみる!」


 俺の指示通り空は右端に寄った。
 そしてさっき投げたように球を放つ。よし、そのまま行けば右に寄った三本は倒せるな……ん?何か微妙にカーブしてね?おいおい、それじゃガラ空きの真ん中に……


「お前っ!何で今回カーブさせんだよっ!!」

「やってないよ!普通に投げただけだよ!!」


 球は見事にさっき倒した所に行って、結局二投目はガーターだった。
 無意識でカーブさせるとか逆に凄くね!?


「あ、チャラ男くんも得意じゃないんだぁ?」

「あまりボーリングとかやらないんですよ。次チワワさんですよ~」

「よし!張り切っちゃうもんね~♪」


 七海の意気込みはバッチリ。
 んでもたかが知れてる。やっぱりこの中でダントツ上手いのは俺だ。もう両サイドのベンチに両腕乗せて足組んで余裕で見ていた。

 ヒラヒラミニスカート姿の七海はふんすと球を持ち上げて歩いて行く。
 両手投げとかしちゃうんじゃね?きゃーとか言って転んだりして?

 そんな俺の期待を裏切るかのように女子の格好をした七海は、堂々と斜めから助走を付けて独特なフォームで球を放った。
 え?投げ方とか球の軌道とかめっちゃ綺麗じゃね?たまにいる一人で投げてる上手いおっさんみてぇだ!
 七海の投げた球は綺麗にカーブして、真ん中のやや右へ進み、カコーン!っと良い音を鳴らして見事ストライク。

 これに俺は驚いて空いた口が塞がらなかった。


「小平凄いな!なんかプロっぽかったぞ!」

「こんなの普通でしょ!見てて!俺が華麗なターキー見せてあげるから!」

「なっ!?聞いてねぇぞお前がそんなに上手いなんて!」

「言ってないもーん♪さぁ次は遅刻魔さんだよ~」


 これはヤバいぞ!
 本当に七海がターキーを出せば一気に追い付かれて余裕が無くなる!
 焼肉を食うなら奢りの焼肉がいい!
 くそー、次もストライク取らなきゃじゃねぇか。


「うし!こうなったら全部ストライク取りに行くわ!」

「おおー!貴哉すげぇ」

「出来るもんならやってみなよ♪ちなみに俺も全部狙ってるから♪」

「二人共かっこいいな。俺もあんな風に投げてみたいな」


 余裕が無くなったって事で俺は集中していた。
 球を持ったまま構えて、少し時間をかけてから助走を始める。
 いつも通りにやればいい。
 それでも俺は今まで二回連続はあったけど、三回連続のターキーは成し遂げた事がなかった。
 出来たら母ちゃんにも自慢出来るんだけど、とにかく今は奢りの焼肉を食う事を目標に頑張るのみ!

 俺は全神経を右腕、右手に集中させて完璧に球を放つ……
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...